症例1 A星25歳♀ 胸部レントゲン写真
「胸のレントゲン写真を撮ったら、肺の下の方に影二つあるいうて言われたんです!」
A星の25歳♀が今にも倒れそうな青い顔でかけこんできた。
ここは異世界放射線科。異世界であるからいろんなモノがくる。魔法使いや能力者もいるし、ただの人間や強すぎる人間もいる。エルフや妖怪、宇宙人、神様などなど。(幸い、獣は異世界獣医にみていただいている)
そして自分は医者になってまだ3年目だというのになぜかヒトではないモノたちのの画像診断を専門として働かなくてはならなかった。
いろいろむちゃくちゃではあるが、しかし、かえって知識がないのが幸いしていることもある。余計なバイアスがかからず、気楽に仕事できる。わからないことはわからないといって返せばいい。
「最初に言っておきますが、我々はまだあなた方への知識などが申し訳ありませんが不足している状態です。ベストは尽くしますが、そのことはご了承ください。」
これは決まり文句で、訴えられないようにするためだ。
「では診てみましょうか。」
肺の形は人間とほぼ一致している。そして両下肺野に数センチ大の結節影がある
彼女たちはいわゆる人間タイプの宇宙人である。もともとは違う形をしていたという説もあるが、驚異的な適応力で人間に近い形をとっていると思われる。
彼女らの適応力はそれほどまでにすさまじい。言葉も日本なんて国の若者言葉を操っているし、見た目がとてもセクシーなのだ。彼女の豊満な姿に目をとらえないように、ディスプレイにかぶりついた。
「おそらくニップルですね。左右対称にみえますし、心配ないですよ。一応CTの方をとってもいいですが。」
「心配ないんやったら別にええかな。」
ニップル、いわゆる乳頭のことである。人間の場合でも乳頭が胸部レントゲンで映ることは多くあり、腫瘍などとの鑑別が難しい場合もある。