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任務1 ソウスケ・ベルナルド(偽名)


立て付けの悪くなったドアを開けると、誰か取れと言わんばかりにけたたましく電話が鳴っている。

こんな時間に誰だろうか。……どうせ、何かの勧誘だろう。最近多い。後は……特に思い当たる節は無いな。

まぁすぐに切れるだろうと思い、電話を無視して手に持っていた麦茶を飲み干す。

「……さて、やる事もないし。寝るか」

ベッド周りを片付け、寝る準備をする。ついでに眼鏡の掃除も。風呂はさっき入ったばかりだから問題ない。歯磨きもだ。

……まだ電話が鳴り響いている。いい加減うるさくなってきたが、同時に、これほど長く掛ける電話なら何か重要な事があったのではと思い始めていた。

私はベッドに腰掛け、うるさく鳴る電話を取る。


「もしもし」

無愛想に言い放つ。

「やぁ、コウスケの旦那!お元気かい!」

いつもと変わらない声を聞き、いつもと変わらない台詞を聞いた。

怪しげな勧誘でないことに安堵したが、こいつから電話が来るとは、つまり仕事だ。

……それより。


「いい加減、私の名前を覚えてくれないか?ロータス。お前とは何年お付き合いしたかな?」

この男はいつものように私の名前を間違う。会話をする度に、だ。わざとやっているんじゃないか、とすら思う。

「そりゃすまないなぁ!何、俺の頭の中はいつもお掃除するんでね。そのたびに不必要なモンは捨てちまうのさ」

「何だ、ビーン。私は名前を覚える価値すらないって事か?」

「いや、違うさ!ただ、俺の職業柄、常に情報は整理しておかないとね。そこら辺、わかってくれるなぁ?」

だったら、何かにメモでもしておけば良いものを。……いや、人名を覚えられないからって、わざわざメモするなんてのもどうかしてるな……。


このお喋りな男は、ロータス・ウィンストン。とにかくテンションが高い奴だ。出会ってもう、何年になるだろうか。

こいつの頭の中は、とにかく情報で一杯だ。人間の脳の容量は、10テラバイトだと聞いた事があるが、こいつはそれを軽く凌駕してるようだ。

……無駄な情報が多いが。何故この男は、私のやっている仕事を理解しておきながら、どこそこのスーパーの安売りだの、ご近所さんの家庭状況だのをこまめにチェックするのか……。


