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十章 騎士のくせに馬に乗らない奴が多すぎだろ? 馬さえ乗れば騎士だと思う奴が多すぎだろ? 一


 小人の鉱山洞窟はひんやりとした感じが薄れ、気温と湿度は徐々に上がっていた。

 竜の巣や巨人回廊より暗く、たいまつもまばらな道なのに、地下河川の周辺には緑色の苔が見えはじめている。

 こんなところで光合成なんてできるのか?


 線路の上り坂はゆるいものの、リフィヌは数分もジョギングペースでトロッコを押し上げながら、息ひとつ乱さない驚きの肺活量。

「鍛えておりますから。なにせ『陽光の足輪』持ちの拙者がへばる時は、守っている人もみんな巻きこんでオダブツなのです」

「それなら、なおさら体力の温存を……」

 立ち上がりかけたアレッサを、リフィヌは屈託ない笑顔で引き止める。


「これも鍛錬なのです。『守りたい気持ち』は守られることで増えますが、より大事なのは鍛えることです。自分から守ってみて、包むように手ざわりを確認し、量ではなく質を高めなければ、自分以外も守れる広さは得られません」

 まだ純粋な年齢らしきカノアン君が尊敬の眼差しで高位神官様を見つめる。

 幼いドメリちゃんは理解しているかわからないけど、やはり頼もしい年上を見る目に変わっていた。

「皆様のお役に立っている今、けっこう楽しいのですよ小生。考えるだけでは気がつかない気持ちの大きさに触れているからです」


「まるで偉い坊さんの講釈みたいだけど、それって押しつけられた突撃兵器の使用法だよな?」

 すれきった闇エルフのガキ魔女ザンナが悪気もなくありがたいお話を台無しにする。

「そうですよ? この戦闘部隊ごと守る『陽光脚』を確保しているのです。普段から他人様の役に立とうなんて頑張ったら、給料日前に労災申請になりますって」

 微妙な脱力感がカノアン君、ドメリ君、アレッサ君の表情に広がる。


「小生が守りたい広さは、毎日あいさつしている人たちまで。世界を守る勇者様の従者が持つべき『陽光の足輪』など、どうにも重すぎます」

 リフィヌの笑顔は明るい。

 手の届かない高みのまぶしさではなく、足元を暖める陽だまりの明るさ。

 ボクは世界を救うつもりなどなく、自分の足元を確かめるだけで必死だから、やっぱりこの『地面から生えてきた女の子』は守護神ラノベ様の天啓かもしれない。



「そういえば、さっきの出まかせ神官コンビが『星・月・太陽にはかなわない』みたいなことを言っていたけど……」

「ううあう。魔法道具もちの特務神官隊は神官長ファイグ様が騎士団に対抗する意図で予算をもぎとりましたので、聖騎士様の称号にまで対抗しているのですよ」

 リフィヌは苦笑いで目をそらす。


「中でも三強が実力順に太陽、月、星を表す称号を授かると聞いている」

 アレッサがいたずらっぽく微笑んで補足する。

「え? リフィヌの『陽光』って太陽のことだろ? んじゃ騎士団の内部試合で優勝したアレッサと似たようなもん? 最強騎士と最強神官を道端でひろってんのか? このヘタレブタが? 昨日こっち来たばかりで、どういうバカづきだよオマエ」

 ザンナがほうきの柄でボクの頬をグリグリ押すけど、あまり笑えない。


「反論はできないけどさ……同じ運命の反則なら、ボク自身の能力とか容姿とかモテ具合にイカサマ仕込んでほしかったよ。目の前にならぶ綺麗な上にたくましい女の子たちが一斉に劣等感をあおるなんて、元の世界よりひどいマゾ豚プレイだよ……」

