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一夜の恋で終わる予定が……運命の番と言われても!?

作者: 大福金
掲載日:2025/11/20

久々の投稿です。よろしくお願い致します。

「んん〜……」

 まだ火照る体を起こし、横で寝ている男が起きないようにそっと寝台から降りる。


 私……しちゃったんだ!


 これで私は処女ではなくなった。

 あの男と……婚約しなくても良い。


 横で寝ている男は昨日、酒場で知り合った、初対面だけどなぜか意気投合した男。

 自分を抱いてくれる男なら、誰でも良かったんだけど。

 実際に意気込んで行くと、好きでもない男に抱かれることに抵抗があった。

 なので酒に頼った。嗜む程度には飲んでいたが、大衆酒場の酒は体に合わなかったのか、すぐに酔ってしまった。

 そんな私を介抱してくれたのが、横で寝ている名も知らないこの男だ。

 

 鍛え上げられた筋肉に褐色の肌、それに端正な顔立ち。

 ……どう見ても、女性に困らなそうな外見。

 おっと、そんなこと考えている余裕はない。この男が起きる前に、この場所を出ないと。

 部屋を出ようとそろりと足を動かした時、男が寝返りをうつ。

 一瞬起きたのかと、胸がびくりと鼓動を打つが、男の瞼は閉じていた。

 ほっと安堵したのも束の間。


 ——みみっ耳ぃ!?


 声が出そうになるのを我慢した自分を褒めてあげたい。

 視界に入ってきたその姿は……

 やばい、やばい、やばい。

 心臓の早鐘を打つ速度がドンドン早くなる。


 私はその場にあった私服を適当に着て、慌ててその場を去った。


 誰にもバレないように変装もしてきたんだ、バレる事はない。

 酒場にいた私は、花売りの街娘リリー。公爵令嬢リリエラ・ブルーノートではない。

 魔道具で変えていた変装を解き、用意していた馬車に急いで乗り込み、ブルーノート公爵邸に戻った。

 馬車を運転していた御者には約束していた数枚の金貨を渡し、今日あった事は全て忘れると約束させ、ブルーノート邸から御者は消えるように出て行った。

 御者の男は娘が大病をしている。そのために金貨が必要だったのだ。

 

 私は裏口から入り、私室にこっそりと戻る。この抜け道はお祖母様から教えてもらった秘密の抜け道。お祖母様もこの抜け道を使って、コッソリ抜け出していたのよっと微笑みながら私に教えてくれた。

 

「ハァ〜……私、しちゃったのよね?」


 私にはどうしても、非処女になる必要があった。

 でないと、嫁ぎたくもないのに第二王子の妃になってしまう。

 ブルーノート公爵家の娘と。結婚させろと王命が来た時は、あまりのショックに母が倒れてしまった。

 第二王子は無類の女好きで、女を取っ替え引っ替えしている女狂い。

 しかも処女好きで有名。辺境伯として領地を与えるにあたって、国王陛下から結婚しろと言われ、私に白羽の矢がたった。

 私には元婚約者がいたんだけれど、運命の相手を見つけたとかなんとか言って、婚約破棄されてしまった。そこに目をつけた国王からの王命で結婚の打診が来たのだ。

 別に元婚約者に未練などない、なんなら全く好きでもない。だけどタイミングよ!

 こんな事になるなら、もう少し婚約破棄を引き延ばすところだった。


「婚約破棄ですか、喜んでっ……慎んでお受けいたしますわ」なんて言わなければ良かった。

 

 王族との結婚は、処女でなければいけないなんて風習は昔のことで、今はもう無いのだけど。

 私が結婚する相手レオナルド・ハーヴェストは違う。付き合う相手は絶対に処女でなければいけない。なんでそんなに処女に拘るのか。魔道具を使ってまで処女か非処女かを検査するのは有名な話。

 まぁ、その噂を利用させてもらったのだけど。


「ハァ……勢いでとはいえ。初めてあった男性とあんな事をするなんて……」


 ああああっ。

 思い出すな私っ。お酒が入ってぼんやりしていたとは言えうっすらとは覚えている。恥ずかしさで、悶えくる死ぬぅ。


 深呼吸、深呼吸……落ち着け私。


 せっかく、問題が解決しそうになったのに、新たなる問題が発生しそうなんだ。

 昨夜の相手は獣人だった。どうして気づかなかった!