「今回は、しっかりとした情報だろうな?以前の仕事のときに、渡された情報と事前情報が少々違っていたぞ?詐欺で訴えるからな」

「おっとぉ。無敵のリサーチャーである俺に、裁判で勝負たぁ身の程知らずな人だな!」


そう、ビーンの仕事は情報屋。リサーチャーである。私が仕事をするために、絶対必要不可欠なのが彼だ。

髪を腰まで伸ばし、いつも香水をつけて女を左右にいつも置いている、いかにも軽そうなこの男が、彼とは真反対の私にとって、生命線なのだ。


「すまんな、冗談だ。さて、そんな無敵のリサーチャーに聞くぞ?私の名前は?」


すると彼は、ククッと笑い、自信満々にこう答えた。


「決まってる。キャットハンドのコウスケ・ベルナルドだ!!」


惜しい……

「……ロータス、私はソウスケ・ベルナルドだ……」

「あっちゃーーー!!やっちまったか!!」

何回聞いてもこうだ……。彼が私の名前をはっきり言えた回数は、両手で簡単に数えられる。

「すまんねぇ!!キャットハンドのソウスケ・ベルナルド!はっはっは!!」


キャットハンド――。

そういえば、何時だったろうか。私がキャットハンドになったのは。

「ロータス。覚えているかね?私がキャットハンドになった時期を」

「ああ、そりゃ確か……2091年……7月21日だな。何でそんな事を?」


もうそんな年月が。

私も年なのだろう。ロータスに大口叩けなくなりつつあるようだ。もう昔の事はほとんど覚えていない。

だがあの日のことは一度たりとも忘れた事はない。

今の私がここにある原因となった、あの日。

2091年。7月。21日。

少しずつ、記憶の奥底から形の変わらないものが浮かび上がってくる……。


―――――――――――――――――


暑い日だった。ニュースじゃ今年の夏一番の暑さらしい。

ベルトコンベアに、汗が球になって零れ落ちる。首に巻きつけたタオルは汗でびしょ濡れになり、作業服も同様だった。

靴の中も湿ってきて、不快感を感じる。それでも私は黙々とベルトコンベアに向かい続ける。


その頃は、あの悪夢の「最終戦争」が終わり、世界が統一されていった時代だった。

貧富の差の根絶やしを掲げる新政府。だが、何時までたってもそんな理想郷が訪れる気配は無かった。

働けど働けど、楽にならない暮らし。金を手に入れては、方々に返し、また働き続ける。

隣にはもっとでかい工場が建っており、そこで働く人たちは、私より随分良い生活を送っているようだった。


私は今、21歳で、新婚。子供も産まれる予定だ。その為に、必死で働いてきた。妻と、産まれてくる子供との小さな幸せを目指して。

だが、新政府の居住区区別政策のために、私と妻の間は遠ざかってしまった。私は東洋人だが、妻は違う。そのため、間を切り裂かれた。

思想の違いや、人種の違い、という理由だったが、私達にはそんな事は関係が無かった。お互いさえ居れば、それで。

しかし、ただの一個人が世界を相手にする訳にもいかず、渋々従った。近々、この政策も見直され、徐々に居住区同士を併合していくらしいが……それもまた、訪れる気配が無い。

産まれてくる子供の顔を見たい。産まれてくる子の名前をどうしようか、着る衣服をどうしようか、あれこれ妻と悩みたい。……だがもう無理なのだ。

妻の居る居住区に行くのには、大金が必要だ。十数年と働いて、その額に何とか追いつける程度。しかし、その金もすぐに人の手に渡ってしまう。

……いつか必ず大金を手に入れて、妻に会いに行きたい。僅か数日しか居られないだろうが、それでも良い。顔を見たい。私の、家族。


「おい、何やってる!働け!」


監督に怒鳴られ、慌ててベルトコンベアから流れてきた商品を組み立てる。……私はいつまでこんな事をしているんだろう。

今までの職を奪われ、今はこうして薄汚れた工場で黙々と働いている。暑さに耐えて、監督に耐えて、逃げ出したい誘惑に耐えて。

隣の工場じゃ、クーラーも効いてて、快適で。賃金もここより格段に良い。でも、私が入れるレベルじゃない……。

……いけない。こんな弱気になってては。……でも……。


監督に怒られるのがわかっていながら、また物思いにふけりこもうとしたその時、隣の大きな工場から爆発音が響いた。

続いて、吼える様に銃声が轟く。


「何だ!?」「隣のラーカスグループの工場だ!」「爆発してるぞ!俺達もやばいんじゃないか!?」


同僚の職員達が慌てて外に出る。私も何があったのかと思い、彼らと一緒に外に出た。

巨大な煙突が、崩れ落ちる。工場の窓が粉々に吹き飛ぶ。そして、深紅の炎が工場を舐めだす。

僅か一瞬の出来事だった。ほんの数十秒で、あの大きな工場が完膚なきまでに潰された……。

「テロか……?」

私がポツリと呟いた。


その時、崩れ落ちる寸前の工場から、誰かが出てきた。……職員だろうか?

