(株)千木リース (5)事業内容1
粗茶と言われたこの一杯の味がわからないのは、緊張からなのか単に自分の舌がジャンクフード慣らしているだけなのか。都心の一等地に似つかない庭園を見つめながら、ない脳で考える。
案内された部屋は自分の賃貸アパートよりも立派なもので、それが10はくだらない数並んでいる平家の主人こそ、今回の被賃貸主だ。
「妻は長らく子供を身籠ることが出来ず、治療も効果を発揮いたしませんでした。」
暗い面持ちでゆっくり事情を説明する主人の横で居心地が悪そうに妻が私をじっと見つめていた。それが、他者の身体機能を自身に取り込むことへの不安からなのか、はたまた。
「このまま跡目が出来なければ、我が家は終わりです。妖怪でも悪魔でも構いません。どうか、問題解決にご助力いただけないでしょうか?」
「失礼ですが、体外受精は考えなかったのですか?」
現代、金があれば治療不可でもない限り、医療の門戸は広い。それこそ、幾千の手立てがあるだろう。
「それは出来ません。子を産めぬ母親と知られれば、我が家の面子が保ちません」
それでも、千木リースを頼ったのは、その幾千の星が彼らには不毛な大地で、寧ろ毒になりかねないからだ。
昨今のジェンダー問題に真っ向から喧嘩を売るような理由だが、それも人それぞれ。慣習・伝統は受け入れられぬものも、理解できぬものもあるのだ。
「ご事情理解いたしました」
-意味がわからない。
「最大限助力させていただきます」
-気味が悪い
「それでは、契約書を準備させていただきます」
-早く帰りたい
なにも珍しいことではない。本音を隠し、顧客に親密な振りをする。笑顔で武装し、求める言葉をただ発する。他の会社でも、ありきたりな光景だ。
そこに疑問を持つ意味はない。あくまで、自分達は報酬を受け取る側の人間だ。
それでもこの事業のこの光景は。
「気色悪い」




