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第40話 『嘲笑』

「佐々木殿と申しましたかな、私は、当道場の師範 荒川ショウゾウと申します。あなたが、そこの新弟子の代わりに稽古を受けると言うのであれば、当流派の流儀に従って頂く事になりますがそれでも宜しいですかな」


無限流が、他流派との試合を禁じてはいない事をイオリは、知っていた。来る者は拒まず叩きのめす、無限流とはそういった流派なのだ。


それ故に勝つ為には、手段を選ばないと言った闇の一面も持ち合わせている。


「構いません、ただし俺が勝ったなら荒川師範にお尋ねしたい事があるのですが」


「いいでしょう、私が知っている事であれば質問にお答え致しましょう」

荒川との交渉は、ミツキの予定通りうまくいったようだ。


さて、ミツキ流としては、どんな戦い方をしたものかな、などと俺が考えているとネネが、何やら言いたそうな顔をしていた。


「どうしたネネ?」


「はい、あの荒川師範という方は、なぜイオリ様が負けた時の条件を付けないのでしょうか」

確かに荒川師範は、一方的な俺の要件だけを了承していた。


「まあ、向こうが俺に望むものがないんだろうな」

俺は、ネネにそう言ってゆっくりと立ち上がった。ゆっくりと立ち上がったのには、わけがあった。



"ああ〜っ、しびれた〜っ"

そう、俺の足は、絶賛しびれ中だったのだ。なぜかミツキとネネだけは、座布団が用意されているのに俺は、板の間だった。ひどくね、コレ、全くお姫様達の用心棒扱いだよね。


ふらふらとした足取りで倒れている少年剣士のところに行き、木刀を受け取った俺は、なるべくゆっくりと年配剣士に近づいて行った。しびれている足を悟られないように……そっと



「イオリーっ、何だか動きが不審だよ、足でもしびれてるんじゃないのっ」


ばっ、ばらすんじゃねーよ! ミツキ!

その言い方は、むしろ敵のヤジだろうが!


「くくくっ、しびれた足でこの埴輪丸に挑もうとは、世間知らずにも程があるわ」


ハニワマル、くっ、外見と違い随分かわいい名前だぜっ!


「なあ、埴輪丸さん、あなたのいう通り俺は、しびれて動けない。しびれが治るまで待ってもらえるかな」


「わはははっ、そんな訳ないだろうがっ!」

埴輪丸は、そう言ってここぞとばかりに打ち込んできた。


狙い通り俺の間合いに入ってきてくれたのだ。木刀を上段に構えながら突っ込んでくる埴輪丸は、本当の埴輪のあの形に似ていて何だか愛らしい。


しかし、胴体がガラ空きだけど打ち込んでもいいかな、俺っ、まさか割れたりしないよね、ハニワ先輩。


「イオリーっ、たたき割れーっ」

ミツキ流は、まったく容赦がないようだ。たたき割れって人間相手に使う表現じゃないよな……


俺は、埴輪丸が木刀を振り下ろそうとした瞬間、下段の構えから奴の持った木刀の柄の尻を狙いそのまま上に跳ね上げた。

すっぽ抜けるような形で木刀は、飛ばされ埴輪丸は空の手だけを振り降ろすという間抜けな事になった。


"封殺 古墳返し"


さっき考えたばかりの埴輪丸専用の秘剣だ。断じてネタ秘剣では無い……


他の門下生達から嘲笑があがった。少年剣士も一緒に笑っていたが、後でどうなるかまでは面倒見れないよ。


俺は、丸腰の埴輪丸の頭を木刀でコツンと叩いた。無限流のルールに従ったのだ。


「ま、参りました」

ハニワ先輩は、しょんぼりと肩を落とし負けを認めた。心は、粉々に割れてしまったようだ。


「いえ、紙一重でした……」

ペコリっ、俺は礼をした。


荒川師範を見ると凄い形相をして俺に話掛けてきた。


「もう、ウォーミングアップは、よろしいですかな」


荒川師範は、なかなか食えない人のようだ。

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