表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/75

第26話 『暗闇』

  結界に反応があったのは5箇所だった。

 最低でも5人の影がいるのだろう。


 この規模の屋敷に暗殺者として入るにしては多い人数だと思う。恐らく奴らは、警戒を見越して暗殺から力技に切り替えたのだろうと思われた。


 なぜ、そんなにも霊界師を執拗に狙うのだろうか。もちろん影の意思ではなくその背後にいる者の意思ではあるのだが……


 イオリは、ハルマから何も情報を得られなかったことを悔やんでいたのだった、たとえあのギリギリの状況であったとしても。


 今回の影の狙いは、ひとつだ篠宮の命なのだ。であれば必ず影は、篠宮のもとに来る。ただ5人の影を相手にするのはあまりにリスクがありすぎる。


「ミツキ、何とか俺は、先に2人倒しておきたいんだ。先生のところで待てるか」


 ミツキは、頷くと奥の座敷に向かった、篠宮先生の所に行くために。


「さあて、いきますか」

 イオリは、長剣をすらりと抜くと音と殺気だけを頼りに影に近づいていった……


 ミツキが、奥の座敷にたどり着くと篠宮先生と数名の門下生がいた。

 古参らしき門下生が、部屋の周囲に結界を張り直し、他の門下生は、槍を持って構えていた。

 その様子から、ただならぬ緊張感がミツキにも伝わってきた。


 霊界師は、本来、守ることを得意としている。攻撃を得手にはしていないのだ、今回のような人間相手ではなおさらだった。オビトのような存在は例外としても…


 部屋に張った結界は、ひとつには、敵の感知の意味があり、もうひとつは、結界ごと空間を閉じる意味合いがある。

 後者の場合どうなるか、ミツキには、充分理解出来ていた。


「篠宮先生どうして逃げないんですか!」ミツキは、篠宮に叫んだ。


 篠宮は、落ち着き払ったようすで座敷に座っていた。

 いざという時は、敵とともに結界を閉じる覚悟なのだろう。


「終わらせたいのですよ。この愚かな争いを」篠宮は、静かに言った。


「あいつらを倒しても次の代わりが来るだけじゃないですか」


「いいえ、終わりますよ。この妖刀とともにね」

 篠宮は、持っていた脇差のような短い小刀をミツキに示した。


 奴らの狙いは、これだったのだ……


 小刀の妖刀の希少価値は、ミツキにはわからなかったが珍しいものだと言う事はわかった。


「この妖刀は、最近私の所に持ち込まれた物です。影は、これを追いかけて来たのでしょう。お陰で何人もの霊界師が犠牲になりました。これを消滅させる事が私の責任でもあるのです」


「だったら妖刀だけを……」


「出来ないんですよ、ミツキさん、妖刀の力は強力です。恐らく結界を弾くでしょう。私が妖刀の力を抑えながらでなければね」


 それだと術者もろとも結界を閉じなければならないだろう。


「さあ早くあなたも結界の外に出なさい」

 門下生たちは、影を防ぐ為にすでに座敷の外に出ていた。


 ミツキがためらっていると外で争うようすがした。影が来たのだろう。


 イオリは、まだ来ないようだ。

 どうすればいい、ミツキは、焦っていた。

 争いが止み、座敷の戸が開いた。

 入って来たのは、やはり影だった…


 影は、篠宮の持つ小刀を見るとニヤリと笑った。


 そして篠宮に語りかけた。

「先生、無駄ですよ。我らは、結界を解くことが出来るんですよ」

 恐らくヨシツネのような奴がいるのだろう。


 影は、呪文を唱えると霊符のひとつを剣で切りさいた。そしてこちらに近づいてきていた。


 篠宮の顔に初めて焦りの色が浮かんだ……


「先生、ごめんなさい」

 ミツキは、篠宮の持っていた妖刀を奪うと封印を解きサヤから抜いたのだった。


 あの時イオリが、そうしたように…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