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第2話 カメ子登場

下界に降りたのは初めてだった。

場所は日本のそこそこ栄えたとある街―



なんだコレ……



すげぇキモチワルイ。吐き気と頭痛がする。

空中に留まってられず、地に降りた。



原因は

空気、か?


天界と違う。

俺だって全く同じだとは思ってない。が、さすがにここまで酷いとは……。



こんな空気を吸ってなんともないなんて、人間ってのはたくましいな。


とりあえず俺が下界に来ようと思った目的の一つ、ずっと会いたかった女探しをすることにした。




一時間後、動物やら植物やらに聞き出して、俺は会いたかった女がいる場所を突き止めた。


この時間帯(13:15)は中学校にいるとのこと。



当然俺はそいつに会いに中学校に来ていた。


場所は体育館。女生徒達がいた。

午後の昼下がり、五時間目の授業は体育だった。科目はバスケ。


目的の女の体操服の左胸には《亀山》と刺繍されている。女―亀山は試合に出ていた。

俺は試合を得点ボードの横に立って見ることにする。


亀山は誰にもマークをされていなかった。

にもかかわらず、仲間からボールを回されることもなかった。


完全に戦力にされてないな……。


亀山もそれを知っているのか、皆の邪魔にならないようコートの隅にポツンと立っているだけだった。

試合中、亀山は一度だけ転がってきたボールを拾ったものの、ボールを持ったままおどおどしている間に敵チームに取られてしまった。チームメイトは呆れたように亀山を見ていた。


亀山は何もしないため、(むしろ足を引っ張っている)亀山のいるチームは四対五で戦っていることになる。


試合の勝敗はいうまでもない。



チャイムが鳴り、体育館からぞろぞろと人が出て行く。


「負けた〜」


「カメ子のせいだよ」


「あいつグズだしウザイよね」


カメ子(亀山)のチームメイト達も文句を言いながら体育館を出て行った。


最後まで一人残っているのはカメ子。



正直にいって、カメ子は期待外れだった。


時間を無駄にしたな〜。後はテキト〜に下界の観光をして帰るか。ぶっちゃけ仕事はどーでもいいし。まずはマリちゃんでも探すか。

……ん?


「あのー…」


気が付けばカメ子が目の前にいた。

しかも俺に話しかけてる。


いまさらだが一応補足しておく。


天使は精神体。人には普通見えない。



はずなのにまさか、見えてる?


「その格好もしかして天使のコスプレですかっ?」


しっかり俺を見て言っていた。眼をキラキラさせながら。



めちゃめちゃ見えてんじゃん。



「その服自分で作ったんですか? すごい似合ってますねー! 本物の天使みたいっ!!」


興奮したカメ子は俺の自慢の(うちの一つである)純白の羽根を触ろうと―




手を伸ばしてきたのでその腕を曲がらない方向にひねってみた。


「痛いっ痛いっ痛いっ!!!」


カメ子がじたばた暴れるから放してやった。

カメ子は腕をさすりながら、恨めしげに俺を見た。


羽根に触ろうとする方が悪い。



カメ子は懲りなかった。


いきなり触ろうとしたのがまずかったと思ったのか、


「あのー、触ってもいいですか? 」


今度は聞いてきた。


「もしかして外人さんだし日本語通じない? 英語だとなんて言えばいいのかなぁ? 」


一人で悩んでる。てか、外人=英語だと思ってるのか。英語圏じゃない外人だっているんだぞ。


「ねえカメ子」


「何? って日本語喋れたんだ……」


「俺外国人じゃないんだよね」


「えぇっ!? 日本人だったんですか? 金髪だし、瞳も青だからてっきり外人さんかと……」


「日本人だとも言ってないんだけど。そもそも俺人間じゃないし」


「人間じゃない??」


カメ子は意味が分からないとでもいうように目をぱちくりさせる。


「この姿見れば分かるだろ?」


俺はゆっくりと羽根を羽ばたかせた。

カメ子は俺の姿をしばらくの間じっくりと見つめた後、恐る恐る言う。


「ほ、本物の天、使?」


「ピンポ〜ン♪ 当ったり〜〜 」


もしも自分の前に天使が現れたら人間はどんな反応を見せるだろう?

もしもアナタの前に天使が現れたらアナタはどんな反応をする?



一般的にどのような反応を見せるのか知らないが、カメ子の反応が一般人からずれているのはなんとなく分かる。



カメ子は




お腹を撫で始めた。


カメ子は何やってるんだ?


「何やってんだ?」


カメ子は自分の腹を見つめていたが、俺の声に顔を上げた。

「何って、お腹の中に赤ちゃんがいるんだなーと思って」


「赤ちゃんがいる!?」



突然何を言い出すんだこの女は……?


「だって目の前に天使が現れるなんて受胎告知しに来たってことでしょ? だから私のお腹の中に第二のイエス・キリストが宿って」

「る訳ないだろ!!」


どうしたらそういう結論にたどり着くんだ?

駄目だ、カメ子の思考回路が解らない……。


「イエス・キリストが宿ってないんだったら……」


カメ子はしばらく考え事をしていたが、何か閃いたのか顔を輝かせた。


「分かりました! 私戦いますっ!!」



聴きたくない。



「私はジャンヌ・ダルクのようにこの日本を救ってみせます!!」


あー… 聴こえちゃった。

何だろう、この疲労感……。


カメ子は勢いよく俺を振り返る。その表情は生き生きとしていて、先程バスケの試合に出ていたグズ女と同一人物だと思えなかった。


「さぁ天使さん! 私に御告げをっ!!」


「その口を閉じて真っ直ぐ病院に行くように」


「何科ですか?」


「その妄想全開の頭を診てもらえる所」


「ひどいですよ、天使さん。妄想ではなく空想といってほしいです」



たいして変わんないだろ。


「とにかくカメ子はマリアでもジャンヌでもないからな」


「それじゃあ天使さんはどうして」


「俺の名前は天使さんじゃなくてアキエル。“様”をつけて呼ぶように」


カメ子は俺の注文に素直に従った。


「それじゃあアキエル様はどうしてこんな所にきたの?」


「カメ子を見に来ただけだよ」


「私を? 何で?」

大体土曜か日曜あたりに更新する予定です。

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