第0話 『プロローグ』
「オビト様いかがなさいますか。」側近の言葉にオビトは、少しイラだった様子で答えた。
今回も目当ての物は、手に入らなかったようだ。
「もちろん捜索を続けるのだ。アレを何としても見つけなければならない。」
「かしこまりました。」と言って側近は、姿を消した。
"アレは、俺のものだ。俺の一部なのだ。"
オビトは、鏡に映る自分の姿を見た。髪は白く、目はルビーの様に紅く光っており、そして頭には、2本の角が生えていた。
"もはや人間の姿では無いな。"
オビトは、フッと笑ったがすぐに怒りの表情に変わった。
そう、必要なのだ。
やつらに、いや人間に復讐するために……
「イオリ兄さん、どうして行っちゃうの!」妹の言葉に俺は、立ち止まった。
内緒で出て行くつもりだったのだが、どうやら見つかってしまったようだ。
妹は、この家で唯一の俺の理解者でかけがえの無い人間だ。
腰まである長い黒髪は美しく、顔は、ひいき目を差し引いてもかわいいと思う。
「すまない。俺の剣を極める為にどうしても必要なんだ。黙っていたのは、大切なお前と別れるのが、つらくなるだろうと思ったからだよ。」
妹は、うつ向いて少し恥ずかしそうに顔を赤くした。
「ほ、本当に……わたしのこと……大切に……」妹は、消えそうな声で言い、よく聞き取ることが出来なかった。
「今、なんて言ったんだ。」
「な、なんでも無い。わかった、わたし我慢して兄さんの帰りを待っている!だから頑張って早く帰ってきてね。」
そう言うと妹は、泣きそうな顔でにっこり笑った。
"旅立たないといけないのだ、すべてに決着を付ける為に"
決意を新たにした俺は、足を前に踏み出したのだった……




