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『しーちゃんと記憶の図書館』第15話
妹からの最後の贈り物
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図書館の奥の間。
埃をかぶった棚の前で、しーちゃんはそっと息を吸い込んだ。
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棚の中央に、小さな引き出しがある。
波と星の刻印が、光の加減で淡く輝いていた。
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「これだ…」
少年が小声でつぶやく。
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女性は、震える手で錆びた鍵を差し込んだ。
カチャリ──
静かな音が、部屋いっぱいに響く。
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引き出しの中には、
布に包まれた小箱と、一通の手紙が入っていた。
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手紙は、丸みのある柔らかい字で書かれていた。
『お姉ちゃんへ。
私が見た星は、いつかあなたに会うための道しるべ。
もしこの手紙を読んでいるなら、
私はその道の先で、笑って待っています。』
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女性の頬を、静かに涙が伝った。
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小箱の中には、小さな砂時計が入っていた。
中の砂は、海辺の白い砂だった。
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「これ…妹がよく遊んでいた砂浜の砂だわ」
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しーちゃんは微笑んで言った。
「きっと、時間がどれだけ経っても、想いは消えないって伝えたかったんです」
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女性は砂時計を胸に抱きしめた。
「これで…やっと、あの夜の続きを歩ける」
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奥の間に差し込む光が、三人をやさしく包み込んだ。