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ランページコンプレックス~君のいた世界~  作者: アキノタソガレ
awakening
20/37

危機

「そういう事をされると困るんだよねえ」

 粘着質な男の声がした。2人にミサイルを撃ったのはクラスペディアのオリジナルジャンパー、ミッシェル・ブラーナーのオリジナル〈ヴェノム〉だった。


「あなたは……!」


 4機のオリジナルが2人に接近していた。


「今更何をしに来たの! 私達の依頼を断ったくせに」


「フハハハ。お前の都合なぞ知った事か。お前は我々の予定通りに動けばいいんだ。ほら、殺し合え。なんなら援軍をやろうか?」


「いいえ、必要ない。私は彼につく……!」


 粘着質な笑い声が響き渡った。


「傑作だな。お前の組織を壊滅に追い込んでいる張本人につくだと? 笑えるにも程がある。これだから女は使えないんだ」


「なんとでも言いなさい。私は彼につく。それは変わらないわ」


「そうか。ならばそいつ共々死ね」


〈ヴェノム〉が3機のオリジナルを伴って2人に攻撃を仕掛けた。


「アザミ、メリダ! オーディエンスはもう俺達の敵じゃない。こっちに来てくれ。ちょっと面倒な事になった」

 奏が〈ヴェノム〉の攻撃を避けながら言った。


「すまない、無理だ。こちらもオリジナルと交戦中だ」


「ちっきしょう。あいつの差し金か?」


「急いで終わらせるから、それまでなんとか持ちこたえて!」

 アザミがミサイル音を響かせながら言った。


「いや、いい。お前らは集中してそっちの敵にあたれ。こっちはこっちでなんとかする」


 通信が切れると同時に大量のミサイルが奏に向けて放たれた。奏はそれを冷静にパルスガンで迎撃し、〈ヴェノム〉に向けて散布ミサイルを放った。


〈ヴェノム〉が易易と奏が放った散布ミサイルを迎撃し爆発が起きた。それこそが奏の狙いだった。爆炎に紛れ、レーザーブレードを展開し〈ヴェノム〉の後ろにいたオリジナルを一刀両断した。真っ二つになった機体は一瞬の後爆発した。


「抜作にしては中々やるじゃないか。だがそれはお前だけのようだな。あっちの女を見てみろ」


 言われて奏はアヤを見た。先程奏が右脚に速射ライフルを当てていたのが災いし、バックブースターを使った後退の軌道が安定していなかった。そのせいで〈レストレイン〉は2機のオリジナルに的当てのように撃たれていた。幸い敵の火力が低いのか、未だ致命傷には至っていないようだった。


「ゲス野郎が……!」


「お前はあ! そのゲス野郎にやられる運命なんだよお!」


 奏がアヤの援護に向かおうとするが、その度にミッシェルは嫌がらせをするかのようにあの手この手で奏を妨害した。


「クソっ……!」


「あーはっはっは! たまらんなあ、その悔しそうな声。ん? 悔しいか? どうした、もっと泣き叫べ、抜作があ!」


  ○


 同刻、奏とアヤが苦戦しているように、アザミとメリダも突如として現れたオリジナルに苦戦していた。


 オーディエンスの防衛部隊と交戦していた2人の背後から高速で接近してきた機体〈マリオネット〉は、オールド・ロリポップのオリジナルだった。〈マリオネット〉は完全なサポート機であり、ジャマーやチャフを始めとした撹乱(かくらん)のための武装を装備していた。


 搭乗者リリウム・ブレンもまた敵を錯乱(さくらん)させる戦法に優れていたため戦闘が長引いていた。


「くっ! なんだこいつは、やりづらい!」

 メリダが忌々しげに言った。


 メリダの得意とする高出力ブースターで一気に敵に接近し、レーザーブレードオビエドで切り裂く戦法が〈マリオネット〉には使えなかった。近づけば、目眩ましをされて、逆にメリダが損害を負う事になるからだ。


「ミサイルが役に立たないわ。なんとかならない? メリダ」


「無理だ。生憎と飛び道具はマシンガンしか持っていない。相手の弾切れを待つしかない」


「厳しいけれど、これでやるしかないのね」


〈グラジオラス〉の武装はどれも強力な威力を誇っていたが、全て弾速が遅かった。どれだけ強力な武装だろうと当たらなければ意味はない。更に主兵装のミサイルもジャマーで無効化されてしまう。〈マリオネット〉と〈グラジオラス〉の相性は最悪と言えた。


〈グラジオラス〉がバトルライフルで牽制しつつプラズマライフルを放った。が、やはりどちらも当たらなかった。地面に当たったプラズマライフルが、コンクリートを融かし、付近に強力なプラズマ粒子が散らばった。


 プラズマ粒子に紛れて、アザミがミサイルを、メリダがマシンガンをばら撒きながら〈マリオネット〉に接近した。


 リリウムはそれを予想していたとばかりにチャフを射出し、接近してきたメリダに肩部武装のショックロケットを当て、距離を取った。


「ぐっ!」


 ショックロケットは機体に与えるダメージは皆無に等しかったが、機体の動きを一時的に止めるという観点から見れば非常に優秀な装備だった。


「メリダ! 大丈夫?」

 アザミが〈エウラリア〉を庇うように前にでて、牽制のためのバトルライフルを撃ちながら言った。


「すまない、大丈夫だ。しかし、私達の機体では相性が悪すぎる」


「どちらかが犠牲を覚悟で突っ込むしかないわね」


「私が行こう。君はその隙にバトルライフルを叩き込んでくれ」


 メリダが〈マリオネット〉にタックルを仕掛けようとした時、高坂から通信が入った。


「アザミ、メリダさん!」


「どうしたの?」


「霧島さんからの通信が途絶えました。レーダーでも確認出来ません」


「バカな、こちらのレーダーでは確認しているぞ」


「私の方でも確認しているわよ?」


〈エウラリア〉と〈グラジオラス〉のレーダーでは奏を表すマーカーがせわしなく動いていた。


「そんな。それじゃあ意図的にこちらとのアクセスを断絶しているという事?」


「あんのバカ野郎が! クソッタレ。おい! アザミ、奴にあいつらとは戦うなと言え。あいつらはクラスペディアのオリジナルだ」

 龍之介が苛立ちしげに言った。


「なんて事……。わかったわ、すぐに止める!」

 アザミが奏に通信を入れた。

「奏!」


「アザミか。どうした?」


「いい? よく聞いて。その人達と戦っちゃダメよ。逃げて!」


「あん? なんでだよ? 逃げろったって無理だ。逃げれるような状況じゃない」


「それでも逃げて! 彼らはクラスペディアのオリジナルよ!」


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