第3話 欲しいモノがある時に頼る者は……
誰かを相手に本気でツッコミをいれたり、真面目に受け答えをするなんて、全く俺らしくない。
カメ子といると自分のペースが崩れる。
これ以上この変な女と関わるのはやめよう。
俺が答えないので、カメ子はもう一度問う。
「どうして私に会いに来―」
「そーいえば急用を思い出した。俺行かないと」
「急用?」
「そー。俺お仕事しなきゃいけないんだよ。カメ子なんかと話してるヒマないんだよね」
俺は早足で体育館の入り口に向かう。カメ子が後を追いかけてくる気配を感じたが、俺は振り返らなかった。
入り口を出ると、大柄な四十ほどの男がいた。俺の事は見えてないのか、チラリとも俺を見ない。俺はその男を避けずに真っ直ぐ進み
通り抜けた。
どうやら俺に触れる(が触れられる)のは、俺の事が見える奴だけらしい。見えない奴は今みたいにぶつかりもせずに通り抜けられる。
俺、幽霊みたいじゃん。一応天使なのに。まあ幽霊も精神体ぽいっし、構造はおんなじようなもんなのかもしれない。
考え事に適当に結論をつけてると、カメ子が男に怒鳴られていた。男は教師なんだろう。
「亀山ー、今何時だと思ってる!! 授業が始まってるぞ!!!」
俺は教師の声を背に、この学校を後にした。
街中に出たはいいものの
つまんねえぇ〜〜〜。
精神体では何も出来ない。
さっきまでファミレスの中にいた。でもこの身体では、食事も出来ない。それなのに匂いは嗅ぎとれる。
あれは責め苦以外のなにものでもない。
肉体さえあれば、こんな苦しみを味わらなくて済むのに。
だったら……
肉体を手に入れればいい。
そして欲しいモノがあるならば―
悪魔に頼ればいい。
俺は人の背中に張り付き、信号無視を唆していたしたっぱの小悪魔を乱暴に剥がした。
バリッと音がする。そうとう強く張り付いてたみたいだ。
剥がした小悪魔を近くに放り投げた。
今度はゴチッと音がする。顔面を地面にぶつけた小悪魔はかなり痛かったのか、顔を両手で押さえながらしばらく地面を転がっていた。
その後少しの間静止し―
ガバリと起き上がった。
「なにしやがんでぇ!! 俺様を誰だと……!!」
俺を見た小悪魔の言葉が止まる。
俺は極上の笑みを浮かべ、冷たい声音で言う。
「誰に向かって言ってんの?」
小悪魔は恐怖に顔を引きつらせながら、必死にペコペコと頭をさげる。
「申し訳ありませんアキエル様!! この愚かな私をお許し下さい!!」
「許してやるからバアル呼んでくんない?」
今回話短いです。本当ならバアルがでてくる予定だったのに、時間が……