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ランページコンプレックス~君のいた世界~  作者: アキノタソガレ
流れにride in
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奴隷市

今回イーノックが紛れ込んでます

 龍之介との取引から数日経った今日、奏はメリダを引き連れてオールド・ロリポップを訪れていた。


 コーズエフェクトでは人々は何らかの組織に所属している。3大組織と呼ばれるコーズエフェクト最大の組織と、それに与する組織。3大組織に与しない独立した組織であるレフトアウト。奏達の所属するラケナリアがレフトアウトにあたる。


 今回奏達が訪れているオールド・ロリポップは、数ある組織の中でも最大級の規模を誇る3大組織の1つだった。


「さて、今日はドワーフとエルフだったか? を拉致りに来たわけなんだが。俺はここの事情に詳しく無い。従ってメリダ君説明を求む」


 メリダは元々オールド・ロリポップ所属のオリジナルジャンパーだったが、今は諸般の事情から、実質ラケナリア所属になっていた。


「奏は何を目的としてドワーフとエルフを求める?」


「とりあえずはドワーフの持つ技術とエルフの持つ知能がどの程度のものなのか知りたい」


「ならば、奴隷市から仕入れるのが一番だろう。それが一番波風が立たない」


「奴隷市? そんなもんあんのか」


「ああ。街の外れにな。ここは食べ物を始めとして他の組織とは違う部分が多い。ほぼ別世界だと思って問題無い」


「ほー。今時奴隷ってか。何考えてんだか」


「私にもわからんさ。ただ、老人達は意図して今の階級制度を作ったようだ」


「その階級ってのは生まれながらのものか? それとも本人の努力次第でなんとかなるものか?」


「後者だ。ここはエルフやドワーフといった亞人が多い。彼らは最初平民として始まり、功績を残せば階級が上がっていく。ここの人口比率の特性上人間は最初から亞人よりも1つ上の階級を持って生まれてくるがな」


「成る程。とすればメリダなんかのオリジナルジャンパーは最初からかなり高い身分を与えられてるって訳だな。今俺達が見てる大半の亞人達は平民っていう認識で問題無いか?」


「そうよ」


「で、何か問題を起こせば奴隷に成り下がる、と」


「その通りよ。何かわかったの?」


 奏は得心がいった表情で一度頷き、こう続けた。


「ここで1つ講義をしてやろう。ある程度の階級制度ってのは人に向上意識をもたらす。誰だって人に使われるよりも人を使いたいと考える。そうなった時人は何をすると思う?」


「この場合は功績を残して上に行こうとする、か?」


「当たり前だな。じゃあ視点を変えてみよう。上の奴らからしたら絶対に下には行きたく無い。ならばどうするか。下の階級の者を使って自分の手柄にしようとするんだ。だがここで問題が発生する。自分よりも上の階級が存在するって事だ。これの何が問題だと思う?」


「すまない、私はあまりその手を事を考えるのが得意では無いんだ」


「上の階級が存在するって事はそいつらに認められなければ、成り上がる事は出来ない。違うか?」


「あっている。だが何故わかった? 私はまだそれについては説明していないはずだが」


「簡単な話しだ。ここ、トップは1人しかいないだろ」


「ああ」


「やっぱりな。人それを独裁政治という」


「そう言えばそんな話しを聞いたな。興味が無かったから今の今まで忘れていた」


「ちなみに、俺らの所との明確な違いは、優秀ならば甘い汁を吸えるって所だな。不安定な足場で大量の甘い汁を吸うのがいいのか、安定した足場で少量の甘い汁を吸い続けるのがいいのか俺には判断出来ないがな」