いつの間にか、私の横で監督が双眼鏡を手に持って、その誰かを見ていた。

「……あれは……コーラス社の……キャットハンドの連中か」

監督が呻くように言った。


コーラス社――

誰もがそれを聞いて、あぁそれなら納得だ、と声を上げる。

私も同じ考えだった。そう、あの会社なら。


コーラス社とは、人材派遣会社に似たようなものだ。

コーラス社にきた様々な依頼を、社員が自分が受けたい依頼を選ぶ。そして、依頼をこなす。

だが、そこに登録されている社員が、ちょっと普通ではない。

その社員達の事を、通称「キャットハンド」と言う。

猫の手も〜と言う諺から出来た名前らしいが、まさにその通り。……彼らは何でも屋だ。

頼まれれば、掃除洗濯炊事、屋根の雨漏り修理まで。……だが要求される額は、誰でも簡単に払えるものじゃない。

だから専ら彼らを雇用するのは、企業だった。そしてその大抵の内容が、敵対する会社への破壊工作や、要人暗殺、機密情報奪取等。

今回のは、この工場を叩き潰す破壊工作だったらしい。


キャットハンドは、基本的に任務遂行を絶対目的とする。その為には、いかなる手も使うのが有名だ。

彼らは時には殺しあう事もある。同じ会社の社員とはいえ、敵対する任務にお互いがついたなら、相手の殺害も辞さない。

また、恨みをよく買う仕事のため、四六時中、誰かに襲われないか警戒しなければならないこともあるとか。

任務中に死んだら、そこでもう終わりだ。保証もないし、文句も言えない。死んだらもう、誰にも目を向けられなくなる。まさに、生死をかけた命がけの仕事。


……だが、報酬が莫大なのも事実だ。

もちろん、高い報酬がもらえるほど、危険度は増すだろう。死が何時訪れてもおかしくない。

それを差し引いても、そのときの私は報酬の魅力に取り付かれていた。

「どれ位もらえるのかわからないが……今の境遇を考えれば……で、でも……」

恐怖心は確かにあった。

死ねばそこで何もかもが終わりなのだから。

新しい家族にも会えなくなるかもしれない。

しかし、今のまま生活していれば、いつかきっと耐え切れなくなる。抜け出すには今しかないのだ……。



今の生活を振り返る。ただ、何も考えずに、灰色の生活を続けてきたような気がする。何も目標を持たず。

ただ家族に会いたいと願うだけで。何も出来ずに居た。

でも、キャットハンドになれば……。私が今までしたくてもできなかった事が、できる。家族に、会える。



その日、私は仕事が終わると、すぐに家に帰って電話帳をめくった。

「コーラス……コーラス・オーケストラ社……あった!」

そこに記載されている通りに番号を叩く。

無機質な呼び出し音……出るのか……?出ないなら、出ないで気が楽になるし……。

……まだ呼び出し音が響いている。

今日は営業が終わったのか?もう午後9時だし……出ないなら今日は諦めようかな……。


「はい、こちらは皆様のあらゆるご要望にお答えする、コーラス・オーケストラ社です。本日のご用件は何でございましょうか?」

発音の良い、はきはきとした女性の声が聞こえた。


かかった……!!

心臓の音が電話先に聞こえるんじゃないか、と言う位高鳴る。いよいよだ、ここからだ……。

「……あの?あのいかが致しましたか?ご用件をどうぞ」

黙っていたのが不審に思われたらしい。

汗がだらだらと零れ落ちる。目がチカチカする。唇もだんだん乾いてきて、ぺったりくっ付きそうになる。

ついに覚悟を決め、何度も頭の中で反復していた言葉を並べた。

「実は、そちらの会社で働きたいのです。キャットハンドとして」




その後、色々な書類や契約書が送られてきて、それら一つ一つにサインを押していく。周りを黒服の男達が取り囲むもんだから、緊張してしまった。コーラス社の社員なんだろうが……。怖かったな。

驚いたのが、それら書類の中に、私の個人情報が明確に記載されていた事だ。何でも、身元をありとあらゆるところに照会して、その上でキャットハンドとしてコーラス社に迎え入れるのだ。何故そんな面倒な事を、と尋ねると黒服の連中からは「敵対社のスパイを未然に防ぐためです」と教えられた。

2日間かけて手続きを終え、最後に一つの端末を渡される。


「これは?」

「コーラス社にアクセスする為の物です。コレがなければ仕事は始まりません」

やけにドスの効いた声だ……。

「そうですか。分かりました」

「つかい方は説明書をご覧ください。あぁそれと……」

「なんでしょうか?」

黒服がワイシャツの胸ポケットに手を突っ込む。


……なんだってんだ!?まさか拳銃じゃ……!ここに来るまでに、契約不備があったってのか?冗談じゃない!私はちゃんと……。

すかさず身構える。その瞬間、空気が張り詰めるのが自分でも分かった。

黒服はゆっくりと何かを抜き出し、私に差し向ける……。

それは紛れも無い、……拳銃!!



