合流
僕は一人草むらの中で寝ていた。
一人になってからもう二週間だ。ここまでくると植物と話したくもなってくる。
そんなことを思っていると、
「マスター? マスター!」
あの少女の声が聞こえた。
そんなはずはないと思った。この世界に僕以外の人間がいたのか?
「ラファエル……?」
「よかった! 生きてたんですね!」
抱き着かれた。
女の子特有の甘い匂いと、柔らかい何かが押し付けられる。
そして、気づいた。
「どうして、泣いてるの……?」
確かに、自分の感覚がおかしいのかもしれない。まあ事実かなりの年数一人ぼっちだったし。
でも、純粋に疑問に思ったのだ。
「え……? だって一人は悲しいじゃないですか」
まあそうか。そうだよね、きっと普通は。
そしてそう思ったその瞬間だった。
「ラファエル!」
僕は彼女を突き飛ばし、それに主砲を向けトリガーを引く。
ドドウンッ!!
それは、あのドラゴンとは違う、別のモンスターだった。
地面を四本の足で駆ける狼のようなモンスターだった。
「マスター。私の力を解放してください!」
「わ、わかった――ってどうすれば」
「一言、《解放》と言っていただければ……!」
どういう仕組みかは知らないけれど。
「《解放》!」
そういうと、彼女の体が蒼く光り、近未来的な装甲が展開された。
「それは――?」
「私は、簡単に言えば、兵器です。マスターの前世の数千年後の、ですが」
彼女はそう言いながら展開された武器を用いてその怪物にダメージを与えている。
もう少しで死にそうだ、と思った。だから僕は。
ドドウンッ!
トリガーを引いた。
「マスター!?」
彼女が悲鳴を上げる。どうして?
しかしそんな疑問も、そのモンスターの姿が人型になっていくのを見て消え去った。
「……ん……ここは……?」
その少女は。ついこの間まで僕の仲間――というか僚艦だった――
「明石さん!」
「島風? どうして……? それに記憶が……?」
彼女はまだどこか腑に落ちないようだが、まあいい。
少なくとも、一人でいるよりかはいい。
その時だった。
僕の脳裏に何かが映った。
それは、誰かが誰かに剣を振るったままの姿勢で固まっているという意味不明なイメージだった。
だけど、それを見てなんとなく思った。
――「僕」は誰だ?
と。ふと記憶をたどろうとして
「マスター? 顔色が悪いですよ?」
「え? そう? 僕はいたって快調だよ」
はたから見るとそんなに顔色が悪いのだろうか?
僕にはわからない。
「じゃ、とりあえず家に向かうか」
「そのほうがよさげか……そういえば島風。傷はどうだ?」
「寝てたら治った」
「……そうか」
明石さんがこめかみを押さえているのは気にしないでおこう。ていうか前「寝りゃ治る」って言ったのどこの誰ですかね?
でも事実は事実。
仕方ないよね?
ともかく僕は二人の「仲間」と合流できた。
十分、状況はましになったはずだ。
僕たちは家に向かって歩いた。
家というか、小屋なんだけど。