 言って、奏は今話した内容が自分たちオリジナルジャンパーには当てはまらない事を思い出し、軽く溜息を吐いた。


 何もせずとも最初から大量の甘い汁を吸える代わりに自らの知識や技術、命や自由を対価に差し出すオリジナルジャンパーは、似て非なるものだったからだ。


「時にお前さんはもう少し周りにも目を配るべきだな。盲目的なのも悪くないが、時としてそれは致命傷になりうるぞ」


「構わない。私は奏に忠誠を誓った身だ。それ以外の事に意味は無い」


「……まあいいさ。さっさとその奴隷市に行こう」


  ○


 奴隷市の主人は肥え太っていた。ニヤニヤと嫌らしさの固まりのような笑顔を顏に張り付かせ、金を持つものに媚びへつらっていた。


「何度来てもここは好かんな」

 メリダがすえた臭いに顏をしかめながら言った。


「ふーむ。俺はなんとなく懐かしい感じがするな。まあいいや、さっさと用事済まそうぜ。おい、おっさん。いい奴隷紹介してくれ」


「お客様。失礼ですが、身分証をお見せしていただけるでしょうか?」


「身分証? んなもんねえよ」


「では、すみません。お売りすることは出来ません。お帰りください」


 奴隷商は後ろに控えていた黒服の男に目配せをした。すると、すぐに数人の同じ格好をした男達が現れ、奏達を威圧し始めた。


「持ってないとこうなるのね……」


 口ぶりとは裏腹に奏は嬉しそうに両の手の骨を鳴らした。


「待て、奏」


 メリダは今にも殴りかかろうとしていた奏をいさめて、奴隷商に銀色のカードを渡した。 


 それを受け取った奴隷商は黒服を呼びつけ、端末にカードを通した。そして表示された画面を見てあからさまに態度を変えた。


「これはこれは。大変失礼致しました。ご無礼お許し下さい」

 奴隷商は手でごまを擦りながら、腰を低くし、2人に言った。


「お前何やったの?」


「身分証を見せたんだ。まだ使えるがどうかは賭けだったが」


「それで、本日はどういったご用向きでしょうか?」


「エルフとドワーフが欲しい。優秀なのを頼む」

 奏が言ったが、奴隷商は反応しなかった。メリダの反応を伺っていたのだ。


「彼の方が身分は上だ。口に気を付けろ」


「これは……申し訳ございません。すぐにご案内致します」


 奴隷商はすぐに頭を下げた。


「……お前、長生きするよ」


 奴隷商は2人を伴って奥へと向かっていった。途中、数ある牢屋から何度か救済の声が上がった。


「こいつらはダメなのか?」


「ダメという事はありませんが、お客様のご要望は優秀なのをという事でしたので、とびきりのものをご紹介させていただきます。まずはエルフを。こちらです」


 案内された場所は先程の薄汚い牢屋とは違い、ある程度の清潔が保たれた部屋だった。鎖に繋がれたエルフは皆女であり、かつ全員がともすれば見えてしまいそうな程の薄着だった。


「ん? こいつらが優秀なのか?」


「ええ。大変優秀です。長い時間かけて丁寧に調教致しました。もちろん処女で御座います」


「成る程。お前は根本的に勘違いをしている。俺が言ってる優秀は頭の事だ。そっちの方は間に合ってる」


「左様でございますか。で、あればこそ尚の事こちらをお勧め致します。ここにいるエルフは、皆ある程度の地位に居た者です。ですので、頭の方も優秀かと」


「そうか。じゃあ適当なの2人くれ。てか、もうなんか面倒くさいからドワーフも優秀なの2人くれ。メリダ、流石に金は共通だよな?」


「ああ。ここもラケナリアも同じものを使っている」


「オーケーわかった。一番いいのを頼む」


「いいのか? よく見なくても」


「大丈夫だ。問題無い。さっさと帰ろう」


「だ、そうだ。金に糸目は付けない。用意してくれ」


 それを聞いた奴隷商の目は輝いていた。


「かしこまりました。すぐにご用意致します。それではお先に会計の方を……」


 言われ、2人は再び元来た歩き始めた。


「お手数おかけします。会計の方が入り口でしか出来ないようになっているものでして。あ、足元にお気をつけください」


 薄暗い道が続く道中、奏はある牢屋にいた女に目を奪われた。


「おっさん。こいつは?」


「ああ。それは、人間で御座います」


「そんなもんは見りゃわかる。なんで人間がここにいる?」


「私どもも詳しい事情は知りませんが、何でも大きな事故を起こしそうになったとか」


「はーん。こいつもくれ」


「よろしいのですか? これは……その……お世辞にも利口とは言えず、私どもも手を焼いていたのですが……」


「いいから寄越せ。なんかの役に立つだろ」


 奏は女の瞳に宿る意思の強さに惹かれていた。同時に、自身にとって益のある存在足り得る予感を感じ取っていた。


「かしこまりました。では、こちらはサービスとさせて頂きます。お代は頂きません。今後共よろしくお願い致します」


 それから更に数分程歩き、奏達は元の場所に戻った。


「お会計はどちらが?」


「私が払う」


「ありがとうございます。奴隷はどちらにお運びすればよろしいでしょうか?」


「そうだな……。奏、どうする?」


「ん? 今日はもう用無いしな。ヘリにでも運んでもらえ」


「わかった。この場所に運んで置いてくれ。私達が着くまでの間見張りも頼む」


「そんじゃ、この後はデートと洒落込むか」

 会計を終えたメリダに奏が言った。


「それは素晴らしいな」


 そう言ったメリダは珍しく笑顔だった。


どうも。エルフやドワーフなんかが出てきて、ジャンル分けを迷っている作者です。

最近文字数少ない感じですが許してください。

スピンオフの方もちゃんと書いてるので許してください。

ブックマークしてくださっている方々及び読者の方々に最大限の感謝を

それでは

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