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62 それから②

 僕はクサナギさんのスパルタ教育に耐え、無事ヤマト大学に入学を果たした。

 なぜかクサナギさんはそのまま山上教授の助手として研究室に居座っている。

 山上教授と飲み仲間らしい……。

 僕が帰らなくていいのかと聞くと、夏休みには帰るとか言ってた。

 皇居の形代を実家のように言うなよ。


 そう言えばお祖父様が再現したクサナギ剣は無事に熱田神宮に戻った。

 龍脈を伝ってクサナギさんとアヤナミが行ったのだけれど、僕は連れて行ってもらえなかった。

 クサナギさん曰く『目がつぶれる』そうだ。

 あとでアヤナミがこっそり教えてくれたのだが、厳重に保管されていた箱の中は空っぽだったそうだ。

 まあ無事に収まったなら良しとしよう。


 僕が大学院を卒業して、教授の研究室に入った頃、サーフェスが訪ねてきた。

 残党を狩るのにかなり時間がかかったが、あの時に取り寄せたスプレー糊が強力な武器になったと笑っていた。

 その時サーフェスはひとりの女性を連れてきていた。


「ミーヤだ。まだ二つ持ちのままにしている。会ってやってくれアツタノミコ」


 僕はその女性を一目見た瞬間に気を失い、その女性もほぼ同時に気を失ったらしい。

 僕の中から何かが抜け出していく感覚だけは、はっきりと覚えている。

 やっと気がついた僕にサーフェスが言った。


「一緒に行ってしまった」


 ああ、アツタノミコとミヤズヒメの魂は再会できたんだね。

 本当に良かった。

 僕の向かいのソファーでまだ気を失ったままのミーヤ。

 そのあまりの美しさに僕の心は奪われてしまった。


「美しい……」


 僕の呟きを聞いたサーフェスとクサナギ三は吹き出した。


「まさかの一目惚れかよ!」


「うん、そうみたい」


「僕も妹もこっちに移り住もうと思ってるんだ。これからもよろしく頼むよ」


「そうなの? 神なのに?」


「うん、神だから多少は融通が利くんだ」


「ミーヤさんも?」


「ああ、そのつもり」


 僕の心の中に花が咲いた。

 真っ赤な顔をしている僕を見て、アヤナミがぼそっと言った。


「吾も所帯を持つ」


「「「「えっ!」」」」


「トオル、お前がやらかしたことだ。吾の喉にあのうさぎ姫の石を埋めただろう?だから責任をとることにした」


 アヤナミの鈍青色の顔が真っ赤だ。


「じゃあ……うさぎ姫と?」


「ああ」


「あっちで暮らすの?」


「いや、こっちで暮らす。あれは巫女として吾を支える」


「アヤナミの池?」


「そうだ」


「頑張ってね、アヤナミ」


「ああ、お前も頑張れよ」


 そう言ったアヤナミは自分の石を掌に載せて、何やらぶつぶつと念じた。

 ぼうっと明るくなり、色白の可愛らしいお嬢さんが現れた。


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