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『しーちゃんと記憶の図書館』第18話
夕焼けへの手紙
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砂時計の砂がすべて落ちたとき、
窓の外はちょうど夕焼けに染まっていた。
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少年は、
しーちゃんに促されて机に向かった。
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「何を書けばいいの?」
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しーちゃんは微笑んだ。
「あなたの止まっていた時間に、
少しだけ言葉を置いてみよう」
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少年は、震える手でペンを持った。
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『お母さんへ。
夕焼けは、今日もきれいです。
あの日と同じ色だけど、
もう少しだけ、あたたかく見えます。
僕はまだ会いたいけれど、
この色を嫌いにはなりたくないです。』
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書き終えると、
少年は深く息を吐き、手紙を封筒に入れた。
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「これは、どこに届ければいい?」
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しーちゃんは、
図書館の奥にある“記憶の棚”を指さした。
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「ここに置けばいいの。
この図書館は、届かないはずの手紙も、
きっと受け取ってくれるから」
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夕焼けがゆっくり夜に溶けるころ、
少年の心にも、新しい時間が流れ始めていた。