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『しーちゃんと記憶の図書館』第101話
青いリボンの猫
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二匹の犬の写真の前に、
制服姿の中学生が立っていた。
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首からスケッチブックを下げて、
じっと見つめている。
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「こんにちは」
しーちゃんが声をかけると、
彼女は少し照れたように笑った。
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「私……猫を飼ってたんです。
青いリボンが似合う子でした」
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そう言って、
スケッチブックを開いた。
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そこには、
青いリボンを首に巻いた灰色の猫が
やさしい筆致で描かれていた。
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「去年、病気で……
でも、描くと少しだけ会える気がして」
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しーちゃんはその絵を額に入れ、
犬の写真の隣に飾った。
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猫と犬が、
まるで旧友のように並んでいる。
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風鈴が鳴るたび、
二匹と一匹の物語が、
そっと寄り添うように響いていた。