「……ヒィッ!!」

私は尻餅をついてしまった。

「あ、失礼。こちらです」

顔に刻まれたしわを緩ませて笑う。


慌てた様に拳銃をしまうと、反対側のポケットから包みを手渡した。

今度は大丈夫だろうな……。

怪しげに黒服の顔を見つめる。大丈夫です、と言わんばかりの顔だった。

恐る恐る、包みを開く……その中には……。




「これは?」

小振りのナイフと……ん?骨?……爪?

「ちょ……」




顔面がきっと、真っ青になっただろう……。

もう居てもたっても居られなくなり、それらを床に落としてしまった。

思わず後ずさりをすると、後ろに居たもう一人の黒服と目が合う。ああ、さよなら……。


「……これはこれは。新社員様にとんでもない事を致してしまいまして……本当に申し訳ございません」

拳銃を胸にしまった黒服が、また慌てて床に落ちたそれらを拾い集めだした。

白髪が汗で光ってキラキラしてる……。

……それって骨ですよね……?なんで錆びたナイフと一緒に……。


急に真面目な声で、黒服の連中は語りかけてきた。

さっきまでのひょうきんな態度は一欠けらも無い。

「……コレは私達なりの簡単なテストでした、ソウスケ・ベルナルド様。貴方がこの世界でやっていけるかどうか、確かめるためだったのです」

「……ソウスケ。ベルナルド……。」

コレは私の本当の名前ではない。キャットハンドをする者は、大抵偽名を使う。本当の名前を使えば、あらゆる個人情報を洗いざらい調べ上げられて、命を狙われる羽目になるからだ。

私は、とりあえず適当な二つの名をくっ付けて、この名前にした。……何の意味も付けずに。


「……悪い事は言わない。貴方は向いていないのかもしれない。死が当たり前の世界。貴方の今までの世界とは、価値観が違うんです。殺しは、快楽殺人が目的でやってるんじゃない。ただ、依頼だから、命令だから、殺す。ひたすらに、殺す。クライアントの言う事は絶対です。そこに疑問を持っては決していけない。あるのは、何の意味もない世界。無味簡素な世界。真っ白な世界。……貴方は、耐えられるんですか?」


……黒服の男が、今度こそ本気で凄んでくる。

確かに怖いさ……。そんなに脅されたら、やめたくもなってくるさ……。

死にたくないし、殺すことに恐怖を覚えない訳がない、罪を覚えない訳がない。それでも続けなきゃいけない。


「今ならまだ契約破棄は間に合います。……無情な機械にならなければ、乗り越えられないのです。どんな感情を持とうとも結構ですが、依頼に対しては絶対忠実であるべきなのです。それがどんな理不尽な依頼でもです」



怖いさ……ああ、死ぬのは嫌だよ。当然だ。生物として当たり前じゃないか。

でも、このまま何もしないで干からびて死ぬのも嫌だ。

目標も持たず、生きる意味を見出せず、ただベルトコンベアの前に立っているだけの日々なんて、窒息してしまいそうで……。

あの息苦しい生活が、たまらなく嫌だった。すぐにでも押しつぶされそうで。

だから。それから抜け出す道がこれだと言うのなら。なんと言われてもこの仕事を選ぶ。



「それでも。私はこの仕事を選びます。……ここに生きる意味を見出せるかもしれないから」

「こんな仕事からですか……?変わったお方のようですな」

そう言うと、周りの黒服たちが一斉に笑い出す。ちょっとビックリした。


「……いいでしょう。ようこそ、ソウスケ・ベルナルド様。貴方をコーラス社の新たな社員として迎えます。……紹介が遅れました、私、貴方のリサーチャー兼サポーターを仰せ付かりました、ヘーゼル・ウィンストンと申します。以後、お見知りおきを」

