朝~昼間
今日の仕事を探して掲示板を眺めていると、黒い服の男達に人気のない路地裏に連れて行かれた。
何事かと思ったら、とある政治に疑問を持っている団体の会議が行われるので、俺に用心棒として働いて欲しいんだそうで、俺がこの国の人間でもないし、いつ殺しても簡単に隠せるのでかまわないということも丁寧に解りやすく言われた。
刃向かっても仕方がない。
報酬があることと今日だけの仕事で明日からは関らないことを上手く約束させようとしたら、報酬はあるが情報を漏らさない為に組織の一員になってもらうとのことで、刃向かっても仕方がないが大変な事になった。
兎に角、受けざる負えない。
言われた時間に言われた料理屋に行き、言われた人数の団体客を受付に探してもらい、その客が居る部屋へ通してもらう。
朝からなにやら優男から屈強な男まで、とにかく人数が多く、数十人ほど居る。俺が入っても全員気にも留めない様子で話し合っている。
その時、部屋の外で「某組織の違法な密会が行われると聞いて来た。通してもらおうか」と明らかに敵らしい声が聞こえた。
すると部屋の男達は刀を抜く者と、脱出できる場所を探す者に分かれた。リーダーらしき者は一人、自分の刀を静かに眺めている。
しかしここは二階だ。脱出できるとすれば窓から飛び降りるしかないので、周りを兵で囲まれていることを確認し、結局刀を抜くのだ。
俺は素早く麻呂を召喚した。今日はアルラウネには周辺の散策、主に使える無人の小屋はないかを調べさせている。
ドアから数名の味方が飛び出していった。それを見て、更に多くの味方が部屋の外に出た。
組織の人達は全員、黒い鉢巻をしているので敵味方の区別がつく代わりに、かなり目立ち、戦いを挑むことを発表したも同然だった。
数名残って外の兵を魔法で攻撃し、なんとか飛び降りて逃げ切る隙を作ろうとしている。
リーダーらしき人間は動かない。捕まる覚悟を決めたようにも、勝利を確信しているようにも見える。
ドアから兵隊が1人入ってきた。流石に俺も戦わざる負えない。刀をかわし、魔法は魔反を直前に使うことで魔力を節約しつつ戦い、なんとかドアの外に退かせた。
麻呂にドアの直ぐ外で戦うよう命じた。すぐに槍より室内で戦える刀を抜いて戦ってくれている。
麻呂が殺しきれなかった奴がこの部屋に入ってくるので、素早くパンチで倒す。待ち構えられる分、入ってきた瞬間の隙を狙える。
軽装備ならパンチで十分頭部を狙えるが、重装備なら兜のせいで狙えず、魔法で戦う必要が出る。
もはや広範囲魔法を連発する魔力も尽きた室内の人が部屋の外に覚悟を決めたように走っていった。
「今でおじゃ!」隙を見て麻呂が外へ出るよう合図する。
その時、リーダーが部屋の外まで出ようと動き出した。三人で外まで駆け抜けようという考えだろう。生き残るという意思があるだけ関心な試みといえる。
俺は外に出る直前にそれを確認した後、麻呂と階段を下る。
敵が見えれば速めに貫通光弾で倒す。相当当たり所が悪くないと貫通光弾程度では死なないが、受けた直後に動けるほど弱くもない。
少し遠くの敵は俺が魔法で倒したが、麻呂は俺より前を走り、敵の首を切り、胸を刺していく。恐らく麻呂の方が近接戦闘であれば俺より上だろう。少なくとも思い切りの良さは俺よりいいんじゃないだろうか。
味方の死体を踏み、漸く出口が見える所まで来た。敵はもうある程度勝利を収めたように帰ったりしていて少ない。死体の身元確認等の係りの兵との戦いだ。
走り続けて漸く外まできた。
「このまま帰るでおじゃる。」
「そうしたほうがよさそうだな。報酬は貰い損ねてしまったなあ」
「黒鉢巻の男はもう殆ど居ないでおじゃろ。全滅も考えられるでおじゃる」
黒服に誘われた時には不安だったが、もう次の仕事はあるまい。案外、危険な組織というのはこんなものなのかもしれない。
山へ戻り、川で血を洗い、幾つか付いた傷は入念に洗った。
「まさかこうなるとは……」
「まったくでおじゃる」麻呂は刀の血を洗って適当な葉で拭いていた。
「怪我は?」
「少しだけでおじゃる。貴殿はどうか?」
「大丈夫だ。」
麻呂も幾つかの傷を受けていたが、戦いに支障をきたすほどではないようだった。しかし休ませるべきだろうと思った。




