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草スライム -05

書き貯めていたときに、少し残酷な描写と言うか戦闘描写と言うか流血描写と言うか生き物を捌く描写をしました。

私としては軽く、のつもりではありますが、人によっては軽くないかもしれないと思い、R15タグを付け足しました。

今後該当の話が出ましたら、前書きにて注意書をする予定でいます。


今回はそんなシーンはありません。

 さっきまでブランシュが作業をしてたしていた調理台の上に、よく練られた草スライム粉の塊が置いてある。それを包丁で五つに分けて、そのうち二つをボウルに戻した。

 残る三つをさらに包丁で小さく分けて、麺棒で伸ばして、包丁で小さく切って分けて。その作業を繰り返したあと、ようやくマリーは小ぶりの麺棒に手を伸ばした。


「っと、忘れてた」


 一旦手にした小ぶりの麺棒をもう一回調理場の台の上に戻して、マリーは食器棚から四角い調理用の大皿を取り出す。ふるいとボウルのセットを持ってきて、草スライムの粗挽き粉が入っている粉袋から一掴み掬い取った。

 四角い皿にふるいで粗挽き粉をまんべんなく散らす。


「よし」


 食器棚にボウルとふるいを戻して、マリーは今度こそ小さい麺棒を手に取った。


「それじゃあ母ちゃん、ランチメニュー黒板に書いてくるね」


 床掃除を終えたジャンは、モップを洗ってしまい、ブランシュにそう声をかける。

 掃除用具入れに置いてあるチョーク入れを手に持って、そのまま店の外へと出た。雨の日なんかは店内で書くが、晴れてる日は外で書くようにしている。

 だってせっかく掃除した店内、汚したくないし。


 本日のランチメニューも一種類だ。

 フォーコニエの街は確かにはじまりの街、だなんて御大層な名前を貰っているから、他の街や他の国からの客も多い。けれどスライム屋には、ほとんど一見の客は来ない。基本的には、この街で暮らす常連客たちの店だ。

 すらすらと、何色かのチョークを使って、ジャンは今日のメニューを外看板へと書き出す。

 草スライムの団子スープ。

 Aの字型になっている外看板の片面には、文字で内容を書く。草スライムの皮と、オオ鳥の肉団子を草スライムの皮で包んだものが入っていること。それからたっぷりの野菜と、輪切りにした一角イノシシのソーセージ。マリエットさんのところのパンは、スープ一杯につき二つだ。

 表通りにある儲かってる飯処なんかだとパンは食べ放題と言うところもあるそうだ。けれど、生憎スライム屋はそこまでの余裕がない。その代わり、残った分はお持ち帰りしてもよいことにしていた。子連れの家庭だと、助かるとたまに言われる。

 裏面には、メニューをイラスト付きで描いた。

 そして両面、目立つように大きく銅貨五枚と書けば出来上がりだ。

 草スライムの皮だけは銅貨一枚で二枚増やすことができることも書き添えて、ジャンはそれを店の前に置いた。

 あとは同じものを、店内にかける黒板にも書けば、開店前の準備はおしまいだ。


「お、草スライムの団子スープかぁ」

「あったまるんだよなあ」

「ジャン、俺持ち帰りでな」


「まだ開店してないよ」


 常連客で暇を持て余している年寄り連中が、ジャンが店の外に出てきたもんだから取り囲んで話しかけてくる。

 長尻ながっちりで居座って、延々駄弁っている年寄り連中もいるが、彼らは自宅で一杯やりながらスライム屋の料理をつつくのが好きなタイプだった。そうそう、持ち帰り料理は自分で器を持参したら銅貨四枚になる。もちろん、パンはついてくる。


 店の前にはベンチが置いてあって、ジャンはそこに座って黒板を書いた。店内を汚さないための工夫でもあるが、雨の降ってない日はこうやって外で書いていると、それだけで宣伝になる。


「お、もうすぐ飯時か」

「今日のメニューは……うーむ。昨日の晩飯と被ってるな」


 うちのにゃ草スライム入ってねぇけどな。

 なんて、近所で働くおじちゃんや通りすがりの人たちが寄ってくる。

 スライム屋の飯がこれならマルヤはどうだ。錦亭やレン食堂の今日のメニューは、だなんて、配達仕事の人たちから情報が集まってくる。

 果たしてそれはうちの軒先でやることかといつもジャンは思うが、まあ、人が寄ってきてくれないと売り上げも出ないわけだから、いいか、と黙認していた。


「それじゃ、中の様子見てくるから、もうちょっと待っててね」


 書き上げた店内用の黒板を持って、ジャンはスライム屋の店内に戻った。

 今日のランチをスライム屋でとると決めた面々は軒先に残り、やれ皮の数をどれだけ増やすの、団子は増やせねぇのか等々、好き勝手言っては通りすがりの人たちの興味を引いていた。


「準備、どう?」


 店の外の喧騒は、店内のブランシュとマリーにも届いている。

 それを聞きながら、ブランシュはスープの仕上げをして、マリーは肉団子を包んでいた。


「大体できてるわ」


 ジャンはどの席からでも見える位置の壁に二枚の黒板をかけた。そうしたら調理場の奥にある瓶から水を汲んできて、台拭きを濡らす。ぎゅっと固く絞ったら、テーブルを拭いた。


「じゃあ、開店する?」


 掃除用のエプロンを外したら、今度は給仕用のエプロンに着替える。マリーは調理場のお手伝いがあるから、そのままだ。開店してしまえば席数も決まっているし、調理自体はブランシュ一人で回せる。


「ええ、お願い」


 ざっとスープとは別の大鍋で茹でていた草スライムの皮と、草スライムの皮に包まれたオオ鳥の団子をざるに開ける。

 マリーはカウンターにお盆を並べ、パンかごを並べ、スープ用のどんぶりをセッティングした。


 ジャンは、店のドアを開ける。


「どうぞ」


「お、待ってました」

「腹へったなぁ。俺一人前ね」

「こっち二人前。両方とも銅貨一枚分皮追加ね」


 開いたドアから客が入ってきて、それぞれがお気に入りのテーブルへと座る。

 男たちは席につくなり、小銭入れを取り出して、テーブルの上に必要枚数を積み上げた。


評価ブクマ、ありがとうございます。

次回更新は14日(火)になります。

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