友達何人できたかな
祖国に帰ると、私はこの世界の大学に行った。大学に関しては前世と同じ感じだった。すでに天才な私がわざわざ自国の学校にいく必要はないと思われるかもしれないが、専門的なことを学べるし、何よりちゃんと学校に通ってみたくなったのだ。ボッチなのでついでに友達出来たらいいな。
男尊女卑がいまだに残る世界。女性が大学進学するのは珍しかったが、前例がない訳じゃない。私は国一番の大学の薬草学部に主席入学した。他の学部でも良かったのだが、貴族女性として続けられそうな理系学門がこれくらいしかなかったのだ。
一応、私はどこかに嫁に行くつもりだ。そう話したら、兄弟に驚かれた。天才と誉められる私の本性が、実験等で引きこもり癖があり、少し皮肉れていると知っている彼らは、私が結婚願望を持っているとは一ミリも思わなかったらしい。ひどい、これでも心は乙女なのよ。
まぁ、そんなこともあった。貴族であり、天才少女の私は、身分的にも、政治的にも国内の有力貴族に嫁ぐことになるだろう。それでも研究は続けたい。薬草学と言っても幅広く、化粧品やハーブも扱える。そういうことなので、嫁いでも薬草学なら女性の趣味として受け入れてもらえるような気がした。
さて、順調に成績を伸ばしていたある日のこと。私は学内の廊下を歩いていた。廊下と言っても、外に対してひらけているのでほとんど外だ。すぐ近くの外は芝生の庭で、学生達が思い思いに過ごす憩いの空間になっていた。
その時である。私の目の前に一人の男子学生が吹っ飛んできたのである。あとからわかることだが、彼は休み時間に学友と剣術の練習をしようとしていて、その学友に吹っ飛ばされたらしい。
かなりイラっときた。当時、私は、前の時間に作った薬草汁の入った瓶を持っていた。当たって割れていたらどうなっていたかと、ヒヤヒヤした。
そして、さらに悪いことに彼が使っていただろう模擬刀が彼の手を離れてくるくると此方に向かって飛んできていた。危ないので、
叩き落としてやった。
そして、ちょっと気持ち良かったなー、なんて思いつつ彼の方を見ると、口を開けて唖然としていた。どうみても彼は良いとこの坊っちゃんだったので、口を開けたままなんてはしたなくないのかと聞いたら、
「本で剣を叩き落とす女に言われなくない。」
と、言われてしまった。なるほど、確かにそうだ。でも、学内で乙女向かって剣が飛んでくるというのも如何なものだと思う。そう言ったら、ちゃんと謝ってくれた。
その場で別れたので、その時は今日はちょっと面白い目にあったなとしか思っていなかった。一週間もすれば忘れてしまいそうな出来事だったのだ。
だから、翌日も似たような目に合うとは思ってもいなかったのだ。