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10 草薙という男 

「どうしました?」


「実はその友人というのが…」


 僕は山下さんを相手にして誤魔化しきれるほどの胆力も語彙力も無い事を素直に認めて、サーフェスが転校してきてからのことを話した。

 山下さんはずっと黙って聞いていたが、僕が話し終わるとすぐに口を開いた。


「なるほど、だから明日から学校は休んでフライングで夏休みに突入したいということかな?お母さんには内緒?」


「説明するのも面倒だし。山下さん何か学校側が納得する言い訳無いですかぁ?」


 山下さんは少し考える振りをしながら明美さんの方に顔を向けた。

 山下さんと目が合った明美さんは小さく肩を竦めて僕を見た。


「島根県おられる大叔父様が御病気で危篤状態になった事にしましょう。その方は結婚もしておらず、お子様もおられないのでトオルさんに全ての財産を相続させたいと。その手続きのために急遽渡航したということで。私の弟が同行しました…ってのはどうでしょう?私が明日にでも学校に行って説明してきますよ。信憑性が高まるでしょう?」


「さすがです。よろしくお願いします」


「サーフェスさんの方は大丈夫なのですか?」


「良く分からないけど…大丈夫じゃない?」


「まあ明日から一緒に行動するのでしょう?聞いてみて下さい。もし何も手続きしていないのなら、こちらで適当にやっておきますから」


「うん、よろしくお願いします」


 山下さんが僕の顔を見て真剣な目をした。


「そのサーフェスという友達は大丈夫なの?トオルさんはやけに信用しているけど」


「ええ、信用しているというか…不思議な感じですけど。なんというか…放っておけない?という感じかな」


「なるほど。まあご当主様にお会いになるなら見極めて下さるでしょう」


 そう言って山下さんは手提げ金庫から十万円を出して僕に渡した。


「交通費です。行き方はわかりますよね?」


「ええ、途中で奈良に寄るので新幹線ですね」


「大学の下見?」


「ええ、それもありますがサーフェスがあの山上教授と会う約束をしているそうで、僕も同席させてもらえるんです」


「それはラッキーだ。まあ遅ればせながらの大冒険だね。しっかり楽しんでおいで。でも必ず定期的に連絡はしてよ?」


「もちろんです。それと…草薙さんのことですが」


「ああ、家庭教師の件だね?本家に呼ばれて帰ったって言えば問題ないさ」


 僕は山下さんからお金を受け取って部屋に戻った。

 部屋のドアが少しだけ開いていて、明りが漏れている。


「草薙さん?どうしました?」


「ああ、お帰りなさいトオル君。これって君の?」


 草薙さんは机の上に置いていた光る石を手に取ってへらへらと笑っている。


「ええ、きれいでしょう?友人に貰ったんです。お守りにしようと思って」


「お守りかぁ、それは正解だ。これは君を邪気から守ってくれる。これを君にくれたのは誰かな?」


「友人ですよ。草薙さんには…言いたくないな」


「ははは!はっきり言うなぁ。まあいいさ」


「何か用ですか?」


「君のお母さんのことだよ。もうここには居たくないって言い出してさ。彼女がここにいないと僕がいる理由が無くなるでしょ?だから説得しているんだけど、君にも手伝ってもらおうと思って来たんだ」


「手伝いませんよ?」


「やっぱり?」


 草薙さんは光る石を部屋のライトに透かして見ながらにやけた顔をしていた。


「また旅行にでも行けば?」


「そうはいかないよ。せっかく帰ってきたんだし、もう少し居たいんだけどなぁ」


草薙さんはまるでいたずらっ子のような目をして僕を見た。


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