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ランページコンプレックス~君のいた世界~  作者: アキノタソガレ
awakening
22/37

チーム結成

 斬る、避ける。突く、避ける。メリダとアキトはお互いに一歩も譲らなかった。決着のつかない2人の横でメリダもまた、リリウムと一進一退の攻防を繰り広げていた。


 出力の上がらない〈グラジオラス〉は、相手が火力に乏しい〈マリオネット〉だからこそ、撃墜されるまでには至っていなかったが、確実に機体は崩壊への道を歩んでいた。


「っ! ダメ……出力が上がらない。機体が重い」


 下がり続けるジェネレーター出力は、最早ブースターを吹かす事さえ困難になり始めていた。


「遠距離、輸送ヘリです! 高速で作戦領域に接近しています!」

 高坂が叫んだ。


「そんな……奏……」

 アザミが心細そうに言った。


「今向かってる! もう少しだけこらえてくれ!」


「待ってください! この反応は……ベイビーキャレッジオリジナル、ナルキスです!」


「ヒーローの登場だあ! おらおらおらおらおら!」


 レオリオ駆る〈ナルキス〉が背部チェーンガンを〈マリオネット〉に向けて撃ちながら降下してきた。


 メリダが〈ダーナ〉と距離を取った。機体を操作し〈ダーナ〉と〈ナルキス〉どちらの機体にも接近出来る距離に機体を置き、レオリオに問いかけた。


「何故お前がここにいる?」


「言ったろ? ヒーローの登場だ。この間の借りを返しに来たんだ」

 彼の愛する味方のピンチに颯爽(さっそう)と駆けつけ窮地(きゅうち)を救うヒーローを体現出来たからだろうレオリオは満足気に言った。


「……流石だ。ヒーローは伊達じゃないな」

 メリダ呆れつつも感謝の笑みを浮かべながら言った。


「おうよ! そっちの白いのはお前に任せた! オレはこっちをやっつける」


 レオリオはチェーンガンと右腕部のライフルを〈マリオネット〉に向けて放った。


 内数発が、右肩のジャマー装置に命中し、破損した。


「予定外の援軍です。作戦の進行は困難かと」

 リリウムが老人に通信を入れた。


「作戦に変更は無い。奴らが現れるまでお前はそのまま時間を稼げ」


「はい。わかりました。マリオネット、作戦を継続します」


〈マリオネット〉が左腕のシールド越しにリニアライフルを構えた。3連射。3発の弾丸が〈ナルキス〉に向けて放たれる。


「おおっとお。ヒーローにはそんな攻撃当たんないぜ?」


 レオリオはリリウムが放ったリニアライフルをサイドステップで避け、そのままの流れで右腕部のライフルを撃った。単発で放たれた弾丸は〈マリオネット〉の左肩のジャマー装置を破壊した。〈マリオネット〉はこれでミサイルの誘導を妨害する事が出来なくなった。


 転移してきたばかりの頃は良くて3流という捨て石同然の評価を下されていたレオリオだったが、元々の素材が良かったのだろう、多くのミッションを経験し、急激に成長しつつあった。


 特に前回の輸送車両の護衛ミッションでの魔法生物との戦闘は彼の能力を飛躍的に向上させていた。奏やメリダといった格上のオリジナルジャンパーの戦闘を間近で見た上に、砲台型という大物を1人で撃墜したという事実は彼に大きな自信を与えていた。


「そこの機体、動けるか?」

 レオリオがアザミに言った。


「なんとかね。でも派手な動きは出来ないわ」


「十分だ。距離を取って、可能ならミサイルで援護してくれ。もう使えるようになってるはずだから」


「わかった。やってみる」


〈グラジオラス〉が〈マリオネット〉と〈ナルキス〉から離れる。精一杯ブースターを吹かしているはずだが、一向に距離は開かなかった


(……やっぱり。この機体はもうダメね)


 レオリオが誘導ミサイルを放つ。ジャマーは既に存在しないため、ミサイルはしっかりと〈マリオネット〉を追尾する。


 リリウムは冷静に背部からフレアを放った。〈マリオネット〉を狙っていたはずのミサイルは、突如として現れた熱源に惑わされ、地に落ちた。


「まだ持ってるのかよ!? どんだけだよ!」

 レオリオが呆れたように言った。


 ミサイルは無駄だと判断したレオリオは、チェーンガンを主軸に、レーザーブレードで一気に勝負を決めようとした。


 チェーンガンがけたたましい音を立てて弾をばら撒く。リリウムは左腕のシールドでチェーンガンを防ぎながら、時折リニアライフル放っていたが、シールドで防ぎきれない部分の装甲が悲鳴を上げ始めていた。


「いけるか……?」


 レオリオは焦る事無く冷静に相手の状況を分析した。武装はリニアライフルのみ。シールドもそろそろ役に立たなくなる。警戒すべきものは特に無い。行ける。そう判断したレオリオはライフルで牽制しつつ〈マリオネット〉に肉薄した。その瞬間〈マリオネット〉の膝部ユニットから超小型のミサイルが発射された。


 完全に油断していたレオリオはそれを全弾喰らってしまった。不幸中の幸いだったのは、やはり〈マリオネット〉がサポートに特化した機体だった事だろう。スペースの都合上、大型のものを搭載する事が出来なかったおかげで、ミサイルを全弾喰らったにも関わらず〈ナルキス〉の損害はさほど大きくはなかった。