 ザンナはほうきをひっこめて抱えこむ。

「わ、わりい。カスにカスとか言ったら落ちこむだけで、なおさら役立たずになるよな。前向きに……うん、カスのわりには役に立ってるって! な?!」

 フォローのつもりの追い討ちに同意を求められても苦笑いで流す優しいみんな。


「ボクでも守る側になりやすいって点では、ザンナ君は貴重な存在かもね~」

 鉄棒でチビ魔女の頬をつっついてニヤけると、すぐに数倍の勢いでホウキの乱れ突きが飛んできた。

「ヘタレカスにザコ呼ばわりされるおぼえはねええ!」



「ザンナさん、ズナプラ様と話していい?」

 けなげにもドメリちゃんが助けに入る。

 ザンナはバツが悪そうに水晶を取り出す。

 山小人の王女はすぐに現われ、ドメリとは軽い挨拶だけで済ませた。

「少しだけセイノスケ様が映っていました。森の中で、おそらく小人集落の近くです」

 軽いおじぎを見せるだけで、画面もすぐに宮殿スクリーンに向けられる。

 つくづく、よく気のきく子だ……山小人族と父親の処遇や、愛しのダイカおねえ様のためもあるのだろうけど、この世界で会う子供たちはしっかりしすぎだよ。


 大型スクリーンには選手村が加速しながら山脈ぞいに北上する光景が映っている。

「この区画では中盤の森林温泉の近くで停泊し、水などの補給と兵員の回収を行うようです」

 山脈の先では、ひときわ高い単独峰のような噴火口が細い煙をあげていた。

「ゴールは森林地帯の先、灼熱洞の終点にある山頂ですが、魔竜将軍は最後の一本道になる噴火口を中心に動いており、選手は熱をしのげる森林まで引き返す動きが多いようです」


「選手の中盤集中は強まる一方か……ドルドナが気まぐれで噴火口を離れるのを待つか、さもなくば最悪、押し出された選手たちが一斉に強行突破をはかることになる。たしかにセイノスケの狙いどおりいけば、宣伝効果は大きいだろうが……」

「狙い? オマエら魔王配下ダントツ最強を相手になにやる気だよ?」

 アレッサとボクはアイコンタクトをとる。

『魔竜将軍を倒すとか言ったら、小心魔女と日和見ボウズに逃げられる』


「詳しくは知らない。ドルドナを出し抜くつもりらしいが、いくらなんでも準備次第のようだ」

 アレッサは本人の希望も含めて無難に濁す。

 それでもザンナの顔には怯えが見えた。

「だいじょうぶかよ……なにも考えてないってのは、半端な頭のよさよりずっと怖いぞ?」

 アレッサはうなずき、なぜかボクに視線を向ける。



 周囲に広がった苔から、ゼンマイのようなシダ植物まで生えてくる。

 そして地下植物の秘密の正体も少しだけわかってくる。

 天井のところどころに、ぼんやりと染みのように広がる光が見えてきた。

 周囲の岩が白っぽく、表面の凹凸が大きな結晶状になっている。

「全部が水晶だとしても光が届くには無理がある厚さに思えるけど……?」

「畜光性の微生物が多く含まれているのですよ。この山脈の名の由来でもあります」

 第一区間の列柱峡谷やツル草の滝のように、この世界には時おり地味な超常地形がある。



 宮殿モニターは赤髪ネズミ娘さんが長いシッポを振りながら大きなテントの二階席によじ登る姿を映していた。 

「広場前のヤラブカです! また場つなぎリポートを指示されましたので、今度は騎士団を牛耳る騎士団長バウルカット様にお話をうかがいたいと思います! 魔王様にへつらって神官団との仲を冷やしておられるようですが、立場的にはどんな得があるのでしょうか?!」


