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わが心なぐさめかねつ  作者: 多谷昇太
大野の月
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家持の怒り

「あいや、すまぬ。つい不憫をもよおして(軽笑)。そう云ってくださればこの家持気がやすまります。しかしな、お婆、なお気に掛かるはその為輔殿じゃ。聞けば大宰府からのそなたの都度の贈り物(※着物をつくる反物。これが当時の金に当たる)、手紙に対して以前は返事をくれていたそうじゃが、3年前、この地で思わずもそなたに再会した時以来、もしくはその前からか、ぷつりと手紙ひとつさえよこさぬそうではないか。まさか押勝の儀、道教の儀を慮っていはしまいか、それが気になるのです。もしそうであるならば婆殿、ここはやはりこの私と都に戻るのがよくはあるまいか。これ以上そなたに辛い思いはさせたくない。あなたの一生を捧げたそのお子から、もしやつれない言葉など掛けられては、この家持いたたまれない。かなうなら私の介在を得て、お2人の再会をはたしたいのじゃがどうか。行く行くは奈良の都で親子水入らずの暮しをも図ろうほどに……」

「あいや、若様、為輔から手紙が来ないのも無理はありません。15年前、はしなくも疱瘡にかかり、私は伝染を恐れて人里離れたこの庵を得ました。以来こちらからは何も、連絡さえもしていないのです。奇しくも3年前この地に赴任された若様とお会いし、若様から私の無事を聞かされてさぞや驚いたことでしょう。またおおせの押勝様の儀も確かにこれあり、為輔からの音信なしとも私は意に介しません」

「じゃが、それならばなお、なお為輔殿はそなたを気に掛けねばならぬはず。御無事であったと知ったなら……。年は私と同じ55と聞く。ならば委細わからぬはずはあるまい!?」

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