終末への道のり
作られた世界の「転生者」たちのほぼ全員はもう、私にその力を取り込まれた。
あとの残りは、「島風」とその一派くらいだ。
まあ、もう少しあいつは遊ばせておいてもいいか。
こっちの世界のあいつの体と違うあっちの体に慣らせてしまえばこちらのものだ。
ぽたり、と何かが落ちた音がした。
「え……?」
気づかずに流していた涙が地面に落ちた音だ、と気づいた。
でも、どうして……?
なんで、私が泣くんだ?
確実にこの涙は、喜びとかそういう感情のものではない。
悲しみとか、そういうものだ。
だから余計に混乱した。
まさか、「彼」を殺すことを拒んでいるのだろうか。
――そんな、ことはない。
私は、私は、あいつらを殺すためにここにいるのだから。
私はそう言い聞かせ、彼らの戦いを見ていた――
――その頃彼らは。
「ち――速い!」
あの、いつものドラゴンだった。
最初は。
でも。
「また来る! 気を付けて!」
そいつが口から吐き出すあいつらの体を構成する黒い塵のようなものが、見慣れた艦載機をかたちどる。
そう。あのドラゴンは、赤城さんの能力を持っている。
しかも、動きがやたらと速い。
厄介な相手だ。
でも、だからこそ、燃える。
僕は連装砲を撃ちまくり、注意を引く。
「お前の相手は、この僕だ!」
艦載機たちがこっちに急降下してくる。
機銃をばらまき撃墜していく。
ふう、これが旧式ので助かった。
僕がいる頃の艦載機ではつらいものもあるだろう。
ドラゴンが口を開けるタイミングで、トリガーを引く。
でも、それを読んでいたのか躱される。
「島風!」
瑞鶴さんから援護の艦載機が飛んできた。
もう彼女の艦載機も残りわずか。
このままでは、まずい。確実にやられる。
しかも僕の連装砲、連射速度遅いし。
じゃあもう残された武装って……
「わああああああっっっ!!?」
機銃を両手に展開してトリガーを思いっきり引く。
ドラゴンの目に向かって乱射する。
命中。
いや命中って言っていいのかわからないけど。
とりあえず――
「今! 集中砲火!」
瑞鶴さんの艦載機が急降下爆撃を開始。
それがドラゴンの皮膚を燃やす。
――焼夷弾か。
なるほど、確かにそれならダメージになる。
ようやくリロードが終わった連装砲を展開し、トリガーを引く。
ドラゴンの翼が折れ、地面に落下してきた。
――ふう。
さすがに今回はきつかった。
というよりも、あの艦載機みたいなのは何だったんだ……?
絶対に、赤城さんのだ。
でもどうして……? もう彼女はいなくなったはず――いや。
彼女は僕のいるここには来ていなかった。
まさか。
――僕たちが今まで戦ってきたモンスターたちは全員、僕らと同じ――「転生者」だったのか?
だとすれば、すべてのつじつまが合う。
魔法を使うモンスター。
兵器を使うモンスター。
それらがすべて、「転生者」だったとしたら。
――僕たちが倒してきたのは、「仲間」だった――
でももう時間は戻ってこない。
前に進み続けるしか、ないんだ。
その先に何があっても。
でも今は、考えよう。
どうすれば、この世界から抜け出せるのかを。