 バルコニーの手すりから現われたキンキン声のリポーターに、数人の大柄な騎士たちが一斉に振り向いてうろたえる。

 宮殿モニターを見やすい所に机が置かれ、その上には水晶や地図などが並べられており、作戦司令部のようだった。


「地図に置かれた駒からすると、騎士団は十数人が残っているらしい。そして南北に広がっている……」

 地図は騎士の一人がすぐになぎ払い、ほんの一瞬しか映らなかったのに、アレッサの目は見逃さない。


 座っている三人の鎧は高級そうな装飾が多く、重要人物らしい。

 競技祭スタッフのくせに一部選手団の機密をもらしたヤラブカ嬢にも一応の会釈を送っている。

 中央に座る中年の大男は赤茶けたアゴヒゲがもみあげまでつながったやせ顔で、コウモリマイクを前に笑顔が特にこわばっていた。

「と、得というか、われわれ騎士団の使命は人類の守護であり、その大局に立って犠牲を最少に抑えるために、性急な争乱は避け、一時の屈辱は耐え忍んでも和平の手がかりを探り、時代を乗り越えて……」

「壮大な言い訳ありがとうございました! 利権の確保がんばってください! 続いて騎士団一の人寄せパンダこと『花の聖騎士』クラオンさんもなにか一言!」

 騎士団長の口が開いたままになり、アレッサは口を抑えて笑いをこらえる。

「よりによって、あの男が団長か。別荘ひとつのために村ひとつ売るような男が……」

 苦笑するアレッサの目や声には鋭い陰りがこもり、みんなは声をかけられない。


 モニターの中では、長髪の美青年が柔らかく苦笑していた。

「たしかに、ぼくの勲章の数は騎士団の宣伝も兼ねた支援あってのものだからね。でもぼくは騎士団みんなの種族愛を代弁して撮影や講演会をしているつもりだ。騎士団の方針はまだ神官長様の理解をいただけない部分もあって、話し合いを続けているけど、すべての決議は聖王様の承認も得ているから、決して仲たがいというわけではなく、現に今回の競技祭でも……」

「たるいくどき文句はベッドでジジイ相手にお願いします! ジジイと言えば現役最高齢にして、猛犬アレッサをはじめとした多くの聖騎士にとって書類上の師匠でもある、名ばかり剣聖こと『波の聖騎士』モルソロス様、なにかそれらしい締めを一発!」


 白髪でヒゲの長い騎士は、やせていながら背筋はのびて筋骨たくましく、黒目がちな小さな目を静かに向ける。

「魔王の時代となった今こそ、われわれ反魔王連合は団結を強めねばならぬ。人類の守護たる騎士は怒りや憎しみ、まして自暴自棄などで剣をとってはならぬ。聖魔大戦、そしてその余波となる多くのいさかいの傷はどれもが深いものであるが、カミゴッド様の信徒として誓った使命に背いてはならぬ。迷い、遠回りになったとしても、必ず……」

「アレッサを追放とも歓迎とも言わない姑息さが無駄にとった年の功でしょうか! さすがに自分たちが先にかました寝返りには神官団より寛大とい……」

 宮殿モニターがバツリと突然に切り換わり、温泉少女の鼻歌ショーがはじまる。


「ヤラブカのやつ、やりすぎたな。アレッサを欲しがっているシュタルガ様の機嫌をとったつもりらしいけど、あそこまで偏ると競技がしらける。あれじゃ当分は見習いリポーターのままだ」

 ザンナだけが嬉しそうに笑い、リフィヌは『なにも聞いてません』アピールで横長の耳をペタリと抑えてほっかむりする。



「この流れで言うのもなんですが、なぜだか思い出しちゃいました。その鉄釜は最近の文献にはない魔法道具ですが、おそらくは『片思いのお釜』です。相手を慕う気持ちが相手より強いほど、振る際の重みが増す効果だったと思います」

