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第42話 『勝機』


" 厄介だな "

荒川師範と対峙した俺は、氷堂と一戦交えた時の事を思い出していた。

結果として勝利を収めたものの慢心が、あれば立場は、逆になっていたかも知れない。


しかも、今回はこちらが売った喧嘩だ、荒川師範に対して恨みがある訳でも明確な大義名分がある訳でもない。

ただ情報が、欲しかったのだ、たちあい氷堂と霊力研鑽会の繋がり、いや、無限流との繋がりの是非に関してと言うべきだろう。


血の気の荒いミツキのやり方に乗っかっては、みたものの気持ちがブレるようであれば剣が鈍る、ならばいっそ楽しもう、無限流師範との、この立ち合いを。


俺は、両手で自分の頬をパンと叩いた。


「よし!」


ミツキとネネは、覇気のない俺の様子を心配そうに見ていた。 さっきまでの威勢は、どうしたのかミツキは、借りてきた猫のようだ。


" らしくないな、全く…… "

俺は、荒川師範に対して木刀を突き付けた。


「無限流は、霊力研鑽会と称してよからぬことをしていると聞いております。ならばここでミツキ流が、それを正しましょう」

俺は、荒川師範にカマを掛けたのだ。


「き、貴様、氷堂から何か聞いたのか、あの方の事は……」

荒川師範は、何かを言い掛けて慌てて口をつぐんだ。その様子は、少し怯えているようにも見えた。


どうやら、大義名分も出来たようだ。

荒川師範は霊力研鑽会に関わっているのだ、何らかの形で……


「イオリっ、倒してしまいなさい、先に謝ってあるから」

ミツキは、両手の親指を立ててそれを下に向けた。

どうにもミツキ流はガラが悪い。


「ヘッポコ剣法で私を倒すなどと、悪い冗談だろう」

無限流師範は、バカにしたように鼻で笑った。


「荒川師範、確かにあなたは強いかも知れません。しかしミツキ流は、それ程弱くは無いですよ。なにせ氷堂を倒した剣術ですからね」


「はああっ? 戯言を、お前ごときが氷堂を倒したなどと」


「ならば試してみますか、俺の剣」


無限流師範の腕前、どれ程のものだろうか……

剣士としての血が俺を駆り立てるのか俺は、心地よい高揚感に包まれた。




合図も無く勝負は開始され先程までとは打って変わった張り詰めた空気が、流れた。


互いの間合いが、重なり、刹那二本の木刀が、同時に振り下ろされる。荒川師範の木刀は、ムチの様相で俺の木刀を叩き落とさんとし、堪えた所に二刀目の追撃が重なる。


かろうじて、木刀を手放すことを免れた俺は、堪らず一旦間合いを取り直した。


二段構えの攻撃、これが荒川師範のスタイルのようだ。二本の木刀を防御にまわすことを捨て、攻撃のみに傾注させる、氷堂とは全く違った二刀流のあり方だった。


荒川もまた無限流の異端なのだろうと思われた。俺がそうであったように……


またも荒川師範が、俺の木刀に狙いすましたような一撃を浴びせる。今度は、一太刀目をさばいて追撃を受け止める。そして弾けるように距離を取る俺と荒川。



どうやら俺も防御を捨てる覚悟が必要のようだ。次の荒川師範の攻撃が二段構えでは無く、左右独立した動きを見せたのであれば俺は、敗北するかも知れない。


それ程のリスクを負うことでやっと見える勝機……


体が震える……臆している訳でもなく、緊張している訳でもない、楽しんでいるのだ、この状況を、強者とのせめぎ合いを。


鬼ではなく、人間としての俺が……

俺は、ニヤリと笑った。


強張った顔のミツキとは、対照的にネネの薄っすらと笑った顔が目に入った。


視線のそれた俺を荒川師範は、見逃さなかった。一瞬で間合いを詰めて木刀を振り下ろす。


俺が狙っていた瞬間だ! 荒川師範はワザと外した視線に反応して仕掛けてきたのだ。


二本の木刀は、連撃を繰り出すべく並行して俺を襲う。


俺は、さらに踏み込み荒川の二本の木刀の間に自分の木刀を差し入れ左右に払った。


荒川の木刀は、Vの字形に開かれ頭部がガラ空きになった……





「荒川師範、約束通り氷堂の事を教えて下さい」

しばらく気絶していた師範が目を覚ますとミツキが、穏やかな口調で言った。

一応敬意を払っての事だろう……か。


「いったい、お前達は、何者なんだ!」

荒川師範は、混乱を隠せない様子だった。


「ただのヘッポコ流派の者ですよ。とっとと話して貰えますか、荒川師範」

そう言ってミツキは、ニヤリと笑った。


たいがい、血の気の荒い娘である……

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