 だが、出鼻をくじかれたレオリオが、距離を取るのは当然の事だった。


 レオリオとリリウムの横で、メリダとアキトもまた激闘を繰り広げていた。


 2人は飛び道具を使わずにお互い近接兵装のみで戦っていた。ハンドカッターの突きが飛んでくる。ブースターを織り交ぜたサイドステップで躱す。オビエドの横一閃。宙に浮く事で〈ダーナ〉はそれを回避する。


 最初に一撃を貰った方が負ける。2人はしっかりとその事を理解していた。だがだからこそ、お互いに一歩踏み込む事が出来ない状況にあった。


 これはいわば駆け引きだ。相手の一手先を読み行動し、先を読み誤った者が負ける。簡単な事だった。だがそれは一対一での話しだ。1対多の状況では一手どころか何十手も先を読まなければ一瞬で壊滅的な被害を被る。


「待たせたな! っておいおいレオリオじゃねえか」


 奏がアヤと義経を引き連れて現れた。奏と義経だけであればもっと早く到着出来たが、アヤを連れていたため遅れたのだ。


「おうよ! この間の借りを返しに来たぜ!」


「奏、助かった。気をつけろ。この2人出来るぞ」


「オーケー任せろ。というかあの機体、この間のやつじゃねえか」


「見覚えがあるのか?」


「見覚えも何もこの間俺らが守らされてたやつだよ。なんでこいつここにいる」


「……臭うわね。だが今わかっているのはこいつが敵だという事だ」


「だな。やるぞ!」


 奏が武装を構え〈ダーナ〉に弾丸を放とうとしたまさにその時、全員にそれぞれのオペレーターから通信が入った。大量の魔法生物がタワーから出現し、こちらに向かっている、と。


 魔法生物はタワーから発生していると言われていた。今回は3つ存在する巨大なタワーの内の1つ、北に位置するタワー、ベンタスから発生しているようだった。


「どういう事だ。高坂、ラナに繋げ」


 奏のコックピットにフェイスウィンドが現れ、ラナが写った。


「はいは~い。君の聞きたい事はわかってるよお。でもねえ、私にもさっぱりだあ。ただ1つ言えるのはタワーから出てきた魔法生物は明らかに君たちを狙ってるねえ。でも、間違ってもタワーを潰しに行こうなんて考えは起こさないでね。死ぬから」


 最後の一言は冷酷なまでに真剣な口調だった。


「どうすればいい?」


「彼らも無限に出てくるはずは無いから、出現が落ち着くまで倒し続けるしかないかなあ。一番いいのはオーディエンスを放棄して逃げる事だけど君はイヤだろう?」


「もちろんだ」


「なら、弾薬を積んだヘリを何機か用意させる。それで補給をしつつ、オーディエンスから離れた位置で戦うんだ」


「そのためにはまずこいつらをなんとかしないとならんのか……」


 奏は〈ダーナ〉と〈マリオネット〉を見て溜息を吐いた。しかし、奏の懸念は無駄に終わった。


「マリオネット、目的を達成」

 リリウムが老人に言った。


「よくやったリリウム。ポイントまで来たらヘリを寄越す、それまで落とされるな」


「はい。ありがとうございます。マリオネット、帰還します」


〈マリオネット〉が呆気に取られている奏達を尻目に、戦域を離脱していった。しかし、協同で作戦にあたっていたはずの〈ダーナ〉は拳を握りしめてその場に立ち尽くしていた。


「どうした? 貴様も早く帰還しろ」


「だがっ!」


「彼女がどうなっても私は知らんぞ」


「くっ! すまない……!」

 アキトは絞りだすようにそう言って、戦域を離脱していった。


「なんだあいつら」

 奏が言った。


「へっ! 大方ビビって逃げたんだろ。それよりも、ここ、守るために戦うんだろ? オレも手を貸すぞ!」

 レオリオが言った。


「いいのかよ。厳しい戦いになるぞ」


「ヒーローっていうのはそういう時のためにいるんだよ!」


「そっか。流石はヒーローだな。アヤはともかくとして、あんたはどうすんだ?」

 奏が義経に問いかけた。


「自分はもとよりこのためにここに来た。言うまでも無く加勢する」


「いわゆるチームってやつだな! 頑張ろうぜ! オレ達ならやれる!」

 レオリオが全員に通信でそう言った。彼なりに皆を激励しているのだろう。


「チーム……か」


『401小隊を思い出しますね』


「そうだな。俺も、お前も、さっさと記憶を取り戻したいもんだ」

 奏が呟き、リザもそれに同意した。


「皆さん、通信、聞かせていただきました。組織を代表し、お礼申し上げます。ありがとうございます。皆さん一度オーディエンスに来てください。機体を修理させていただきます」

 オーディエンスの代表ブルーノウが言った。


 奏達は、連戦の疲れを癒やすためオーディエンスへと降り立った。


ブックマークしてくださった方本当にありがとうございます! おかげ様で日刊ランキングに載りました!


さて、多くの登場人物、機体が出てきたので混乱される方も出てきているかと思います。

その内別ファイルでまとめようと考えてますのでお待ちください。

差し当たってここに簡略化したものを書きます


霧島奏 機体〈メレアゲル〉武装、散布ミサイル、パルスガン、レーザーブレード等


メリダ 機体〈エウラリア〉武装、マシンガン、高出力レーザーブレード〈オビエド〉


タカシ・レオリオ 機体〈ナルキス〉武装、ライフル、チェーンガン、誘導ミサイル、レーザーブレード等


坂本義経 機体〈雷切〉武装、ブレード〈村雨〉等


アヤ・オルコット 機体〈レストレイン〉武装、マシンガン、レーザーライフル等


アザミ・アーヴァイン 機体〈グラジオラス〉

です


今後もブックマークや感想、レビュー等お待ちしてます

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