私に拳銃を構えた初老の黒服が名を名乗った。リサーチャー兼サポーター。私がこの世界で生きていくための、生命線。


「こちらこそ、宜しく」

ここから私の新しい仕事生活が始まった。


―――――――――――――――――



「……おい、ソウスケの旦那。なんで黙ってるんだ?」

ロータスに電話越しに話しかけられ、はっと現実に戻る。

「ん、いや、なんでもない。ただ、私の昔を思い出していただけだ。……何、今と大して変わらんがな。20年過ぎた今も、私は何一つ目標すら持っていない。灰色の生活を続けているだけで、違うのは職業だけで……」

そう、何も変わっちゃいない。あの日、生きる意味を見出せるかもしれない、と豪語したはずだ。ヘーゼルに。……この仕事を続けていれば見つかるはずだと思った。だが、いまだに見つからない。

「なぁソウスケの旦那。俺の親父が言ったはずだ。この世界は、何の意味も無い、と。忘れちまったのか?」

「あぁ……忘れちゃ居ない。お前の親父は怖かったな……」

ヘーゼルの言うとおりだった。この世界は、意味や理由を必要としないのだ。命令に忠実であればそれでいいのだ。


「それはそうと!!仕事が入ったぜ。何ヶ月ぶりの仕事だろうな。稼いで来いよ、旦那!」

ロータスが明るめに言う。


「そうか。……どんな仕事だ。また、どっかの豪邸の掃除とかじゃないだろうな」

「違うさ。……キャットハンドの本領発揮の仕事だ。出番だぜぇ?」


本領発揮の意味するところは。汗水たらして笑顔で終えられる仕事ではない、と言う事だ。

そろそろ蓄えも無くなってきた。そんなとこに、丁度仕事とは。タイミングが良い。


「今回の任務は……と。……あんたの居住区の近くでだ。元日本国本州。……のどかな農村が任務地域だ。依頼内容は……ん」

「どうした?」

ロータスが言葉を区切ったので、何事かと思い、尋ねる。

唸るような声が、電話から漏れ出した。

「いや、ここは今では珍しい非武装非戦闘地域なんだが……。依頼内容は……ある逃走犯の拉致、不可能な場合は実力行使も可……」

「ほう、珍しいな。もうそこも、近い内に血が流れ出る戦場になるんだろうな」


こんな事を平然と言える自分は、……どうなのだろうか。


「依頼主は、村の女性。報酬は……1200万。逃走犯は女性。武装はしてないようだ。……いや、鋭利な刃物を所有。……こんなの地元警察に頼めばいいのにな。あぁ、殺すか拉致るかを依頼してるから、なんかもめて、そいつを消して欲しい、って所か。色々と引っ掛かるがな。逃走犯だと言う所が特に」


……この依頼は、わざわざ裏からもみ消すのに最適なコーラス社に依頼している。何故?

逃走犯を捕まえるだけなら、それに合った機関に頼めばいい。まぁ捕まえるだけではないから、コーラス社に依頼したんだろうが……。

……いけない。余計な疑問を持つ必要は無い。依頼どおりに動くだけでいい。


「……ロータス。余計な詮索はするな。依頼を受けたのなら、その依頼に従うだけでいい。何故、なんて言葉は要らない。依頼されたことをやり遂げるだけだ」

「さすがだね、あんたは。まぁ張り切って稼いできな!」


翌日、ロータスが示してくれた場所へと向かう飛行機に乗り、作戦地域に向かう。

ポケットには、拳銃とナイフだけ。この程度の任務なら、重武装もいらないし強化外骨格もいらないだろう。


「私はただ……任務を遂行するだけだ」


眼下には、薄い雲が張っており、その下にはのどかな光景が広がっていた。

そこが作戦地域。

「任務開始……」

私は目を瞑り、これからの任務の完璧な遂行法だけを考えていた。





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