 宮殿モニターに動きがなくなって小人同士の会話になり、アレッサを中心に気まずくなっていた空気をリフィヌが流しにかかる。

「そういや、それ持っていたイカレ神官、振る前に色男がどうとか言っていたな。あれって好意を持てる相手を探していたのか」

 ザンナはボクの持つ鉄釜を指ではじき、コンコン軽い音を響かせる。

「威力はあったけど、発動条件がわかるとこれも実戦に使うのは難しいね。……なんでまた、こんな使いにくい道具ばかり……」


「多くの魔法道具が戦争のたびに軍事転用を目的とした分解や改造をされました。その鉄釜もおそらく、本来は見かけに即した別の用途があったはずです……もっとも、魔法道具職人さんの中には変わった方もいたり、あるいは聖なる啓示を受けたとはいえ、生身の人間として不調の時期もあったりするようで、どうにも不可解な効果も多いのですが……」

 多すぎだよ。多すぎだよ。多すぎだよ。


「しかし『こけおどしの大砲』は名前のわりに実用的ではなかったか? 遠距離での威嚇はともかく、近距離での無力化としては強力だった。あれを何度も使えるならば……」

 アレッサが平静にもどっている。

「う~ん、どうでしょうねえ? ジョナシーさんの使い方からして『こけおどし』つまり見かけだおし……自信の低さで発動していたよう思えませんか?」

「あ。撃つ前の『ウチあかん』とか相方の『ヘタレがとりえ』って、そういうことか?!」

「片思いよりは使いやすそうですが……なんでしょうねえ? 元は通信の目的で、強い主張にはより謙虚な心がまえが必要と考えたか……でもそれなら謙虚さでよいはずですし、自信のない人にアピールされても困るような……いえ、自信のない人ほど強い意思表示が必要というお心づかいなのか……うー、わかりませぬ」


「失礼ながら、ボクにはどうしても製作者が頭の悪い変人だらけに思えるのですが」 

「今の時代ではそうなってしまいますねえ。でも魔法道具のほとんどは二千年前の創世時代から数百年までの古代に作られたものですから、当時の常識や学問水準で考えて……なお理解しかねる珍品も多いですが……」

 高位神官様も認定のダメ魔法文明……納得するやら、したくないやら。



「壺のほうが威嚇には効果がありそうだけど、あの持ちにくさに見合うかっていうと怪しいな。相手を怖がる気持ちとかが条件なら、いっそう使いにくいだろうし……そういやユキタンはなにを見たんだ?」

 からかう意図が顔にあふれた魔女にわざわざ弱点を教えるのも億劫だけど……もう済んだことだしなあ。

 ボクが煙の中に見たのはラフな服装で、ゆるいカーブの地味な茶色髪、ボリュームのある体型の長身女性。

「たぶんだけど、一緒に住んでいる義理の叔母。ボクが帰らないままそろそろ丸一日になるはずだから……両親が亡くなってからは叔母と大叔父が親代わりなんだ」

 何食わぬ顔で無難に言っておく。


「その年で家を一日あけるくらいでどやされるのかよ? ……あ、でもこっちも、聖魔大戦から遠い時期だと、職につく年齢が何歳も遅くなるとは聞いたな。金が余って、行かなくていいやつまで見栄だけで学校に通ったりとか……」

 こちらの世界の基準では君たちが早熟すぎる……いや、日本人の基準では、か?

『娯楽を滅ぼし慈善に貢がせろ』みたいなノリで社会問題を語る人たちの調査では『恵まれすぎの少数派』だものな。

 実際、この独裁シュタルガ帝国の代理戦争会場より、元の世界の海外紛争地域のほうが日本の言葉も常識も通じそうにない、よほどの異世界なんだけど……。


 清之助くんはそういう国にも行って、テロに巻きこまれて、自力で脱出して、ナンパした地元少年兵の女の子を留学招待していたっけ……いや、つくづくあの野郎が異世界に渡る意味がどこにあるんだ?

 ラウネラトラも言っていたけど、昨晩の眠る前あたりから元気がないというか、笑った顔を見てないような……もしかして、来た意味がないとか飽きはじめてないだろうな?