 まさか、帽子の下に耳が隠れているなんて、思いもよら無かった。

 しかも褐色の肌に銀がかった灰色の髪色は爵位が高いはず。銀色なら王族だ。

 ハーヴェスト王国の何倍も大きな帝国、ガイロス帝国。

 銀や灰色の髪色は聖獣フェンリルの血筋を濃く受け継いだとされ、爵位が高くなるのだと、学校で習った。

 獣人といっても、見た目は私たちとほぼ同じ、獣耳がなければ見分けがつかない。尻尾だって生えていないもの。

 なんであんな場所に、位の高い獣人がいるのよう!


「ああああっ! やらかしたぁぁぁぁ」


 だってだって、自分から声をかけるのなんて、なかなかハードルが高く。声がかかるのを待ってたら、誰からもかけられず。なんでよう、それなりに見た目は良い方だと思うのに。なんて落ち込んでいた所に、唯一声をかけてくれたのが、あの獣人だった。

 ちょっと口数は少ないけれど、優しくて良い人ってのがすぐに分かったし、なんだか意気投合して……ゴニョゴニョ。


 大丈夫! 魔道具で特徴的な髪色も瞳の色も変えていたんだ。


 ブルーノート公爵の血を引く者は、銀が混ざった水色の髪色に、銀色の瞳を持って生まれてくることが多い。

 私はその特徴的な見た目のどちらも持ち生まれてきた。普通は髪色か瞳の色どちらかが出ることが多いのだけど。


 それを全て変えていたんだ、絶対に分からないはず。


 私はこの後レオナルド王子から非処女を隠していたと不敬をかい、ブルーノート公爵家から廃嫡され、辺境にある屋敷でひっそりと暮らすのだ。その屋敷はすでに私名義で貰っている。

 

 後は明日、レオナルド王子が公爵邸にきた時に、結婚を破談にできれば私の努力は報われるのだ。



 ★★★



 ——やっと見つけた……俺の愛しい人。


 人族の招待で王都に来ていたが、まさかそこに俺の番がいるなんて、思いもよらなかった。


 街を歩いていると、胸が高鳴り獣化しそうになる程の強烈な香り。すぐに番の香りだと分かった。


 ——近くに番がいる!


「いたっ! あの娘だ」


 番は飲み屋に入っていく瞬間だった。しかも普通の飲み屋ではなく、その日限りの出会いを求めるような場末な飲み屋。

 なんでそんな場所に! 変な男に絡まれたら困るので、急いで後を追って中に入った。

 茶色い髪色に蒼い瞳。俺の番はなんてかわいいんだ。

 店にいる男たちが、番にそう易々と声をかける事ができないように、こっそり魔法で可愛い姿を隠蔽し、誰にも分からないようにした。

 後は俺が自然に声をかけるだけなんだが……


「くぅっ……」


 番が愛おしすぎて、緊張して声がかけれない。


 この俺が、女に緊張して声がかけれなくなるなんて、さすがは俺の番。

 強い酒を何杯も飲み、酔った勢いを使いやっとの事で声をかける事ができた。

 番も酔っているのか、楽しそうに話すその姿、全てが愛おしい。

 名はリリーと言うのだとか。名前まで愛おしい。


 それにしてもだ、俺の番はなんて可愛いのだ。何回でも言おう。

 頬が桃色に紅潮し、瞳が潤んでいる。そんな顔で俺を見ないでくれ! 

 理性がぶっ飛ぶ。

 落ち着かせるために水を流し込んだつもりが、酒の原液を飲んでいたようで、理性がぶっ飛んだ俺は、番を近くの宿屋に連れこんでしまった。


 その事を今更後悔などしていないが、目を覚ますと番が姿を消していた。

 それは、自信を無くすだろう……

 俺は満足させることが出来なかったのか?

 酔っていたとはいえ、無理強いはしないよう大切にしたんだが……


 だが、逃げようとも無駄だ。


 番の印を残してきた。どこにいても探し出せる。

 待っていろ俺の番。

 万全の体制で、リリーを迎えに行くからな。



 ★★★



「初めましてリリエナ嬢、レオナルド・ハーヴェストだ」

「初めましてレオナルド殿下」


 ブルーノート邸にあるサロンにて、お互いに挨拶を交わす。

 レオナルド殿下は、無駄に見た目だけは良いので、今までの女性はその見た目にコロッといったんだろうな。

 私も惚れると思って、自惚れているのが見え見えである。

 全く好みじゃないけどね。それなら昨夜の男性がのが何倍も……っつ! 情事を思い出しそうになり、顔が火照る。


「リリエナ嬢は、男性に対してあまり免疫がないのかな?」


 何を勘違いしたのか、私がレオナルド殿下に緊張し、頬を赤めていると思ったよう。

 違うからね!


