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『しーちゃんと記憶の図書館』第61話
色とことばのあいだで
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図書館の奥の作業机に、
真っ白な画用紙とノートが並んでいた。
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海斗は鉛筆を握り、
女性はペンを持つ。
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最初の一行をどう書くか、
最初の一色をどう塗るか。
二人は、同じように息を止めて考えていた。
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「海斗くん、物語のはじまりって、
どんな景色がいいと思う?」
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「うーん……
たぶん、“ただいま”って言える空が見える場所」
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女性は、その言葉に少し目を潤ませた。
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「じゃあ、私は“おかえり”って言える家を描くわ」
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海斗の手が動き出す。
夕焼け色を混ぜたオレンジが、
白い紙の上で少しずつ広がっていく。
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しーちゃんは、
その様子を静かに見守りながら、
胸の奥が温かくなるのを感じていた。
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「色とことばが寄り添うと、
それはただの作品じゃなく、
人の心を包む景色になる」




