邂逅
「君、誰だ」
「あたし?名乗る義務はないわ。さ、あたしの夢のためにとっとと消えてもらうから。どうやって死にたい?」
「待てよなんで君は生きているんだ?生体反応装置には…」
少女は首を傾げる。
「何言ってんの?」
彼、少年は急いで装置を調べる。しかししっかりと作動しているようだ。小さなモニターも鮮明に映る。ネジも抜けていない。手のひらにすっぽり収まるその装置は人類が生きていた頃の最新の技術で作られたものだ。昔に全世界に普及していたスマートフォンと似た形をしている。そうそう壊れない。誤作動を起こしているのだろうか。しかしそれは絶対にあってはいけない。この機械は人間に限る生体を感知して、使用者に知らせる物だが、軍事兵器の一つとして開発された。もしも敵国の兵士の存在を使用者に伝えられなかったらことである。
機械に強いわけでもない少年は諦めて、再び少女の方に振り向きうすら笑いを浮かべた。
「機械とか…分かる?」
少女は黙って反対の方向へ首を傾げた。そして宣言するように言い放つ。
「よし、銃殺!」
「あ、待って、よせ!」
銃声が響いた。
「確かに心臓を打ち抜いたはずなんだけど…」
少女は目の前の少年が倒れないことに疑問を感じてぽつりとこぼした。
少年は胸を撫でおろした。それに気づいた少女が頬を膨らませて腕を組む。イライラしているらしく、地面をタムタムと踏み鳴らしている。
「ねえ!なんで死んでないの!?ちょっと!答えて」
「じゃあ名前を教えてよ」
「まさか出会い厨ってやつ?気持ち悪い」
「違うよ!だって俺は……」
少年が口をつぐんだ。その先を言ってもいいのか、躊躇したのだ。
しかしよく考えてみればさほど問題ないように思えて、若干戸惑いつつも口に出す。
「君を殺すつもりだし」
少女はぱちくりと目を開いて、銃を下げた。
「ふーん。それはまあ。うん」
どう反応していいのか分からないらしい。
隙をついて少年が言う。
「だから最後に殺す人の名前くらい知りたいと思ってさ」
「なるほどね。じゃあ、心臓を撃っても死ななかった理由を言えば名前を教えてあげる」
少年はこの提案に乗ることにした。