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第61話 『極秘』

「小村丸……よ、あ、あいつは、巫女を……手に入れ……ようと……」

武帝は、虫の息で何かを小村丸に伝えようとしていた。

「オ、オビトに……み、巫女を渡せば……ほ、滅びるぞ……」

それが、武帝セツナの最期の言葉だった。


イオリが武帝に駆け寄り、息を確認した時には既にこと切れた後だった。



結局、小村丸の前にオビトが姿を現わす事は無かった。オビトは、過去宮中で多くの人間を殺した。身を守る為でもあったのだろうが、それは決して許される事ではなかった。しかし、今、オビトとおぼしき者が、小村丸とイオリのピンチを救ったのだ。


「先生は、どう思いますか? オビトは、俺達の敵じゃないんですかね」

イオリには、オビトの目的が分からなかった。


勿論、オビトにとっては敵対する武帝を潰す良い機会であった事にはなるのだが、武帝に攻撃を加えた訳でもなく、ただ小村丸を救っただけの所作は、疑問の残る点であった。


「私には分かりません。兄が何を考えているのかを。しかし、あの場に来たのは確かにオビトだと思います。私に言えるのはそれだけです」


いつも明確な回答をくれる小村丸は今回の件では、歯切れの悪い返事をした。それでイオリもこれ以上聞くのをやめてしまった。


ガタッ……


不意に物音がしてイオリ達は、振り向いた。


「ううっ……」

誰かの呻き声がする。イオリと小村丸が近付いてみると十霊仙の1人が床に倒れていた。小村丸は、直ぐに回復術を施した。


「ひとまず、応急処置はしましたがまだ危険な状態ですね」

十霊仙の怪我は酷く、小村丸の回復術でもなんとか命を取り留める程度でしかなかった。


ようやく騒ぎに気付いた本部の役員達が会議室に辿り着き、小村丸は状況を説明した。役員達は驚いていた様子だったが生き残った十霊仙が事実と認めた為、武帝の付添いの門下生に改めて事情聴取と荒れた屋敷の後処理を行う事になった。


ひとまず事態は、沈静化したのだが亡くなった十霊仙と武帝の件は、極秘との判断が下された。

小村丸の十霊仙入りも保留になった事は言うまでもない。


「さあ、帰りますか、イオリ殿」

小村丸は、清々とした口調でイオリに言った。


「先生、武帝が言った巫女の事なんですけど、あれは一体どう言う……」


「さあ、私にもわかりません」

またも歯切れの悪い小村丸の返答。


「だったら武帝の門下生を問い詰めれば」


「その必要は、ありません。門下生からは何の情報も得られないでしょう」

未来を見通す力を持つ小村丸には、既にわかっているのかも知れない。小村丸は続けた。


「もし、私の推測が当たっていれば近い内にハッキリするでしょう。それはイオリ殿にも関わってくる事かも知れませんね」

思わせぶりな言い方をした小村丸にイオリは眉をひそめた。


イオリが知る限りでは巫女と言えばミツキの母親であるキリハだけだ。果たしてそれが自分に関係して来るのだろうか?


いずれわかるのであれば、今はひとまず良しとしよう。イオリはそう考える事にした。


「そう言えば宮中へは寄らなくて良いのですか、先生」


「ふむ、水無月の件ですね。恐らくまだ武帝がいなくなった事を彼は、知らないでしょう。だったら様子を探るのも面白いかも知れませんね」


宮中師範、水無月は武帝セツナと繋がりがある、そう小村丸は考えているのだ。


「では少し寄り道をしましょう」

小村丸は転送術を展開した。


「せ、先生! 歩ける距離でしょう!」


「まあ、楽ですから……」


小村丸が結構面倒くさがり屋だと気付いたイオリであった。

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