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博徒・右近の御用聞き事情(仮)  作者: 神無 乃愛


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11/11

遊郭へ


 ――遊郭「吉原」――

 男の天国、女の地獄。金ですべてが買える場所。様々言われているが、右近に言わせてもらえれば、どれも違う。

 しいて言うなら「女の園」だ。教養あり、美しく客あしらいの上手い一部女性が力を持つ。そして、それを取り仕切るやり手と店。

 力を持たぬ女性はどうなるのか。掟の中に守られていれば何とかなる。守られていない女性は、不幸になる。掟を破ったものは、誰であれ等しく罰を受ける。女性だけではなく、陰間もか。

 花を売る、というのは男であれ女であれ、同じことなのだ。


 右近はとある大見世の裏へと回る。御用聞きが表から行くのであれば、問題しか生じない。

「失礼する」

「おや、右近殿ではないですか。お帰りください」

 嫌味たらしく見る男に、やり手か店主を呼んでくるよう心づけを渡して頼んでいく。


「誰かと思えば右近かい。金にならん、出ておいき」

「何、聞きたいことがあって」

「出ていけ、という言葉が聞こえんのかい?」

「聞こえている。これはこの店の花と禿に」

 そういって手渡すのは、遣手が好きな甘味だ。

「甘味でつられると思うのかい?」

「思わない。思っていたら裏から来ない。私が聞きたいのは一つ」

「ふざけんじゃないよ、誰が……」

 甘味を入れた袋を開けた遣手が黙った。

「今すぐかい?」

「いや、事件解決後だな」

「仕方ないね。不知火にも伝えておくよ」

「助かる」

 不知火、とはここにいる太夫だ。その次の位に準ずる格子は二人で、泡沫と浮舟。この二人は双子である。

 獣腹と忌み嫌われるが、何故か有名で人気の格子だ。太夫にも引けをとらない。

 この吉原内でも有名な格子になったのは、二人の売り出し方やら、遣手と店主の持つ力、そして二人の努力と才能の結果だ。

 ……二人が、双子であるにもかかわらず、あまり似ていないのも要因に挙がるのかもしれないが。


「で、話は何だい?」

「単刀直入にいう。この界隈で舟を仕入れた見世、もしくは個人はいるか?」

「舟て……隠語でもなんでもなく、現物の舟かい。んなもん仕入れていたら、噂が広が……」

 やり手の顔が強張った。

 間違いなく思い当たる節が一つはあり、そして、このやり手が口に出せない相手。大体察しがつくというものである。

「何、今度平次郎と釣りをしようという話になってな。風来坊が聞きつけて、舟も用意して釣りをしようなどとほざきやがった」

「何処の風来坊だい。釣りごときに舟を新調なぞ考えさせんじゃいよ。そこまで金があるなら、うちの見世で遊ばせな。呼出しなら金は要らんよ」

「私のつけ、ということかな? お断りだね、風来坊からきっちり金をとってくれ。散茶くらいならあっさり一夜の夢を買うだろうよ」

「いい金払いの客になりそうだねぇ。振袖新造でも見繕っておくか」

「……私は何も聞いてないよ」

 新造から見繕うとは、どれくらい搾り取る気なのか。散茶を進めた自分が言えることではないのだが。


「大体のところは分ったよ。まぁ、想像していた通りかな」

「可愛げのない」

「私に可愛げが欲しいか?」

「不気味なことを言うんじゃないよ。あんたが可愛くなったらお日様が西から昇ってきちまう」

「酷いな。じゃあ、今日はこの辺で」

「御用聞きなんぞ、さっさと引退しちまいな。きょうだいや親御さんが心配しとるよ」

「……()は天涯孤独だよ、遣手」

 遣手とは善左並みに軽口を叩けるが、二言目にはこれだ。右近は天涯孤独(、、、、)だというのに。

「ふん。ほんっとうに可愛げのない」

 先ほどとは違う口調に、右近は苦笑するだけだった。



簡単用語集

遊郭内での花魁の位

1太夫

格子こうし……太夫に準ずる遊女

散茶さんちゃ

座敷持ざしきもち

5呼出し

……などなど 本来花魁というのは江戸中期以降で、その頃には太夫と格子は姿を消しており、花魁という呼び方は当てはまらないのですが、わかりやすさを重視してみました。

振袖新造……見習いのこと。花魁の代わりに客の元に呼ばれても床入りまではしない。位の高い花魁になるのが約束されている見習い。


まぁ、右近も言ってますが遣手は風来坊をカモにする気です

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