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第43話 『拠点』

荒川師範は、やはり何かに怯えているように感じられた。先程までの荒々しいようすも影を潜め、焦点も定まらない。


「荒川師範、霊力研鑽会ってご存知ですか?」


「い、いや、私は何も知らない」

動揺した様子から何かを知ってはいるのだろうが、頑なになられても困る。

俺は、質問を変えた。


「氷堂は、元々この道場にいたのですか」


「ああ、氷堂は、ここの師範代だったが、ある男に誘われてここを出て行ったんだ、上からの口添えもあり、断るすべもなかったのだ」


「それだーっ!」

ミツキの道場内に轟かんばかりの声に荒川師範は、ビクッと体を震わせた。


「おいっ、ミツキ、俺までびっくりするだろうが!」


「あたしが、知っている昔話でわらしべから物々交換で大金持ちになるって言うサクセスストーリーがあるんだけど、辿ろうよ。氷堂を誘いに来たある男からさ」


わらしべ長者は、俺も知ってはいるが、その理屈だと辿り着く先は、サクセスどころかボスキャラでしか無い。


「イオリも、どんどん強い相手と戦えるから、たぎる闘争心を持て余すことも無いから一石二鳥だねっ」


「俺そんなに闘争心、持て余してねーよ」

まるでバーサーカー扱いだ。


「荒川師範、ある男の事を詳しく教えて下さいな」

ミツキは、荒川師範に対してにこやかに木刀を突きつけた。


「メイデンの街に住む、加納シモン……」

重い口をようやく開いた荒川師範から聞けた事は、これが最後だった。




「イオリっ、なんか情報しょぼかったね」


「ああ、苦労した割にな」

奴らが呼んでいる" あの方 "については身分の高い貴族だと言っていたのだが、恐らく出まかせに違いない。


散歩の途中で気まぐれに立ち寄っただけにしては関わりのある人間の名前がわかっただけでも良しとするか。


俺たちは、その後何軒かの店を冷やかしてから小村丸の屋敷に戻ったのだった、


「メイデンの街と言いましたか⁉︎」

俺たちの報告に小村丸は、語気を荒げた。ネネは、自分の部屋に戻り、今は3人だけだ。


「お父様何かご存知なんですか」

様子のおかしい小村丸にミツキが食い付いた。


「メイデンの街は、私がキリハと旅をした、思い出の場所なんだよ」

小村丸は、昔を懐かしむような遠い眼をしてからミツキを見て微笑んだ。

ミツキもキラキラとした眼をしながら小村丸を見返した。


「お父様、私もメイデンの街を見てみたいのですが、イオリと行ってもよろしいでしょうか」

ミツキは、珍しくしおらしい物言いをしている。父親が、心配してくれているのを充分に理解しているからだろう。


「ミツキ、ダメと言ってもあなたは、聞かないでしょう。ただし、今回は調査だけですよ、正直悪い予感がするのです、イオリ殿、くれぐれもお願いしますね」

またもや、そこに俺の意向は、なかった。


今回だけでなく、今迄小村丸は、俺たちに戦えと言った事は一度もなかった。俺の故郷での妖魔つきの討伐を除けば基本的に調査しか依頼していないのだ。

今にして思えば小村丸は、最初からミツキに危ない橋を渡らせるつもりはなかったのだと思う。


にも関わらず、毎度戦いに巻き込まれる俺とミツキの体質? を小村丸は懸念しているのだった。


「先生、メイデンの街には何か問題があるような言い方ですよね」

俺の問い掛けに、小村丸は少し眼を細めて言った。


「メイデンには、霊力研鑽会の本部があるのです……」

小村丸は、迷ったのか少し間をあけてから続けた。


「私は、そこに兄オビトが関わっていると睨んでいるのです」


小村丸の兄" オビト "。街の一つなど軽々破壊出来る程の霊力を秘めた元十霊仙にして霊界師、そして今は意志のあるロイドとなっている。


真剣な表情で聞いているミツキの横顔を見ると、なんだか変な汗が出てくる俺だった。

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