「大戦は収まったけどヒマってほどでもない、いい時代に生まれたなアタシ」

 ザンナくんは、そんなセリフに限って静かに微笑んでつぶやく。



 線路の終わりと地下河川の小さな滝が見えてきて登りが急になり、ボクとアレッサがトロッコの押し役に交代する。

 シダ植物もそこかしこで大きく茂り、気温はさらに上がってほんのり暖かいくらい。

「んで……アレッサの見た蒼髪の細いのって、似たような短髪の女騎士をモニターで見かけた気がすんだけど?」

 ザンナが遠慮がちに聞くと、アレッサは困ったように苦笑する。

「いや、私の見た幻影は髪が長かったよ」

 アレッサが怖いのは自分自身か……以前に『私を信じて死んでいった者たちのために』とか言っていたから、誰かを犠牲にした責任を強く感じすぎている?


「それに私は、妹を怖いと思ったことなどない」

 アレッサはみんなの憶測を吹き去るように微笑む。

「レイミッサという名だ。心配という意味では怖いとも言えるが。競技祭の前にあいさつ程度の顔合わせはしている。ガイムの部隊なら安心と言ってしまったら、『いつまでも子ども扱いしないで』と釘を刺されてしまったよ」


「姉妹で聖騎士かよ……実入り良さそうだな、オマエん家」

 今さらだけど、ボクたちは互いの過去や家庭を知らなすぎる。

 競技中はライバル選手と足きり処刑台に追われ、ゴールのあとは療養と作戦会議に追われるのだもの。

「聖騎士に任命されたからには並大抵の努力と決意ではないと、私こそ認めてやらねばならなかったのだが。汚職まみれの騎士団といえども、聖騎士ばかりは家系や人脈で入れる枠は限られている」



 トロッコが終点につき、カノアン君がブレーキをかけて鋼線の不具合の原因を探す。

 周囲には予備や故障品らしいトロッコ、レール、鋼線、鉱石の山などが並び、大小の水車がいくつも滝にかかっていた。

 通路の奥には暗闇の中に広がる大きなシダの森林が見える。


「面会自体、慎重なるモルソロス老が保険に差し向けたものらしく、レイミッサは実に不服そうだった。第一区間ゴール後も会いに来なかったのは、レイミッサなりの覚悟なのだろうな」

 同じ戦場で出くわすかもしれないのに、今まで黙っていた妹のことをアレッサはとても懐かしそうに、嬉しそうに語り続ける。


「幼いころは一緒に騎士物語を読みあさったものだが、レイミッサはいつも急いで大人になろうとしていた。私はいつしか『現実を見るように』と怒られるほうになっていた」 

 自嘲のようで妹ノロケのような。

 実に微笑ましい……でもコース上でかち合わないようにしないと……いや、美少女妹キャラ増強のチャンスか?



「うわあああああ! レイミッサああああああ~!!」

 ボクは驚いてアレッサを見て、みんなは驚き顔でボクを見る。

 そして錆びて横倒しになったトロッコのひとつから短髪の……銀髪美少年の騎士が立ち上がる。

 野郎は呼んでないよ誰だよオマエ。


「レイミッサを返せええええええええ!!」

 暖かい洞窟の中で、色白細身の少年はゴワゴワとした長い毛糸のマフラーでギリギリと自分の首を締め、高い声で叫ぶ。

 マフラーが青白く輝きだし、リフィヌはカノアンくんにとびつき、ザンナはトロッコから下ろそうとしていたドメリちゃんをあわてて底へ押しもどす。


「烈風……」 

 アレッサは最も位置が近かったし、相手が羽模様の鎧を着けている騎士なので停戦を気にしたのかもしれないし、妹の名を出されて戸惑ったのかもしれない。

 でも一番は本人が妹語りに夢中だったのかもしれない。

 とっさに鉄棒を投げつけようとして間に合わなかったシロウト凡人のボクと一緒に、アレッサも青白い光の膜に飲みこまれ、波に打たれたように飛ばされ、壁にたたきつけられる。




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