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第56話 『策士』

イオリ達が、外に出るとちょうど転送術でミツキがやって来るところだった。


「おーい、ミツキっ!」

イオリの呼びかけにミツキも気付いたようだ。


「イオリ、もう終わったの、ああっ、零度さんまでいるじゃん」


「お久しぶりですね、ミツキさん、私、今回は活躍したんですよ」


「待て、話は後だ、まずはクダンさんの妹さんの容態が気になる、一旦屋敷に戻ろう」


「イオリ様、私の妹という訳ではありませんが……」


クダンの言葉は、イオリに遮られた。


「ミツキ、頼む!」


「もう出来てるよ!」


皆が、ミツキの転送陣に飛び込んだ。


屋敷に戻ってからもクダンは、ブツブツと何かを呟いていたのだが誰もその事には構わなかった。


ネネの妹カスミは、ルリの部屋で休んでいた。どうやら命には別状ないようだが体の方が衰弱しており、暫くの安静が必要だと思われた。


ともあれ、関わった一同は、ひとまずホッとしたのだった。


「良かったな、ネネさん」

「ありがとうございます、これもクダン様のおかげです」


「いや、敵はほとんどユリネさんが……」


クダンの話の途中でユリネが被せた。


「クダン様が、敵の鎧武者を仕留めて下さったのであの支部を壊滅させる事が出来たのです」


「まあ、そうでしたか」

ネネの眼がキラキラと輝いたのでクダンは、何も言えなくなってしまった。


ユリネもたいがい空気の読める女なのだ。




「よし、行くぞ零度」


「承知!」


俺と零度は、裏口からこっそり外に抜け出した。勿論、例の約束を果たす為だった。


「待ちなさい、イオリっ!」


「!?」

そこには、ミツキだけでなくルリとユリネまで待ち構えていたのだ。


「なっ、どうしてお前達が……」


「結界よ、イオリ」

何だか前にもこんな事があったよな、とイオリは思った。俺達は、ミツキの張った結界にチョロくも引っ掛かったのだ。


「おいっ、零度気が付かなかったのかよ」


「ええ、今、私は鰻丼の事しか考えていなかったんですもの」


何だかルリがふくれっ面をしている。

「零度さんは、お兄様とどう言ったご関係で?」


「ええ、私は以前イオリ様と一緒にお風呂に入ったことが……」


「おいいーーーーっ! 違うだろ。れ、零度は、小村丸先生の遠縁にあたる霊界師なんだよ、ねっ、ねっ」


全員がジト目でイオリを見た……


「さて、着きましたよ、『うな次郎』」

ユリネの案内で地元の鰻屋に着いた。

うな次郎は、イチジョウの街一番の鰻の名店だ。そして料金も勿論一番だ。

この店の事は、当然イオリも知っていた。


「ええ〜っ、うな次郎なの」

ぼやきながら店の扉を見たイオリの眼は輝いた。なんと定休日の札が、掛かっていたのだ。


「いやーっ、残念、残念、今日休みだってさ」


「ちっとも残念そうに言ってないから」

ミツキは、忌々しそうに突っ込みを入れた。


「そ、そうだ『うな吉』だったらやってるんじゃないのか」

イオリの記憶では、うな吉は、庶民的な店だった。


「ふふふっ、イオリ様がそう言うなら『うな吉』に致しましょうか」

ユリネが意味ありげに笑って言ったのをイオリは訝しげに思ったのだが安く済まそうという魂胆を見抜いただけだろうと思っていたのだ、店に着くまでは


「おいっ、ここだ……よな、うな吉」

イオリの眼の前には、大きな店構えのうな吉の姿があった。うな吉は、イオリの知らない間に腕のいい鰻職人を雇い、今やこの街一番の鰻屋にのし上がっていたのだった。勿論、お代も一番だ。


どうやらユリネに謀られたようだ。ユリネは、うな次郎が休みだと知っていてイオリをうな吉に誘導したのだった。


イオリは、鰻丼を喜んで食べる皆んなを微笑ましく眺めていたが、財布の中身は、ほぼ空っぽになったのは言うまでもない……

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