真っ平御免はこっちのセリフ
若干のパロディがございます。
詳しくは後程!!
それから数日後――
賭場に深編笠を被った武士らしき男と、別の同心が訪れた。無論、右近の居場所を聞くためである。
「右近の、旦那ですかい」
店主は呆れていた。何度、右近が関八州へ向かったと言っても諦めないのだ。関八州のどこだ、と。
「御用聞きをやっている方にそれを聞くのはどうかと……」
機密だってあるだろう、その言葉を言外に含ませ同心に言えば、右近は浪人を逃がした咎人だという。
浪人、おそらくは瀬堂が罪を着せたという男だろう。
「こちらにおわす方は、さる藩のご家老でな。件の浪人はその藩で奉公構に処されていたらしい」
「……はぁ」
「気のない返事だな。こちらで引き渡そうとしたが、その前に右近によって逃がされた」
「……そんなことを言われましてもねぇ、あっしらにはどこに行ったかなど分かりませんぜ。戻ってくると言って前金は置いていきましたが」
一体、いつ戻るか分からないというのを言えば分かってくれるのか。
「おや、私をお探しでしたか」
唐突に聞こえた声。まさしく右近のものだった。
「右近の旦那」
同心相手に使わぬ言葉遣いに店主はいぶかしんだものの、やっとこの苦痛から逃れられることの方が大きかった。
「店主、面倒をかけたね。だが、思わぬものが釣れた」
「旦那?」
右近の後ろにいるお方は……もしや。
「松壽様!!」
同心が驚くのも無理はない。松壽 市之丞。町奉行その人である。
「旦那、関八州へ行かれたんでは?」
「あれか。代理をたてた。今頃は着いているんじゃないか」
誰を何処にというのが一切合切抜けている。
「松壽様もお人が悪い。あえて件の浪人を捕らえさせ、彼方方の同心をあぶり出す。その為に私に浪人を脱獄させる手伝いをさせるとは」
「仕方あるまい。件の浪人に持ち掛けられた。あのお方こそ、人が悪い」
「で、聞きそびれておりましたが、浪人は何処の何方様で?」
「右近、其方知っていて付きおうていたのではないのか?」
「あそこまで清濁を併せ持つ人間はそうおりませんが……。私も脱藩して浪人になったという言葉を一応、信じてはいたのですよ」
「関八州にある譜代大名の跡取りだ」
……なんですと? 店主の目が点になる。
件の浪人、実は店主も面識がある。風来坊というのがしっくりくるお方だ。何なら、右近の方が育ちよく見える。
「跡目を継ぐのは真っ平御免だと、ご両親に仰って跡目から外されるよう動いておるらしい」
そして右近と知り合い、意気投合した上に浪人という肩書を周囲に知らしめたという。
……どうして、右近の周りにはまともな奴がいないのか。他人事のように店主は思った。「あの方、ああ見えて異母弟はかわいいらしい。異母弟が跡目を継ぐ際、妨げになる目を取っておきたいと、この話を持ち掛けられた」
右近や店主が聞いていた妻子の話は、異母弟を置き換えていっていたらしい。
わかるか!!
今回は「殿さま風来坊隠れ旅」でございました。
紀州藩と尾張藩のお殿様が「将軍になるのは真っ平御免!」ととんずら(?)するお話。
三田村邦彦さんと西岡徳馬さんのダブル主演でございました。
いや、彼らは旅するんですけどね。面白かったーー。
老中が悪役なのもそのあたり。
この先も時代劇パロ出しますよーー