「まぁ、絶対に有り得ないのは分かるのだが、一応形式としてね。セバス! 例のあれを持ってこい」

 

 ああ、例のアレね。処女検査の魔道具。

 この検査をしたら私は終わる。お父様、びっくりさせてしまう事を、お許しください。


 執事のセバスさんが持ってきた魔道具をお腹にかざすと、魔道具が赤色に光る。これは非処女の証明。青だと処女。なんでこんなので分かるのか、不思議である。


「……非処女ですね」

「うんうん、そうだろぉぉぉぉ!? って非処女!?」

「ええっ!? リリー!? どう言う事だい!?」


 殿下どころか、お父様まで慌てている。なんだかすみません。

 ここで私は、決めていセリフを言う。


「すみません、私には好いた方がいまして。その方は平民で結ばれる運命になく。別れる時に、最後だと関係を持ちました。これに後悔はありません」


 そして口元を押さえて儚げに俯く。もう演技の限界である。


「殿下を裏切る形になり申し訳ありません」

「リリーにそんな……思いあっていた男性がいたなんて! 私にも相談して欲しかったよ」


 いや、全くそんな人は存在しないんだけど。なんなら好きな人さえいた事ないですが。

 殿下は発言しなく、わなわなと震えている。処女じゃないことに怒っているんだろうな。


「……申し訳ないが、君とは結婚できない! 失礼するよ」


 殿下は怒りを露わにしながら屋敷を出ていった。

 よっしゃぁぁぁぁ!! これで自由ぅぅ!!

 嬉しさの余り、笑顔になるところだった。まだ仕上げがある。


 ——お父様の説得。


「お父様、王家に不敬な事をしてしまった私がここにいたら、ブルーノート公爵家に迷惑がかかります。どうか私を、廃嫡してください。私には辺境にあるお屋敷がありますので、そこでひっそりと余生を過ごします」

「いやっ……だがっ。可愛いリリーにそんな事できない。辺境の邸には、何も無いんだよ? そんなところで一人過ごさせる訳には……」

「私は大丈夫です。跡を継ぐお兄様に、迷惑をかける方が嫌です!」

「だが……リリーに会えなくなるのは寂しい」

「たまに遊びにきてください。ほとぼりが冷めたら、私もこっそりとブルーノート邸に遊びに来ますから」


 どうにかお父様を説得し、家族と涙のお分けれをした後。辺境にある邸へと旅立った。


 さすがに一人では心配だからと、幼い時から面倒を見てくれていたメイドのアンナと、執事のクリフとその奥さんのメリーもついて来てくれた。クリフは引退して息子に執事を譲って、ついて来てくれた。

 幼い時からずっと一緒だった三人が、付いて来てくれると思ってなかったので、強い味方が居てくれる事が有り難い。


 辺境にあるお屋敷までは、馬車で寝ずに走って三日間の道のり。合間合間にある村で寝泊まりし、五日かけて到着した。


「これが……今日から私の住処になるのね」


 辺境にある屋敷は、想像以上にボロく……かなり修理が必要だった。

 だけど、あんな王子に飼い殺しされるくらいなら、この方が楽しいわ!

 

 到着して初めの一週間は、大掃除で終わった。

 近くの村の人たちも協力してくれて、壁などの修繕工事も早く終わった。


「ふふっ、どうにか見違えたわね」


 来た時とは見違えた屋敷を見ながら、外でティーを飲む。最高の時間ね。

 後は、近くの村で買い物して家具を揃えたりしたいなぁ。


 なんてのんびりと考えていた私。


 まさかこの後、この辺境の地まで追いかけてくる人物がいるなんて、考えもしていなかった。


 さらにその人物に振り回されることになるなんて!


 この時の私、逃げるなら今よ!




こんなお話いいなぁっと急に思いつき。勢いのままに短編で書いて見ました!

少しでも面白いと思って頂けたなら★★★★★評価頂けると有り難いです。

ご希望があれば、時間がある時に長編化できたらなぁと考えています。

楽しんで頂けると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
楽しかったです!! 番のお話は大好きです!!是非っ!!是非に!!長編化を!!
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