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ランページコンプレックス~君のいた世界~  作者: アキノタソガレ
awakening
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会食

「何があった?」

 敵の襲撃後から1日経った今日、俺は高坂と共に龍之介のおっさんに呼び出されていた。


「どうもこうもねえよ。いきなり格納庫に敵が来たんだよ」


「それであの機体を動かしたのか。しょうがないとはいえ、ふざけた事をしてくれる。倒せたからよかったものの、情報を持ち帰られてたら今頃ウチは木っ端微塵だ」


「すみません。私の責任です」

 高坂は頭を下げた。


「お前に責任が無いとは言わんが、あの場に置いてはお前も出撃しなければ危なかった。この件は不問にする」


「ありがとうございます」

 そう言い高坂は再び頭を下げた。


「この世界が俺にとって異世界だという事はよくわかった。よくわかったからいい加減この世界の情勢を教えろ」


「そうだな。座れ。ちょうど昼時だな。なんか食べるか?」


「肉が食べたい」


「そうか。高坂、お前も食べていけ」


「いいんですか?」


「こいつを預かる身として情報を共有しとく必要がある」

 龍之介は自身の机に置かれた電話で何処かへ電話をかけた。

 程なくしてステーキとパスタなんかが運ばれてきた。こっちに来てから病院食もどきやブロック栄養食だとかしか食べていなかったから、すごくうまそうに見えた。


「随分豪勢だな」


「まあ勝利祝いだとでも思ってくれ。それで、この世界の情勢だったな」

 龍之介は肉を頬張りながら語り始めた。


「今から20年前魔法生物と呼ばれるものが急に出現した。奴らは俺達を襲い、駆逐し、自らの領土を広げていった。当時の技術力では小型のものを撃退する程度の事しか出来なかったが、18年前、お前と同じようにこの世界の技術とは全く別のもので作られた人型兵器が転移してきたんだ。それを堺にしてこの世界の技術体系は大きく変わった。その後も定期的に様々な兵器が転移してきた。同じものは一機も無く、それぞれが様々な技術体系で作られていた」


「待て待て」

 黙っていればいつまで話し続けそうな勢いだったので、俺は一度話しを止めた。


「俺以外にも転移してきた奴がいるってのはわかった。でもその魔法生物ってのはなんなんだ?」


「詳しい事はわからん。3メートル程度のものから50メートル以上ある個体も確認されている。唯一つ明確にわかっているのは人類の敵だという事だ」


「じゃあこの間襲ってきた奴がその魔法生物って奴なのか? とてもじゃないが生物には見えなかったぞ」


「いや、この間の敵はれっきとした人型兵器だ」


「共通の敵がいるのに戦争でもやってんのか?」


「似たようなものだな。稀にお前のように機体と共に搭乗者も一緒に転移してくる事がある。お前らはジャンパーと呼ばれてる。ジャンパーは機体の操作方法、機体に積まれた特殊な機能の扱い方など搭乗していた機体の事を理解している。つまり、魔法生物と戦う手段を喉から手が出る程欲している俺達にとって、ジャンパーはまさに宝箱なんだ」


「だが、人類同士協力していないという訳では無いんだろう?」


「ああ、大きな作戦なんかの時には各組織協力して作戦に応っている」

「成る程。段々とわかってきたぞ」


 今までの話しを聞くにこの世界にも国や政府などといった自治組織に近いものがあるはずだ。そして可能な限り自分達の身の安全を確保したいとなれば魔法生物に対抗する手段を少しでも多く得ようとする。この間の襲撃はそういった理由もあったのだろう。


 だが、一番の理由はもっと先を見越しての事だろう。この世界の技術体系を変える程の代物だ、当然そこには利権が発生する。今は魔法生物という人類共通の敵がいるから表面的には協力しているようだが魔法生物がいなくなれば今度は転移兵器がもたらした技術を用いた人間同士の戦争が始まる。うまくいけばこの世界の盟主になる事だって出来る。


「表向き各組織は協力体制をとっているからある程度の転移兵器の情報は公開されている。それを元に俺達の組織も量産機を生産したが、所詮はまがい物だ。本物には敵わん。だから、どの組織も転移兵器を血眼になって探してるんだよ」


「この間のは偵察みたいなもんか。ここの組織の名前は?」


「ラケナリアだ」


「ラケナリアが所有する転移兵器は?」


「オリジナルの事か? アザミだけだ」


「オリジナル?」


「そのままの意味だ。こちらで作られたまがい物の転移兵器では無く、本物の事だ。ついでに教えておくが、人型以外の兵器に乗りこちらに来た者はノーマルジャンパー。人型兵器でこちらに来た者はオリジナルジャンパーと呼んでいる」


「俺はオリジナルジャンパーってのに当てはまる訳だな」


「そうだ。他に聞きたい事はあるか?」


「この世界におけるラケナリアの立ち位置を教えてくれ」

 俺の質問に龍之介は答えなかった。止まっていた手を動かし、再度食事を始めた。


「私が説明します」

 それまで俺達の会話を黙って聞いていた。高坂が口を開いた。


「悪いな。立場上俺の口からは言いづらい」


「いえ、わかっています」

 今の高坂と龍之介のやり取りでラケナリアの立ち位置はだいたいわかってしまった。


「いや、やっぱいいや。他の組織の事を教えてくれ」


「大きく分けて3つの勢力が存在します。一つは政治力に優れたリインカーネーション。もう一つは最も多くのオリジナルを所有するベイビー・キャレッジ。最後に魔法生物及び転移兵器技術のリーディングカンパニーであるオールド・ロリポップ。その他少数のオリジナルを所有するイレギュラー。私達がそれに当てはまりますね」


「大まかでいい、3大勢力の所有オリジナル数は?」


「ベイビー・キャレッジがおおよそ100単位。リインカーネーションは情報の秘匿力が高いのではっきりとした数字は言えませんが、恐らく50機程度かと」


「オールド・ロリポップは?」


「15機程度と言われています」


「随分少ないな」


「はい。その分特異な兵器を多く所有していると言われています。更にオリジナルジャンパー自体も優秀な方が多いです」


「それに対してここが所持してるのは俺含め2機か。論外だな」


「だからこそ、お前には働いてもらわなければならない」

 食事を終えた龍之介が会話に参加してきた。


「まあ、それは構わないがフリージアの状態を知ってるだろ?」


「ああ、理解している。お前の機体に搭載されていたリザだったか? あれと共同して機体を改修する」


「成る程」


「ところで、お前は霧島奏とかいう名前らしいな」


「そうみたいだな」


「リザに聞いたのか?」


「そうだ。先に言っとくがあんたらが強制的に降ろさせたから(ろく)に会話出来なかった。その所為で名前以外の事は知らんぞ」


「その点については問題無い。今からお前にはリザと共同で機体の改修計画に参加してもらう。その時にでも聞け」


「へいへい」

 俺が思っているよりも事態はよろしくないみたいだな。良いように利用されるみたいで釈然としないが、この世界に馴染むまでは当面ここに身をよせるしかなさそうだ。


「申し訳ありませんが、まだ処理が色々と残っているのであなたを私の家に入れる訳にはいかないんです。職員に案内させますので本社で今日一日過ごしてください」


「わかったよ」

 またあのなんも無い部屋で過ごすのか。いい加減退屈も過ぎるぞ。


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