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約定の花詠束(やくじょうのはなたば)。エロゲー界の老舗ROUND ZERO(ラウンド ゼロ)が手掛けたイロモノ乙女ゲーでありながら、ごく一部に高い評価を得ている迷作。

 イロモノ要素は何と言っても主要キャラ4人を攻略しても、CG回収率が4割しかないことに尽きる。クソゲーかとも思ったが、まあ当然隠しルートがあった。しかも残りの6割を全てこちらに回すという本気っぷりのシロモノが。

 果たしてどちらがメインなのか。様々な議論がされたが、公式がバッサリと『ごめん、隠しルートが一番やりたかった』と遠回しに発言したことで、メインルートがまさかの前座ということになってしまった。

 問題の隠しルートだけど、全ルート攻略後、新しくデータを始め、リアル時間で1ヶ月間毎日欠かさずルーツィアのいる所だけに足繫く通う事で低確率で起きる特殊イベントを踏むことで解除される『ルーツィアルート』だった。

 そこでようやく登場するのが(しょうじょ)である“フランチェスカ・ローランド”なのだ。しかも、主人公の恋敵としてである。

 メインルートでは、既に隣国へ留学しておりルーツィアの会話にしか出てこなかったサブキャラだったが、隠しルートではバリバリの主要キャラとして登場し、立ち絵とCG差分が多く存在するという厚遇っぷり。

 なお主人公が選択肢を間違えると、フランチェスカとルーツィアがくっつき主人公が変わるという仕様付きなのだ。

 乙女ゲーなのにメインが濃厚百合展開で数多のユーザーが困惑したらしいが、私は特に困らなかったというか。まぁご褒美だよねっていう。

 それと、(しょうじょ)少女(わたし)“フランチェスカ・ローランド”だと認識した時点で、意識の統合と言うか。魂の結合というか。まぁ要するに一つになった気がした。

 現状私の中には、フランチェスカの記憶と御堂茜の記憶が混在しているんだけれど、どうにも茜の方の最後の記憶がはっきりしない。はて、茜はなにをしていたのだろうか。


「お嬢様、フィルです。開けてもいいですか?」


 ノックが鳴り響き、思考の海から引き戻される。具体的な説明もせず自室に引っ込んだらそりゃ心配されるよね。だが、待ってほしい。いくら一つになったからと言って、一切混乱が生じてないとかそういう訳じゃない。慌てて『あの』と『あれ』をふんだんに使いどうにか時間を稼ぐ。


「何も説明になってないじゃないですか……お父様もお母さまもご心配されてましたよ?」


 が、まともに取り合ってもらえず、ゆっくりとドアが開き先ほどのメイドが入ってきた。


「で、デカい……」

「はい?」

「あ、いや……何でもない……デス」


 超展開に脳が思考停止して気付かなかったが、改めてメイドを見ると性癖だった。黒髪ロングのツリ目で。おっぱいが、デカい。そんなことを考えている状況じゃないのは分かっているのに。それでも、ボインなお山に目がいってしまう。Gぐらいだろうか。


「……お嬢様?」

「あっ……ちがっ……わないです」


 女性というものは総じて視線に敏感だと思う。特に胸やお尻。すけべな所に向けられる視線には聡い。

 とはいえ私は女だ。必死になって否定する必要も無い。このぐらいは役得でしょ?許してよ。


「本当にお嬢様ですか?」

「な、何を言ってるのか……さっぱりデスネ……」


 記憶にあるフランチェスカは少なくとも、こんなことをするようなキャラではなかった。原作でも、この世界においてもだ。怪しまれるには十分過ぎた。

 嫌でも空気が張り詰め、メイドの視線が強く、冷たい物になる。


「ぐっ……その実はぁ……私ぃ……」


 なんと言えと?私実は転生者でしたってか?信じて貰える気がしない。後、一つになった時点で私が転生なのか、転移なのか分かった。フランチェスカに生まれ変わった私は、このタイミングで御堂茜の記憶を思い出したって感じらしい。

 つまり転生である。そしてコレは現実逃避である。


         閑話休題


「私は?なんなんですか?事と次第によっては……」


 胸の谷間に手を突っ込んだかと思えば、その手には短刀が握られていた。つまり、向こうは傷付ける事も厭わない。最悪殺す事も有り得る?


「なんで谷間に……ってツッコミはしていいの?」

「仕舞いやすく、かつバレにくいからです」

「あぁ、なるほど……」


 いやいやいや、そんな真顔で言われても困るんだけど。

 だが、時間は稼げた。少なくともこの場を切り抜けるのに必要な記憶は漁れた。


「それで、貴女は何者ですか?」

「あー……その、落ち着いて聞いてね?フェル、私前世の記憶を思い出したの」

「前世の記憶……ですか?」


 メイド、フェルは言っていることがいまいち理解出来ないのか、なんとも言えない表情を向けてくる。


「そう、前世の記憶」

「はぁ……なるほど」


 今ので信じて貰えるとは思っていなかったが、フェルは何かしらに納得したのか短刀を納め、再び谷間にしまった。

 乳の神秘を見た気がする。


「その、信じてくれたの?」

「えぇ、大丈夫ですよ。安心して下さい、たとえお嬢様がちょっとアレな感じになってしまっても、私はお嬢様のメイドですから」


 アウチ、違った……信じてくれた訳じゃないらしい。というか、メイドの割にだいぶ失礼じゃないだろうか?あれ?私主だよね?


「ちっがうわ!ホントに!マジで前世の記憶を思い出したのよ!」

「それは凄いですね。で、前世はどこのお家に飼われてたんです?」

「なんでペット前提なの!?」

「違うんですか?」

「違うわよ!」


 フランチェスカの記憶が囁いている。フェルはこういうやつだと。あぁ、どうやら諦めるしかないらしい。

お読みいただきありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

そしてブックマーク評価、感想など頂けると嬉しいです。

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