オリジナルと二次を考える
この稿はずばり、創作にまつわるお話です。
結論からいって、オリジナルと二次創作は一つ舞台に同居させるべきではない。
なぜなら、
オリジナル=個々の創作者のイマジネーション、創られた独特の世界
二次創作=共通の話題を用いた愛好者同士のコミュニケーション
こういった側面があるからです。
もちろん、これがその全貌だとは言ってませんよ?
一つ舞台、例えば投稿サイトなどがそうですが、不特定多数の閲覧者の関心を得やすいのは間違いなく後者ですね。言うまでもありませんが、自分がそもそも認知していてかつ好きな素材がそこにあり、未知の第三者ともその話題において簡単に符丁を合わせることができる。コミュニケーションへの参加が容易であるといえます。
ところが、オリジナルならそうはいかない。
さしあたって、ジャンル。
仮にファンタジーの好きな人がいきなりSF世界を表現している作品を見てもなかなかときめかないでしょうし、そもそも関心をもっていなかったのだから、よほどの動機が発生しない限りその世界に接点を求めようとすることはあり得ない。
よしんば、ジャンルにおいて一致する作品ないし愛好している作者を発見したとする。
ではそこで「やあやあこんにちは、趣味が合いますね」となるかといえばそうではない。
ファンタジー系作品を手がけている作者同士であったとしても、片や故事や実在した社会制度をモチーフとした現実志向のそれを得意としていて、もう片方は美男の剣士と美女の魔法使いがラブラブになるようなコイバナを書きたい人だったとしたらどうでしょう? 経験から申し上げれば、こういう志向の相違がある場合、作者同士のコミュニケーションが円滑になることは稀といってよい。
好みのジャンルが同じであっても、その先にある傾向や雰囲気、作者の思想など細かく細分化していくと、まったく同一の系列をたどる作者と出会う確率は限りなく低いといえそうです。あとは、どこで妥協して話を合わせていくのかに依るでしょう。
オリジナル作者同士のコミュニケーションが二次創作者のそれに比較して盛り上がりにくいという背景には、そういった事情があるものと私は推察します。
ですが、それは仕方がないことですし、それで良いと思います。
オリジナルとは十人十色の世界です。
皆が同じようなものを創ってしまうようなら、本当にオリジナルと呼べるかどうか、甚だ疑問が残ります。多種多様な中に一点の重大な共通項を発見できればこそ、その相手の作者を貴重な存在だと思うことができ、また出会えた喜びも大きいのではないでしょうか。
話は遠回りしましたが、前述のような要因があるために、同じ土俵に置いてはならないというのです。
好きな方には申し訳ないですが、エヴァ好き同士が盛り上がっている場にぽつんと何の認知度もない異世界ファンタジー作品が飛び込んだとして、どれほど関心を持たれるでしょう?
この異世界ファンタジー作品がよく練られた秀逸なものだったならば、複製の話題の渦に埋没していくのはとてももったいないことです。
ただいま「複製」というきつい表現をとりましたが、出来上がったアニメや漫画にそれ以上の創造的飛躍性(極めて高い独創性)は期待すべくもない。そこにある価値というのは何度も繰り返すようですが「話題性」です。
某大手投稿サイトなども両素材が混在したまま運営されていますが、ここはどうやらオリジナル・二次ということは問題ではなく、作品の出来の良し悪しに重きを置いているようです。それはそれで一つの方針ですが、そうなると、その道の方々(=大なり小なり飯を食っている方々)が幅を利かすという、考え方によっては悪弊が生じます。プロと素人の作品を並べて公開することにどれだけの意味があるのか、私には理解できません。
そろそろ、この稿を終わらせなければなりません。
今後別の投稿サイト利用をお考えの方には、そのサイトがどういった傾向をもっているのか、よくよく見極めてからご利用になることをおすすめしたいと思います。
特に小説系の投稿サイトに限っていえば、私は幾つも利用してきましたが、運営のいい加減なサイトが目につきます。
ついでに、そういったサイトを数多く利用したからといってあなたの作品が多くの人の目に触れる機会が増すかというと、残念ながらそういうことはありません。何故なら、同じことを考えている人が世の中に大勢いるからです。Aというサイトで見かけた作者、作品がBというサイトでもお目にかかるという事象はよくあります。
その点、この「なろう」は実に優れた投稿サイトだと思っています。
何よりも、オリジナルと二次創作とを明確に分離した点、これは特筆に値します。
分離以前のトップ画面などは見られたものではありませんでした。
プリキュアやら仮面ライダー、クレしんがいたるところにのさばり、SFで検索すれば容赦なくガンダムが出現したものです(笑)今ではそういうこともなくなった訳でして。
まあ各方面から苦情があって、という事情もあるのでしょうが、それにせよ態度を明解にしたのは大変素晴らしいことです。
最後に。
小説であれイラストであれ、創作しようとするならば「これが私の創った世界です」という世界観を一つ、確実に創造することが大切ですね。あなたの創った世界=あなたの分身、なのですから。
これを創っておかないと、いつか創作活動はフェードアウトしてしまいます。
表現の技術は、工夫と反復によって磨かれていきます。
プロになるとかならないという次元ではなく、自分の創る世界を自分なりのセンスで表現する。
これほど充実感があって幸せなこともないのではないかと私は考えています。
2014年2月6日 追記
連載再開に伴い、ごく一部の文章を修正しております。