2話 特別な日
2話に来てくださりありがとうございます!
つたない文章ですが、ぜひ読んでください!
「ピピピピピッ…ガシャ」
目覚まし時計の音に、ハルカは目覚めた。
ハルカは被っていた毛布をどかしたあと、立ち上がり、カーテンを全開に開く。朝の日のまぶしさに、目を細める。
一度、大きな背伸びをした後、さっき止めた目覚まし時計を確認すると、7:50とあった。
ホームルームは8:20から始まる。家から学校まではだいたい10分程度でつくから、朝の支度に使える時間は20分しかない。もっと早く起きればいいと思うのだが、ハルカはギリギリまで寝ていたいタイプの人間なのである。
すぐに制服に着替えて、ダッシュで階段を下り、洗面台でまだ眠い顔を洗う。1階のリビングの扉をひらくと、テーブルにはすでに朝ごはんが用意されていた。
2つある椅子の片方におばあちゃんが座り、目線をその手に持っている新聞に向けていた。
「ふぁ~。おばあちゃんおはよう…」
ハルカはまだ眠そうな声でおばあちゃん話しかけると、テーブルの椅子におばあちゃんと対面になるように座る。
おばあちゃんは新聞から目を離し、目線ををハルカにむける。
「ハル君おはよう、そして15歳のお誕生日おめでとう。今日はいい天気ね」
「うんそうだね。最近は雨の日が続いていたもんね。僕もこんないい天気の日に生まれたの?」
「ふふ。そうね、とてもいい天気だったわよ」
「そっか……あっ!時間がないから早く食べないと。いただきます!」
「いただきます」
そう言うと、急いで朝ごはんを食べ始めた。おばあちゃんと話すのは好きだが、朝のハルカにとっては、1分、1秒でも命取りなのである。
誕生日なのにいつもと変わらない孫の様子を見ると、おばあちゃんも箸を進める。
今日の朝ごはんは、主食に土鍋で炊いた白いごはん、おかずにピーマンの炒め物と目玉焼き。そして我が家直伝のもやしの味噌汁がある。
ハルカはおばあちゃんが作ってくれるごはんが大好きでだ。素材の味をそのまま生かしたおいしい料理は、まるで母の料理をたべているような……
ふと、そんなことを考えると胸の内からかすかな寂しさが浮かんでくるのを感じた。ハルカはそんな思いを払拭するかのようにおかずとご飯を一気にかきこむと、最後に味噌汁を飲み干し「ごちそうさま」と手を合わせ、再度洗面台に向かった。
歯磨きをして、寝癖を直し終えると、時刻はすでに8:10分を超えている。
「やばい!遅刻する!」と言いながら、リビングに戻り、ハンガーにかけてあったカーディガンを羽織り、鞄を持つと、玄関には向かわずに、リビングの端に置いてある仏壇に向かった。
その仏壇には聖母のようなまなざしをした美人の写真が飾ってある。ハルカの母——サチコのものだ。
サチコは今から6年前、ハルカが当時9歳の時に他界した。いや、死んだというより失踪したのだ。
事件の当初、警察は失踪事件としてサチコを探していたのだが、今から2年前に失踪宣言されたためサチコは法律的に死亡した人間と扱われるようになった。
ハルカは仏壇の前置いてある座布団に正座してすわると、撥を持ち、それで鈴をやさしくたたく。
「チーン」と音がしたあと、ハルカは撥を仏壇に戻した。そっと瞼を落として、静かに両手をあわせる。
「いってくるね」
そんな孫の姿を見たおばあちゃんは、温かくほほ笑む。
両手を離して、目をそっと開けたハルカは、壁に取り付けられた古い掛け時計を見ると、驚愕して目を見開いた。時刻はすでに8:12分を回っている。
「急がないと!」
鞄をもって急いで立ち上がり、駆け足で玄関へ向かう。
靴を履き、「いってきまーす」とドアをあけようとドアノブに手をかけると、後ろから「ハル君」とおばあちゃんの声がした。
後ろにふりかえると、そこには両手にお弁当をもったおばあちゃんが立っていた。
「ハル君、お弁当わすれているよ」
おばあちゃんはそう言い、ハルカにお弁当を渡す。ハルカはそれを受け取ると、「あ!本当だ!」と慌てながら急いで鞄の中にしまう。
「しつこい様だけど、お誕生日おめでとう。きっとサチコも……。ううん、おかあさんも喜んでいるよ」
「うん……。ありがとうおばあちゃん」
「いってらっしゃい」と手を振るおばあちゃんに、ハルカは「いってきます!」言うと、再びドアに手をかけ、家の外に出る。水たまりに太陽の光が反射する天気のいい日だ。
季節は赤とんぼが飛び、コオロギが鳴く秋。
心地いい清涼の風にふかれながら、通学路を走っていたハルカは、鞄のサイドポケットから黒い本をとりだすと、誰にも聞こえないような小さな声でそっとつぶやいた。
「おかあさん……生きているよね?」
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