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第14話『共鳴』

  宮中での要件が済み俺達4人は、レイドの町に向かっていた。

 小村丸への今回の報告、そして別の依頼をしなければならないのだ。


 俺とミツキの足取りは重かった。

 そんな雰囲気を感じたのかルリが言った。

「兄さん、なんだか具合が悪そうですが大丈夫ですか。」

「大丈夫だよ。少し寝不足だったからかな。」

 こんな時は、何も起こらなければいいのだがと俺は思っていた。

 幸い天気だけはいいようだ。


「ユリネ、小村丸先生への手紙の内容は、見たか?」

「ええ、失礼とは思いましたが念の為確認致しました。」

「なんか変わったことはなかったか。」

「そうですね。特には感じませんでしたが、ただ…」

「何か気になる点があるのか?」

「いえ、文章が随分苦手な方のようで、ぎこちないというか。」

「おい、その手紙を見せてくれないか!」

 俺は、途中の茶屋で手紙を受け取ると文面に目を通した。


 《文面》


 拝啓

 貴殿益々のご活躍

 皆喜んでおります。

 手強い妖魔つきに被害が出ており

 協力の要請がありました。お願い

 づくめではありますが佐々木家に

 何卒、霊界師の派遣を切に願う


 怯えています。皆むごい死に。


 《以上》


「なるほど、急いで書いたせいか"敬具"も抜けてるよな。最後の文章もいらない気がするし……」

 俺は、この手紙は誰が書いたのかユリネに尋ねた。


「確か師範代補佐の二ノ宮様とおっしゃる方だと記憶しております。」

 師範代補佐が、この文章を……。

 だとすればワザと不自然に書いたのか?


 俺は、もう一度文面を見返した。

「ああっ!」そうか、なるほどこれは小村丸へのメッセージだ。

 これで少し手掛かりが掴めそうな気がして来た。


 ユリネには、後で説明するので今は先を急いでくれないかと伝えた。

 小村丸に急いで確認したい事があるからだ。


 思いのほか仲良くなったのか団子の食べ比べをしていたルリとミツキは、慌ただしく出発することになった。


 夕方になり、さすがにお嬢さんたちは、疲れた様子だ。今日は、この近くで宿を探す事にしよう。


 俺達は、オリヅルという町に宿を取った。


「かわいい名の町ですね、兄さん。」

「帝都に比べたら小さい町だけど静かでいいよな。」

 こじんまりした町の風情は、気持ちを落ち着けるのにちょうど良い感じだった。


 しかしそれも長くは続かなかった。


「イオリ様!」

 ユリネが突然身構えた。通りの前からひとりの剣士が歩いて来ていた。その隻眼の剣士は、殺気を隠しもせずに俺達に近づいて来たのだ。


 間合いに入るほどの距離になりその男は立ち止まった。

「ほう、女連れとはいいご身分じゃないか。」

「いや、あいにく連れて貰っているのは俺の方だ。」

「随分とぼけた男だ。お前、名は何と言う。」

「ふっ、まず自分から名乗るのが礼儀だと思うが。」

「俺はハルマ、隻眼のハルマだ。」

「ハルマか覚えておこう。俺は、名乗るほどの者では無いがヨシツネとでも呼んでくれ。」

「ヨシツネか、今日はそこのおっかない姉ちゃんに免じて勝負は、預けるが次は無いと思えよ。」

 テンプレみたいなセリフでハルマはあっさり引いた。


 ハルマが立ち去るまでユリネは、ハルマをずっとにらみつけていた。


 この時、俺はまたハルマに関わることになるとは思ってもいなかったのだった。

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