秘密の入り口 2
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台所の勝手口が、王城の宝箱につながっていたのだが、
僕の母親が、間違って異世界に行ってしまうと困るので
今は僕の勉強机の引き出しが出入り口になっている。
僕がいまだに何の魔法も使えないのに辟易としたのか
魔姫は寝ている。
久しぶりに草野球の人数が足りなくて、試合に呼ばれた僕は
こっそりと空き地に出かけた。
ピッチャーが山健で、キャッチャーが稲川俊之こと『カジヤン』だ。
ライトで最終打者の僕はいつもとは様子が違った。
ホームラン性のボールを10メートル近くジャンプして捕球し、
バッティングでは金属バットをへし折った。
「おいおぃ、なんなんだ。まるで化け物だぞ。」
山健が本気で怖がっている。
山健と稲川に魔法の世界の話をすると興味津々で
ぼくの家まで付いて来てしまった。
魔姫が寝ているうちに机の引き出しに入ると、
3人で王城の地下室に出た。
ここは宝物殿らしく、大量の金貨や古美術品が並んでいる。
触ると後で魔姫が切れるので、山健と稲川にそれを言うと
おとなしく俺の後をついてくる。
魔后からすべてを受け継いだ僕は
この城の主らしいのだが魔姫が邪魔をして、
なかなかこの世界のことを知ることができない。