第45話 『体質』
「風呂に結界張るかなぁ、普通」
豪快にぶつけた額がまだヒリヒリと痛い。
俺が慌てて向かった風呂の戸には、鍵が付いていなかったのだが、そこには、ミツキが張ったであろう結界の壁があったのだ。
つまり、俺はブレーキも掛けずに壁に衝突する羽目になった、バカだよね、俺。
物音に気付いて風呂から出て来たミツキとネネは、額を抑えながら転がる俺を見て怒るよりも呆れ返っていた。
「ネネさんの占い通りだね、水場に不埒な輩あり」
「ふふふっ、なんだかお気の毒ですね」
二人は、腕を組んで不埒な俺を見下ろしていた。なるほどネネの仕業だったのか。
ちっ、便利な奴め……
「ふざけんなよ! 慌てて来たのにはちゃんと理由があるんだぞ。明日、小村丸先生がメイデンに連れて行ってくれる事になったから急いで伝えに来たんじゃないかよ!」
「なんだあああっ! 逆ギレですかああっ」
ミツキが、ぶちギレてしまった。
その後、俺は半時間ほどミツキに説教されたのだった……
「ミツキさん、足が痺れたんですけど」
正座で説教は、しんどい、はっきり言って俺は正座が苦手なのだ。
「イオリは、実家で正座させられなかったの?」
「嫌だったからずっと木刀振ってたんだけど、そしたら修練の鬼みたいなあだ名が付いたんだよなぁ」
そう言えば、この頃は毎日ユリネに怒られていたような気がする。今もミツキに怒られている事を考えるともしや体質なのか、これは……いや違うな 、俺だ原因
ネネは、既に部屋に戻っていたのだが、また石でも磨いているのだろうか。とにかく必要な事は、伝わっているだろう。
「あたしは、ネネさんに挨拶してから、寝る事にするよ」
「ちょっと待ってくれ、ミツキ! 今から俺の部屋に来て欲しいんだ」
俺は、どうしてもミツキを引きとめたかったのだ。
「へっ? な、なな、何かあたしに、よ、用事でも……」
「大アリだよ、大事な要件があるんだ、お前じゃ無いとダメなんだ」
ミツキは、何か考え込んだ後、耳まで赤くなって小さくうなずいた。
「ちっくしょう! 王手っ!」
ミツキは勝っているのに何が不満なのかヤケクソに、なっていた。
「てかっ、イオリっ、何であたし達は、こんな時間に将棋指してんのさ」
ミツキは、なぜか半泣きになっていた。
「悪い、勝てないから意地になってた」
「おいっ!」
「まあ、ちょっと聞けよ、ミツキ。今から大事な事を話すから……」
要件を話した後、ミツキは困ったような顔をして俺に問いかけた。
「イオリは、そう思っているの?」
「俺は、それを確かめたいんだよ」
さまざまな思惑を秘めたまま、メイデン出発当日の朝を迎えた。




