第3話
明日葉 晴です!
この話は私の知り合いとたまに相談しながら作っているんです。
といっても言い回しとかの相談くらいなので合作ってほどでもないんですけどね。
前回のあらすじ
空はソラとして生きていくこと決め、新たなる世界で日々を過ごしていった。そして、六歳の誕生日、教会のマリン司祭によって祈りを上げられたソラは、全てにおいて高い適性を示す。また、現在の両親と前世の両親の変わらぬ愛情を感じ、少女ソラの物語は、幕を開ける。
=======================
祈りを上げてからアタシは、魔法について勉強する事にした。といっても初級魔法は大して難しくはなく、適性がなくても一応は誰でも扱える為、すぐに使えるようになった。
ただ、問題はそのあとだ。この村で一番魔法が扱えるのがマリン司祭なので、教えを乞うことにしたのだが、アタシは魔法が全く理解出来なかった。
そもそもの話、前の世界には魔法なんてなかった。だから、魔力を感じろと言われても、どう感じればいいかわからない。
初級の魔法が使えたのは、漠然としたイメージのみで行えるからだ。例えば、火の魔法の“ファイア”は、火が燃える感じを強く意識して、自分の中から出すイメージを作る。そして、“ファイア”と唱える。ただそれだけ。他の初級魔法もほぼ同じだ。
下級からは、自分の中にある魔力を感じ取り、その質を変化させて、呪文を唱えなければいけない。
だから、魔力を感じとることの出来ないアタシは下級魔法を使うことが出来ないでいた。
「マリン司祭は、どうやって自分の魔力を感じているんですか?」
「そうねぇ。私は物心付いた時から魔力を操ることができましたし、呼吸と同じように魔力を感じ取れましたからねぇ。普通なら、初級魔法を使えた段階で、自分の魔力の総量や、扱いが漠然とわかると思うのだけれど。」
「なら、何故ワタシは出来ないと思いますか?」
「難しいわね。考えられるとすれば、魔力が大き過ぎるのが問題かもしれないわね。本能的に制御出来ないことを感じて、無意識で扱おうとしていない。あるいは、自分でも把握出来ないほどに大きい為に、魔力を感じられない。もしくは別の問題で、あまり言いたくないのだけれど、属性への適性はあるけれども、そもそも魔力を扱う才能がないか。」
うーん。どれもあり得そうだ。無意識のブレーキ、自分で把握出来ない、才能がない。どれが理由でも納得出来る。
大きな力は怖いし、理解を越える大きさというのは、扱えない。そして、そもそも魔法のない世界にいたのだから、自身に才能がないっていうのは当たり前だ。全てが正解なのかもしれない。
「では、ワタシは魔法を諦めるしかないのでしょうか?」
「いいえ、そんなことはないわ。無意識で止めてしまっているのならば、危険が無いと心の底から思えればいい。把握出来ないのならば、徹底的に理解すればいい。そして、才能がないなら、それを越える努力をすればいいわ。適性があるからといって、最初から上手くいくわけじゃないのよ?」
「でも、ワタシは…」
「適性も、知性も高いなら、出来なきゃおかしいって言いたいのかしら?」
「はい…」
「私が祈りを上げた時に言った言葉を覚えているかしら?」
「もちろんです。適性はあくまでも適性で、生かすも殺すもワタシ次第、と。でも!魔法適性も知能適性も高いワタシが出来ないのならば、それは、もう、適性を扱いきれていない、ワタシに適性そのものの扱う才能がなかった、何よりの証拠じゃないですか!?どんなに高い適性があっても、扱いきれないなら宝の持ち腐れじゃないですか…」
適性が高いからと浮かれた自分が恥ずかしい。この世界では自分は立派になれるんだと、そう傲ってしまった自分が。
結局、生まれ変わってもアタシは何も出来ない。そう思ったら堪え切れなくて、気付いたら涙を流していた。
「泣かないで。あなたの知性が大人顔負けなのは私も知っているわ。こうして接していて、それは確かなものだと。現にあなたは、私と話す時は口調を変えているいるでしょう?私はそのつもりはなくとも、この村では権力がある。そのことを真に理解しているのでしょうね。」
「はい…」
「でもね。例え、知性が高かろうが、あなたはまだ子供なのよ?もっと遠慮なく接しても構わないわ。」
「でも、この間はレディ扱いしてくれたじゃないですか。」
「ふふふ。それは世間から見た時の話。私からすれば、あなたのお母さんも子供に見えるのよ?なら、あなたも子供に見えてもおかしくないわ。レディとして扱いはするけれど、子供に見えるのもまた事実なのよ。」
「そんなの、ズルいです。」
「うふふ。大人とはズルいものよ。あなたはまだまだ子供。大人のような、知性をもっていてもね。だから、何かを諦めるには早すぎるわ。やってもいないのに諦めないで。もっと欲張りなさい。あれもこれも全部とって、こぼれてもまた拾って、欲しいものは全部手に入れる。子供のうちはそれくらいじゃないと、きっとつまらないわ。」
「ワタシ…アタシは、もっと欲張ってもいいの?もっと我が儘になってもいいの?諦めなくてもいいの?」
「ええ。あなた達、子供の我が儘を受け止めて、諦めさせないことが、私達、大人の仕事よ。」
「ありがとうございます。アタシ、諦めない!もっと欲張って、全部手に入れる!魔法も、剣も、全部使えるようになる!そして、みんなを守れる位強くなる!だから、これからもお願いします!」
「その意気よ。強くなりなさい。そして、誰よりも優しくなりなさい。あなたらしく、生きればいいのよ。その口調の方がとっても似合っているわ。」
「マリン司祭…本当にありがとう!」
アタシは決めた。誰より強く、優しく、みんなを守る為の力を付けることを。その為の努力は惜しまないことを。
その日、遅くまで魔法の練習をしていて、お母さんに怒られてしまった。
第3話を読んで頂き、ありがとうございます!
前回、ここまでがプロローグ、とか言ってた癖に、まだ何も始まってないですね。自分の筆の遅さが恨めしいですね。
これからもお付きあい頂ければ大変嬉しいです。