表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/63

27 竜の城

「どうぞこちらでお休みください。そちらの方もどうぞ」


 少女は優しい微笑みを浮かべながら言った。


「そちらの…」


「その胸の石に隠れておられる方ですわ。食事を運ばせましょう。ゆっくりなさって下さいませね」


 そう言うと少女は部屋を出て行った。

 案内された部屋はとても落ち着く内装だった。

 全体的に白を基調としているが、冷たさは感じない。

 少女が部屋を出て扉を閉めるとサーフェスの声が聞こえた。


「さすが竜の王だな。僕の存在にも全く動じない」


 久々にサーフェスが姿を現した。


「大丈夫なの?その姿でいると苦しいって言ってたよね?」


「うん、ここでは平気だね。きっと邪気が無いからだろう。僕がもともといた空間に近い」


「へぇ…良く分からないけど」


 ソファーに座って話をしていたら、ドアがノックされ使用人らしき羊人間がワゴンを押して入ってきた。


「急遽取り寄せましたので、お口に合えばよろしいのですが」


 そう言ってテーブルに置かれたのはコンビニのおにぎりとカップ麵だった。


「取り寄せたって…わざわざ?」


「はい、こちらがおなた様のお国では一番人気のお食事だと伺いましたので」


「あ…ありがとうございます。確かにそうではありますが…」


 戸惑う僕などまるで無視して羊の使用人は下がっていった。


「まあ、あながち間違ってはいないだろうから…のびる前に食べてしまおう」


 サーフェスは慣れた手つきでカップ麺のスタを開け、おにぎりの包装をぺりぺりと剝がした。


「おっ!梅干しとおかか!」


 なぜかサーフェスは喜んでいる。

 僕も自分の前に置かれた食事に手を伸ばした。


「日本人って貧しい食生活が定着してるんだね」


「貧しくはないさ。だって旨いじゃんこれ。僕はほぼ毎日食べてたよ」


「そうなの?」


「このおにぎりもラーメンも進化し続けているからね。研究者の努力と熱意には頭が下がるよ。しかも安いしさ。栄養価も考えられているし。凄いよね」


「そう?かな…」


「君はいいものを食べてきたんだろうね。羨ましいことだ」


「うん、山下さん夫妻の追いお陰だね」


 僕は明美さんが作ってくれる食事を思い出した。

 今頃はクサナギさんが一人で楽しんでいるのかな…そんな事を考えていた。


「そう言えばサーフェスはクサナギさんに何か思うところがあったの?」


 おにぎりを片手で持ちながら器用にカップ麵を口に運ぶサーフェスがこちらを見た。

 ちょっとお行儀が悪いぞ?


「思うところっていうか、会ってしまうとお互いの魂が共鳴してしまうだろうから、奴に感知されやすくなると思ったんだ」


「魂の共鳴?」


「ああ、おそらくクサナギっていうトオルの家庭教師は、神刀クサナギの魂の現身だと思うよ。そしてそのことを本人も自覚している。あまりにもはっきりした記憶を持っているような感じだから……おそらく輪廻に還らずにずっと体の入れ替えをしてこの世に居続けていたんじゃないかな」


「えっ!草薙さんがクサナギ?」


「うん、間違いないと思う。君のお母さんは利用されたのかもね」


「そうか……でもなぜ僕のところに?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