世界と歌手とみつあみ少女
今日は午後から雨が降ると天気予報で言っていた。全くその通りになりそうで、どんよりとした灰色の雲が空に隙間なく詰まっていた。それを見てから登校中の学生達を軽く見回すと、生徒達は皆して同じような傘を同じように持っていてとてもつまらなかった。他人と同じという事実に現代社会の人間は安心感を感じるのだと歌手が言っていた。
何を聞いているのという言葉と共にイヤホンの片方が外され、他人の耳元へと運ばれる。アメリカ人と日本人の両親を持つ音楽教師だった。音楽教師は副業として歌手もしている。
歌手は流れる音楽を聴いて驚いたように目を見開いた。何も驚くことは無い、ただ普通の音楽。歌手は『聞いてくれているとは思わなかったわ』と言った。続けて、『いい歌詞でしょう』とも言った。作詞は他人なのに、歌詞を紹介する人間は大抵自分のことのように話すのだ。何も言わずに片方のイヤホンを歌手の手から奪って鞄にしまう。もう、聴く気がなくなった。
教室の建てつけが悪い扉を開ける。窓の外は曇っていて、ここ暫く晴れていない。『おはよう、セカイ君』と、一番窓側の後ろに座る女子が声をかけてきた。長いみつあみをしているが、あんなに長いみつあみを手入れするのは面倒ではないのだろうか。みつあみ少女は頬を染めながら、ペンを握っていた。彼女がレベッタ=クリアに歌詞を提供している。
『新しい歌詞を書けたの』と言うみつあみ少女の手にはペン、机にはルーズリーフ。読ませられた歌詞は相変わらず安っぽかった。
音楽教師は歌手
歌手はレベッタ=クリア
歌手に歌詞を提供するのがみつあみ少女
みつあみ少女は満月蘭