就職活動を思い出してみた
ふと思ったのですが、まだまだこの時期って就職活動をしている方々が全国にたくさんいらっしゃるんだろうなぁ、と。
かくいう私自身、普通に就職活動をして就職した人間です。
確か、今の会社から内定の連絡をもらったのが七月くらいだったような気がせぬでもありません。
はっきりといつだったかは覚えていないんですが、八月に友人と一週間くらい旅行をした記憶がありますので、多分内定は夏休み前だった筈です。さもなきゃのんびり旅行なんか行ってられないですからね。
現在も就職難で大変なことと思いますが、私の時も第二次就職氷河期とも言われる時代で、相当きつい時期でした。あとから耳にした話ですが、私が就職活動をした年がかの第二次就職氷河期のピークであったらしい、というのです。ただし、らしい、としか聞いておらず、それを確認する術は今となってはありません。
そういう状況で、第一希望の会社に就職できたのは類稀なる幸運だったと思います。
ただその反面で思うのは、何も運だけが成す業だった訳ではない、ということです。
自惚れますが、私は努力しました。
努力したから就職できたと思っています。
そりゃみんな努力するだろうって?
まあ、そうですね。誰だって、内定を勝ち取るために汗水たらしてリクルートスーツがしわくちゃになるくらい努力していらっしゃる。そこはその通りでしょう。
しかし。
ここで考えておいたほうがよいことがあります。
努力するとはいっても、いろんな努力の仕方がある。
折角努力をしても、その方向がずれていては、徒労に帰してしまうことがままある。
一番言いたいのはこの一点なんです。
努力の方向がずれているとは、どういうことか。
わかりやすいのは、自分を相手の会社に強く印象付けようとするあまり、奇策を弄しようとすることです。面接で面接官を笑わせようとか、突飛な言動をするとか。
はっきり言いますが、これはやめたほうがいいです。
有名な就職活動の参考書にも、そういう意味のことがでかでかと書かれています。
仮にそれが成功したとして、面接官や人事担当者は「ああ、面白いヤツがいる」くらいのことは思ってくれるかもしれません。
ですが、面白い=採用したほうがいい、という図式は成立しないのです。
面白くなくてもいいから即戦力的にテキパキ仕事をしてくれる人材を選ぶと思いますね。面白い、というだけで採用してくれるほど余裕のある会社なんか今時存在しないんです。
次に多いのが、いつまでも特定の作業から抜け出すことができないケース。
具体的には、履歴書をより良くしようとして自己分析にのめりこんだり、履歴書に書く言い回しをとことん考え続けたり。あるいは、筆記試験の問題集を解くことに集中したり。
決して悪いことではないんですが、それだけやっていても内定にはたどり着けません。
それらは、就職活動に必要な作業の「一部」でしかないんです。ここを勘違いしてはいけない。
内定が取れない、といって悩んでいた周囲の学生たちのことをよくよく思い出してみたのですが、彼等は彼等なりに血のにじむような努力をしていた。しかし、内定がもらえない。
なぜか。
会社が要求する水準に達するような準備と努力ができていないからです。
必死に努力しても、その方向が会社側の求めていることと合致しないから、採用してもらえないんですね。ここが大事なポイントです。
さらにいいますが、だからといって「もうダメだ。自分は社会に適合していない人間なんだ」なんて諦める必要はないし、逆に「自分は自分のカラーがあるから、これを会社にわかってもらうんだ」とかいう、一本外れた自己主張を突っ張ってもダメです。
自己主張は大切ですが、我を押し通そうとするのと自己主張とは別のものなんですね。我を押し通そうとしても、そんなものは社会に通用しません。それができるほどあなたは偉大な人間なんですか? そう訊いてみたくなります。
一つ、端的に実例を紹介します。
前の職場の別部署に、パートのおばちゃんがいました。
このおばちゃん、高校三年生の息子さんがいらっしゃって、就職を考えているのだという。おばちゃんは、息子さんをこの会社に就職させたくて、息子さんも真剣に考えているとのこと。
で、ある日おばちゃんから、息子さんが一次の筆記試験を通った旨聞きました。
次からは面接試験です。
このおばちゃんはとても謙虚な方で、だからコネはないか、などとは言わない。
ただ、
「面接に備えてどういうことを考えて準備したらよいか、もしアドバイスがあれば・・・」
と、心配そうに尋ねてきました。
そこで私は、今会社を取り巻く状況について説明し、その課題をクリアするためにはどうしたらよいか、そしてそのために自分(=息子さん)が何をしたいのか、あるいは何ができるのか、ここは絶対に訊かれるから、しっかり考えてまとめて面接で喋れるようにしたらよいでしょう、と言いました。
会社を取り巻く状況と課題、そしてそれをクリアするためにすべきこと。
会社が一番求めているのはここなんですね。
まずは会社を取り巻く状況について把握していれば「ああ、こいつはしっかり調べているな」というふうに人事担当者は思いますし、かつその課題クリアを実現するために自分がどうすべきかを語ることで、本当にこの会社に入りたいんだな、という熱意を示すことができるのです。
内定がもらえない学生の多くは、この点の検討が不十分である場合が多い。
そして、数週間後。
おばちゃんが嬉しそうに私のところへやってきて
「受かりました! ありがとうございます!」
そう言って何度も頭を下げてきたことを覚えています。
もちろん、高卒と大卒では求められるレベルも違うし、会社によっては熱意とは別のものを要求してくるところもあるでしょう。
しかし、会社が求めていることを的確に衝けば、高校生でも内定を取れるのです。
繰り返します。
今、会社はどういう状況にあって、どんな課題を抱えているのか。
そしてそれをクリアするために自分ができることは何か。あるいは何をしていきたいのか。
もう一つ、自分は将来的にこの会社を(具体的、現実的に)どうしていきたいのか。
この三点を明確にして語れるようにして、面接に挑みましょう。
かくいう私も、今の会社だけ一発内定に至った訳ではありません。
受験した会社のほぼすべて筆記は通るのですが、面接試験でこれらが言えず、何度も苦い思いを味わいました。
落とされたら落とされたで、どこが悪かったのかをじっくり考えることです。
私は第二希望の会社の二次面接で落とされてしまい、落ち込みながらも考えに考えて上記の三点をがっちり準備することだという結論に達しました。
で、今の会社に受かったのです。
今も覚えています。
面接の順番待ちをしている時、パーテーション越しに他の学生の面接のやり取りが聞こえてきました。私の前に面接を受けているのは、某有名一流大学の学生でした。
「○○君は、この会社をどうしていきたいかね?」
という質問をされたその学生は、恐らく苦笑しながら
「いやー、難しい質問ですよね」
などとごまかしつつ、なんか要領を得ないことを喋っていました。
これを聞いた私は内心、こいつには勝ったと思いました。
まさしく、私が練りに練って準備しておいた質問だったからです。
私もそれらしい質問をされましたが「これキタ!」と胸の内で沸き起こる大歓喜を必死に抑えながら堂々と答えてやりました。
そんなもんです。
恋愛と就職活動は紙一重ですよ。
会社という恋の相手は、大勢いる交際申込みの人間の中から、自分に情熱と愛をもってくれている人を見極めようとしています。
ただ、恋愛と決定的に異なるのは、ただの片思いは絶対に実らないという一点です。
「私のどこが好き? 付き合ったとして、何をしてくれる?」
相手はちょっとお高い。時にイラッとするかも知れない。
しかし、交際にたどり着いたならば、まずは将来にむかって道が開ける訳です。
全国の就職活動中の学生達にエールを送ります。