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38 現存するゲート

 僕とサーフェス、アヤナミは鎮守の森にある結界で守られた巨大な石の前に立った。


「行きたい場所を具体的に思い浮かべてゲートに触れると移動するんだけど、君には無理だから僕が連れて行くよ」


 そう言うとサーフェスは僕の胸の石に入った。



「俺は行ったことが無いから具体的なイメージができない。俺もここに入りからお前が連れて行ってくれ」


 アヤナミは腰から革袋を引き抜いて僕に渡した。

 革袋が熱を持ち、アヤナミの姿が消えた。


『荷物もすべて持ったか?準備が出来たら僕をゲートに当ててくれ』


 僕は了解と口に出して、野営した場所を片づけた。

 来た時よりも美しく……日本人としての矜持だ。


「行くよ」


 三人分の荷物と言っても大した量ではない。

 僕はそれを肩に担いで左手にアヤナミ入りの革袋を握りしめて、サーフェス入りの石をゲートに当てた。

 一瞬意識がぐにゃっとして、真っ暗な空間に放り出された。

 ここに来た時と同じ道だろうか。


『上を向けトオル』


 僕が視線を上に向けると移動スピードが一気に加速した。

 息が苦しいような気もするが、二度目ともなると少し余裕があるようで、周りをきょろきょろと観察してみる。

 あちこちに光りが漏れる穴があり、景色が垣間見える。

 きっとそこに入ればその景色が広がる場所に行けるのだろう。


『曲がるぞ。右を向いてあの穴に飛び込む。出るとき少しだけ衝撃があるが耐えてくれ』


 そんなの聞いてないと文句を言いたかったが、その衝撃がどんなものかわからないので舌を嚙まないように歯を食いしばった。

 その光景を見ていた人がいたとしたら、きっとポンッという音が聞こえたのではないだろうか。

 そんな感じで僕は移動空間から飛び出した。

 飛び出した瞬間に石から抜けた二人は華麗に着地したが、僕は顔から地面に突っ込んだ。


「大丈夫かい?」


 サーフェスが僕に手を差し出して立たせてくれた。

 アヤナミは無言で荷物を持ってくれる。


「うん、ありがとう。やっぱりぜんぜん慣れないや」


「まあ神と人では身体能力も違うしね。気にするな」


 慰められたのか貶されたのか微妙な言葉を口にしたサーフェスがあたりを見まわした。


「驚いたなぁ、久しぶりに来たけど変わってない」


 僕も周りを見回したが、ただの森だ。

 

「物凄く大きな岩だね」


「ああ、それがゲートだよ。石神と呼ばれてる」


 もうあまり驚かない自分に驚く。


「お祖父様の家に行くの?」


「ああ、直接行っても良かったけど一応正規のルートを教えておいた方がアヤナミに良いかなって思ったんだ。ここから近いだろ?」


「ここがどこかわからない」


「ここは米子に近いよ。君んちは奥出雲だっけ」


「そうだよ。昔のたたらがあるところだ」


「飛ぶとどのくらいかな。君も地形を把握しておいた方がいいだろう?」


 サーフェスがアヤナミを見て言うとアヤナミがこくんと頷いた。

 

「確か君んちの近くにも小さいゲートがあったはずだが。神代というなの場所に心当たりはない?」


「神代?ちょっと検索してみるよ」


 僕は思い出して鞄からスマートフォンを出した。

 検索をかけてマップを広げる。


「あっ! あった! 神社だね」


「へぇ神社になってるの。あそこって無人ゲートだったんだよね。利用者が少ないから」


 空間移動ゲートを過疎化の進んだ駅のように言うサーフェス。

 僕は少し笑ってしまった。


「でもそこまで行けばすぐだよ」


「じゃあそこに行ってから飛ぼうか」


 二人はまた石に戻り、僕はゲートに近づいた。


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