閑話:キドの独白 3
男の美学
「余計なものを入れるな」
きっと正論はそこにある。
男の料理がそうだ。カレーね。普段料理しない奴ほど何か入れたがる。
市販のカレールーは、メーカーが数えきれないほどの試作を繰り返し、誰が作っても美味しくなるように完成された英知の結晶だ。あのルーを使って失敗する方がむずかしい。
なのに、男という生き物は、味見するごとに何かを入れようとする。
通販で買った謎のスパイス類やチャツネをわざわざ買ってきて、冷蔵庫の隅にあるインスタントコーヒー、ウスターソース、あるいはチョコレート、リンゴとハチミツ。
「これを入れれば、もっと深みが出る」
根拠のない自信に突き動かされて、完成された調和の中に「異物」をぶち込む。背後で見守る妻、家族、友人の冷やかな視線に気がついていない。
なにか入れたところで、ルーの強力な包容力がすべてを「カレー味」に塗りつぶしてくれるからだほぼ意味がなく旨い。それが奴らを増長させる。その隠し味が劇的な化学変化を起こすと信じて疑わない。
食べる側にとっては「……うん、カレーだね」以上の感想はないのが現実だ。
「隠し味に何を入れたと思う?」
これ、聞かれる側からしたら、最高にウザい質問。
彼らの料理には、「足し算」はあっても「引き算」という概念がない。
え?城戸 隆はどうかって?
もちろん入れるでしょ!
セシルがチカチカうるさい




