No.1 過去①
自分の名前はわからない。
何処で生まれたかもわからない。
ただ、あの声だけが頼りだった。
俺はある時、誰かの声を思い出した。その声の持ち主を探した。だが気づいた時には戦争に巻き込まれ、今は一人の兵として戦争に駆り出されている。記憶の無い俺に周りの奴らは優しく接してくれた。だがそんな奴らも俺の目の前で死んでいった。まるで手のひらに落ちる雪のように。
「何故、お前だけが生き残る」
そんな言葉を毎日のように聞く。俺の部隊の指揮官も、
「君は必ず生きて帰る 私はここまでだ、君には何か運命を感じるんだ。安心しろ、君は死なない」
と俺に言い散っていった。
俺に何の才能もない、仲間の仇も取れず、ただ運良く生き残っているだけだった。
………………………………………………
「起きろ!、ルムク砦が落とされた!」
そんな仲間の叫び声によって夢は覚めた。俺は驚きのあまり布団から飛び起きる。
ルムクの砦と言えば西側にある帝国最大の砦。あんなところが落ちるなんて正直信じられない。俺は一度、声を探している道中、そこへ立ち寄ったことがあるが一つの戦艦を丸々地上に置いたような大きさだった。その事を今でもはっきり覚えている。
今日は忙しくなるな…そう思いながら出撃の準備をしているところだった。拠点から出た瞬間、何かが光ったと思った瞬間俺は数メートル後ろに吹っ飛ばされ、目の前が炎に包まれる。何だよ…ここの何処が最強の国だ、負けてるじゃないか…
「………」
その時、俺の頭にあの声がかすかに聞こえたのだった。
いや、負けていいのか?俺はまだ声の持ち主を見つけていない、こんなあっさり死んでいいものか。そんな事、死んでも御免だ。俺は何とか体を起こし、この場から逃げだそうとした。
「生きている…」
燃えさかる地面。周りには無数の死体。見上げれば、一人の軍服を着た女性が冷たいし眼差しで俺を睨んでいる。
「誰だ…お前は…」
その答えはあまりにも恐ろしいものだった。
「…私は、帝国軍部の総司令官 ストロベリーだ」
少し一話が短くなりすぎました…次は注意して書きます…。余談ですが、主人公の生きる世界は近未来と中世を足して2で割ったような世界です。
電車とかは普通に通ってます。主人公君は戦時中に生まれた(?)ので使っていませんが、普通の学生などはホバーサイクル的な物に乗って登校していたそうです。