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噂のマモノ育て屋さん  作者: なすたまご
物語のはじまり
6/34

6 初の魔物は ウサギブタ(仮)



ちゅー ちゅる ちゅーちゅー


あまりに突然すぎて固まってしまった。

ウサギブタ(仮)は僕の腕に歯を立て、溢れてくる血を吸っていた。

3秒ほどそうして僕の血を吸い、腕から口を離してけぷっと小さくゲップをした。


いや、いやいやいや、何したんだこいつはー!!


痛みはほんの少しだけだったし、吸ってる時間も短かったからか、逆に何も反応できなかった。

僕から血を吸い取ったやつはペロペロと舌で口の周りについた血を舐めている。


も、もしかしてこいつって危険なやつなんじゃ…?


そう思ってウサギブタ(仮)から距離を取ろうとしたその瞬間、ブワッと地面から強く風が吹いた。


…ん?地面から、風?


なぜ地面から、と思って下を見てみると、僕とウサギブタ(仮)を中心にして光の輪が地面に浮かび上がっていた。


「うわー…ついにきたかー…」


これ、異世界あるあるだよ。この世界にもあるだろうなーって思ってたんだよ。

そうそう、絶対想像はするよね。これあるんじゃないかってさ。


「こいつ、何か魔法を使ったよな…」


光の輪は、文字なのか紋様なのか判別できないぐにょぐにょっとしたものが書かれた、いわゆる魔法陣のような、そんなもの。

その光の輪は地面から風を吹かせながら、ぐるぐると回って光を強めていく。

そして、一際強く光を放つと、僕とウサギブタ(仮)の間の空間に光が集まっていき、小さな黄色い塊になって浮かんだ。

すると、風が止んで黄色の塊が地面に落ちる。周りの魔法陣は既に消えていた。


えー…怖いよ、なんだよこの石ころ…


地面に落ちた黄色の塊を拾ってみる。

それは指の爪ぐらいの小さくて綺麗な石だった。

特別光を発していたり熱を持ったりはしていないが、木々から漏れる陽の光に照らされ、キラキラと美しく輝いた。


いったい僕に何をしたんだ!呪いか?助けてあげた恩人に向かって呪いをかけたの?!


石から目を離してウサギブタ(仮)に勢いよく目を向けると、ウサギブタ(仮)は目をパチクリさせて、口をポカンと開けていた。


「…お前がやったの?これ」


手の中の石を指で摘みながら聞いてみる。

ウサギブタ(仮)は、ウサギのような丸っこい尻尾をお尻ごとぶんぶんと振った。


「え、でも、お前が血を吸ったからこうなったんだろ?」


ウサギブタ(仮)はもう一度尻尾をぶんぶんと振った。

そして、口を開けて2本の歯を見せ、仰向けになって短い前足で自分のお腹をポンポンと叩いた。


「お前の主食…?お前っていつも血を吸って生きてるの?」


ぴょんと跳ねて、んぶぅと小さく鳴いた。


「血を吸っただけで他に何もしてない?」


んぶぅ


「なんで光ったのかわかる?」


ぶんぶん。


「僕も何もしてないんだけど…。」


ぴょんぴょん、フンッ。


「なんだったんだ今の…。」


そう言うと、ウサギブタ(仮)はその場でくるっと一周円を描いて、フンッと鼻を鳴らした。

どうやらこいつは光の輪の原因を知らないらしい。

こいつが知らないなら、一体なんだったんだ?

僕は何もしてなかったし、別に体に異常も…


…って、あれ?なんでこんなに意思疎通ができているんだ?


ウサギブタ(仮)に目をやると、かわいらしい目をキラキラと輝かせてんぶぅ、んぶぅと鳴いた。


そうか。そんなに僕の血は美味しかったか。けど今はそれどころじゃなくてね?

なんで僕たちが意思疎通できてるのかってことで…あーもうわかったわかった!また後で少しだけなら吸っていいから!!落ち着いて!


ウサギブタ(仮)は、僕の血がいかに気に入ったかを全身を使って表現していた。

さっきまで全然伝わらなかったジェスチャーが、今はすんなり理解できる。

といっても、頭の中で会話ができるとかいうテレパシーとか念話とかではなくて、なんかこう、なんとなく言いたいことがわかる、みたいな?

感覚的なことで説明し辛いけど、とりあえずこの生き物のジェスチャーから意味を理解はできる状態になった感じ。


これは明らかに、さっきの光の魔法陣?のせいだよなー。


こいつに血を吸われた直後に現れた魔法陣。絶対あれのせいだ。どうやってあの魔法が発動したのかは分からないけど、原因はあの魔法陣にあると考えて間違いなさそうだ。


あー、なんかもういろんなことがありすぎて、魔法とかすぐ信じちゃうし。


考えるの面倒になってきたな。うん。目の前で起きたことだし信じるしかないよね。



どうやらこの世界は、地球にはいなかった生き物がいて、魔法という不思議な力が存在していて、言葉を交わさない生き物と意思疎通ができる、そんな世界のようです。



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