第6話 死の時間
「バアルさんと話した事と言っても……」
カメ子はう〜んと考え込む。
「『アキエルの事を嫌わず、仲良くして下さい。アキエルにはカメ子ちゃんが必要なんです。』って言われた事と」
バアル……
やっぱり余計な事を言っていた。
カメ子は言葉を続ける。
「後は『死の時間になる前に学校から出て下さい』って言ってました」
「死の時間?」
何の事か分からないが、学校を今すぐ出れば問題無いだろ。
「おいカメ子。さっさと学校を―……」
「『アッキーには私が必要』なんて言われちゃった! もしかして私達運命の恋人だったりして!! 『運命』……なんて素敵な響き……。私達きっと赤い糸で結ばれてますね!!!」
俺の言葉なんて聞いてなかった。
妄想するのは勝手だけど、口に出すな!
なんてこの状態のカメ子に言っても馬に念仏だろう。
俺はカメ子の妄想が途切れるのを待つ事にした。
………………………
帰宅する生徒達が変な目でカメ子を見ながら通り過ぎた。
………………………
部活に勤しむ連中が訝しげな目でカメ子を見ていた。
………………………
もうカメ子なんて放っておいて帰るか。
クルリとカメ子に背を向けて歩く。
校門から校舎が続くまでの道。その両脇には桜の木々が並んでいる。
四月の上旬なら桜の花が見物だったろう。今は五月。桜の花は散って、葉桜となっている。俺は葉桜を見ながら歩き、校門まであと一歩のところでガシッと腕を掴まれる。
首だけ振り向くと予想通りカメ子が腕を掴んでいた。
「アッキー、どこに行くんですか?」
「カメ子のいない所かな〜」
俺は腕を振ったが、カメ子はガッシリと腕を掴んで離さない。
「『私がいない所』なんて、冷たい事をどうして言うんですかっ! 私達運命の恋人でしょ!?」
カメ子は力説する。腕に力を込めて。
……痛い。正直にいって、カメ子に付き合うのはうんざりだった。
いくらこいつが俺にとって…………存在だとしても(その事実を消し去りたいくらい)嫌だ。
まさかこんな変な女に育っているとは思わなかったし。
俺は『こんなにも哀しい事はない』という表情を造り、告げた。
「カメ子。俺達は恋人同士にはなれないんだ」
「どうしてですか!? 理由は?」
カメ子は信じられないとでもいうように大きく目を見開いた。
俺は目に涙を浮かべそっと袖で拭った。そして涙声でカメ子に言う。(もちろん演技だ)
「俺達は親子なんだ」
「お、親子!!? どっちが親ですかっ!!!」
「カメ子」
「えええぇ〜〜〜?? 私がアッキーを産んだんですか!?」
よし、カメ子がパニクってる。腕も離されたし逃げるか。
俺はパニックになっているカメ子を残し、翼を羽ばたかせる。
足が地を離れた。そのまま大空へ翔びたとうと―
キーンコーンカーンコーン
四時のチャイムが鳴った。
四(死)の時間―
体調を崩してしまい、本文短めになってしまいました。
月とスッポン!もお休みです
すみません……