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挨拶からはじまる恋

作者: 素敵な恋の始まり

「おはようございます」

「おねがいします」

「ありがとうございます」

「ごちそうさまでした」

「私の目を見ながらいつも笑顔で言ってくれるお客さんはいないから、あなたのこと素敵な人だなとずっと思っていました」


「だから私はあなたのことが・・・」




会社員にはつき物の転勤。入社してから営業部で20年目を迎える私には今回の工場人事部への異動は青天の霹靂。上司からは内々に話しをされてはいたが、諸事情からまさか東京から約2時間弱の工場勤務になるとは思ってもいなかた。


決まったものはしょうがない。引越をしないで都内の自宅から通うことも考えたが、工場の始業時間が8時と早いので工場から車で15分のアパートに引越。近くにスーパーとコンビニ、24時間営業のファミリーレストランがあったのでバツイチ独身の私はここに決めた。


数か月が経過し仕事に余裕がでてきた頃、出勤前に自宅近くのファミリーレストランでモーニングを食べようと立ち寄る。お客が私一人。翌日の朝に行ってもお客がいない。五日目にして三人連れの先客がいたが、平日早朝学生アルバイトの一名(翔子 20歳 女子大生)と私の二人しかフロアーにいないことが多かった。


朝食をファミリーレストランでとるのが恒例化、他にお客がいないときは翔子の学生生活や恋愛話し、趣味の話し、バカ話しを交わすのが私の楽しみに。特に読んだことがある本や作家をお互いに紹介している時は話しがもりあがり、本の貸し借りをするようになった頃から私は翔子に恋をしはじめた。


ある日、急な出張で早朝から直行し工場に戻ったのが21時過ぎ。夕食をファミリーレストランで食べようと行くと、金曜日の夜ということで満席状態。入り口付近は席を待つ人であふれ、店員も接客で忙しく動きまわっている。


あきらめて帰ろうと扉を開けると後ろから声が。


「いらっしゃいませ」

「こんばんは」


声の主が誰だか振り返らなくてもわかる、翔子だ。


「あれ、夜にバイトって珍しいね?」というと

「バイトが足りなくて急遽はいりました」

「でも22時までだからもうあがります」


と周りに聞こえないよう小さな声で答えた。


受付表をみると4組待ちということで、向かいにあるハンバーガーチェーン店に行く。ハンバーガーにポテト、コーヒーの味気ない夕食を終え帰ろうとすると


「こんばんは」

「バイト終わりました」

「さっきここに入っていくのがみえたから」


と突然翔子が対面の席にあらわれ、私を驚かせた。お客が立て込んでバイト中に賄い食を食べる時間が無かったらしく、ハンバーガーを食べるとの事で同席。バイト先の愚痴を口にポテトをくわえながら話す姿をみて、翔子のことが愛おしくなった。


お店の閉店時間が近づき、「もう少し」といいかけたところで「明日と明後日、東京でディベート大会だから朝早く出ないといけないから嫌だな」と翔子のひとことで続きはいえなかった。


その後も平日はファミリーレストランで朝食をとるものの翔子との関係は進展しなかった。なぜなら私が心の中で


「20歳の女の子が22歳も年上の男を好きになるわけない」

「大学生と42歳では親子じゃないか」

「翔子みたいな素敵な女性がおじさんを好きになるはずがない」

「告白してふられたらもうお店に行けない」


自分で勝手に言い訳を作っていた。


工場に来て1年半経過したところで、半年後に完成する中国工場に出張。日本人スタッフの住むところや現地スタッフの採用面接、日本から送られてくる部品の受入れ、工事進捗報告など半年はあっという間に過ぎ帰国。


帰国した翌日、ファミリーレストランに行くとなぜか翔子の姿がない。男性店員にいつものバイトさんはと聞くと、「先月末で辞めました」と。


翔子と二度と会うことが出来ない。その日は上層部を含めての中国工場報告会議。一日出席していたが全然身が入らない。


会議終了後に会社の食堂で中国工場に赴任するメンバーの壮行会と私の慰労会が同時に行われ20時に終了。中途半端におなかが空いていたのでハンバーガーチェーン店に行く。ハンバーガーとコーヒーを持って二階に行くと先客がパラパラ座っている。


横一列のテーブル席に座ってハンバーガーを食べていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。この声は翔子だ。他にも複数名の声が聞こえてくる。


翔子の声を聞いて自分の心が躍り上がるのがわかる。翔子と何でもよいから話しがしたい。自分の気持ちが抑えきれない。


10分位すると翔子と友達はワイワイガヤガヤいいながら帰っていった。心の中で翔子の声が聞けてほっとする気持ちと話しかけなかった後悔が入り混じり複雑な気持ちのなかコーヒーを飲む。


コーヒーを飲み終え駐車場に行くと翔子の姿が私の車の前に。


「どうして急にバイト先にきてくれなくなったの?」

「急に来なくなったからあなたのことを心配していました」

「私があなたに何か失礼なことをした?」

「瘦せたみたいだけど入院していたの?」


泣きながら一度にたくさんの質問をされ驚いたが、この半年間中国出張で日本に居なかったことを詳細に話した。


話しを終え一息つくと翔子が涙目ながら笑顔で


「年上の男性が大学生を好きになるわけない」

「大人の男性と私ではつりあわないだろう」

「素敵な男性が私を好きになるはずがない」

「告白してふられたらもうバイトに行けない」

「自分で言い訳を作っていたけど私いうね」


「おはようございます」

「おねがいします」

「ありがとうございます」

「ごちそうさまでした」

「私の目を見ながらいつも笑顔で言ってくれるお客さんはいないから、あなたのこと素敵な人だなとずっと思っていました」


「だから私はあなたのことが・・・」




「ちょっと待って、そこから先は私にいわせてくれる」

「私も自分で言い訳をしていたけど、勇気をもっていうね」


「おはよう」

「ありがとう」

「いってらっしゃい」

「お仕事頑張ってね」

「私の目を見ながらいつも笑顔で言ってくれる素敵な人だなとずっと思っていました」


「そんな素敵なあなた、翔子のことが私は大好きです」

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