妹のパンツ
時期尚早
日曜日にテレビでバラエティ番組の再放送を見ていた。芸人が果物の感想を述べる中、高校生の俺は思い思いの時間を過ごしていた。
俺が今いる室内は秘密の空間。ドアに鍵が掛かっているか入念に確認した後、右手に握り締めていた三角形の布をおもむろに広げ、三つある穴の一際大きな輪に親指を掛ける。
持ち上げた時に真っ先に目が行くのはピンクのリボン。ピンクを引き立たせる白い生地から感じるこれは……パンツだ。
誰がなんと言おうと乙女が履くパンツ。いや、履かれていたモノで間違いない。
通販で買った普通のパンツではない。そんなものだったら俺もここまで厳重にブツを展開したりはしないだろう。何故、ドア側に耳を傾けながら誰か来ないか警戒しているのかと言うと''妹のパンツ''だからだ。
近親に対して性的な何かを感じていると間違われるとなれば家族会議は逃れられない。それを避けるためにドアに鍵を掛けて対策した。
コインを使えば外側から開けられるほど簡単な仕組みだが不意の入室は避けれるはずだ。
俺は深呼吸をしてパンツを頭に被る。
その瞬間、俺はとんでもない背徳感を浴び始めているのを今更ながらヒシヒシと感じ始めた。背筋が凍るような気持ちも足元を濡らす頃には快感となっていくのを感じる。
それを祝うかのようにドアがバンッ!と鳴り響いた。
「祝砲はまだ速い」
さらなる高みを目指し、手を鷹のように広げ――
『しょうこげっと』
「え゛」
天空に舞う意識が逆バンジージャンプのように戻り始めた。その過程で聴こえた声は何度も耳にしたことがある事に気づく。
「あ、!姉貴!!」
最悪としかいいようがなかった。姉貴は百合と言うのだが名前とは裏腹に華の欠けらも無い性格をしている。
トイレで思春期してた俺を盗撮して妹に見せるくらいには花びらも散ってしまっている女だ。そんな危険人物に、このパンツがバレてしまうのは非常にまずいことを示している。
「夕飯の話はこれだったのね」
一度だけの過ちなら俺も全力投球の謝罪をするのだが、バレては居ないものの10回以上は盗んだ過去がある。となると全部バレるので肯定してはならない。
「なんの話だ?」
一応白を切ったがどういう話かというと、つい昨日の晩御飯カレー戦争で俺はジャガイモを狙っていたのだが妹は美味しいスパイスに対し引けを取らない覚悟があるのかあまり手をつけなかった。
普通なら気にしないのが普通だが俺は姉よりも可愛い妹にそんなことは出来なかった。話を聞いてやったら洗濯カゴにパンツを入れると数日は返ってこないというのが見えてきた。
洗濯当番の俺に言うとは思わなかったが「姉貴かもな」と言って保守には走っている。
「夏芽のパンツが消えたって話」
「いったい誰が妹様のパンツを盗んだんだ……!」
わざとらしく握りこぶしを作り、どうしようもない怒りを振りかぶる。
「いや、あんたでしょ」
「そんなわけないだろ! 弟を疑うってのか!?」
手を広げてオーバーアクションに反抗するが姉貴にある部分を指されて気づく。
『それなに?』
俺の頭には未だに紛うことなきパンツが佇んでいた。